映画『ラスト・クリスマス』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ラストクリスマス』考察とネタバレ|ワム!の歌詞の意味が深い

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『ラスト・クリスマス』 
 Last Christmas

達郎・マライアとともに定番のワム!のXmas曲で、今さら映画作るか?と思ったら、意外と心を打つ。なるほど去年のクリスマスか、タイトルに偽りなしだ。エミリア・クラークのはじけっぷりで、陽気な仕上がり。

公開:2019年  時間:103分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ
監督:      ポール・フェイグ 

キャスト
ケイト:     エミリア・クラーク
トム:  ヘンリー・ゴールディング
サンタ:       ミシェル・ヨー
アデリア:    エマ・トンプソン
マルタ:    リディア・レオナルド

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)Universal Pictures

ポイント

  • ネタバレせずにいえば、ただのロマコメじゃないところが本作の真骨頂で、それならこの超メジャー曲を今更使うのも仕方ねえかというオチに繋がる。できればトップシーズンに観たい作品。

あらすじ

ロンドンのクリスマスショップ。華やかな店内で妖精エルフのコスチュームに身をまとうケイト(エミリア・クラーク)は仕事に身が入らず、乱れがちな生活を送っていた。

ある日、ケイトの前に不思議な青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が現れる。トムはケイトが抱えるさまざまな問題を見抜き、彼女に答えを導き出してくれた。

そんなトムにケイトは心をときめかせ始めるが、二人の距離は一向に縮まる気配がない。

レビュー(まずはネタバレなし)

先入観はネガティブ

公開はクリスマスシーズンではあったが、何を今さらワム!の曲で映画作るかな~、あまりに定番すぎる曲だし。

何より、この曲を使って映画のタイトルにまで付けるって、森田芳光監督が30年も前に『未来の想い出 Last Christmas』でやってるじゃないか。

と、観る前の印象は相当ネガティブな本作だったが、意外な評判の良さに観てみると、季節外れでも十分に心を打つ作品だった。

食わず嫌いはいけない。とはいえ、その評価に行きつくまでには、ちょっと頑張って観続ける必要がある。

なにせ主人公のケイト(エミリア・クラーク)の生活の乱れっぷりがすごい。隠れビッチどころか、正々堂々たるおもてビッチ。すぐに男捕まえて寝ちゃうだけではない。

泊めてもらった友人宅では、ドライヤーで熱帯魚感電死させるわ、船の模型燃やすわ、作りかけのオブジェに座るわ。おまけに勤務先のクリスマスショップでは施錠し忘れで店荒されるわ、悪意なしとはいえ迷惑千万な女なのだ。

そんなケイトが、突如現れた好青年トム(ヘンリー・ゴールディング)と親しくなっていくことで、自分を取り戻していく。

狭い路地裏をあちこち回ったり、緑に囲まれたひっそりとした狭い公園のベンチで語らったり、テムズ川沿いでじゃれあったり。

それこそ昔ならヒュー・グラントが出てきそうな、ロンドン舞台のロマンチック・コメディだと思っていたが、どうも途中から雰囲気が変わっていく。

(C)Universal Pictures

エミリア・クラークの好演

主演のエミリア・クラーク『ゲーム・オブ・スローンズ』が有名らしいが、あいにく観ていないので、私の彼女の印象は『ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー』。たしか、ハン・ソロより勇ましく目立っていた役だ。

今回も、ビッチ全開のキャラから、まともな自分を取り戻していく、振り幅の大きい役を熱演だった。

相手役のヘンリー・ゴールディング『クレイジー・リッチ』の人らしいが、まだ観てない。ポール・フェイグ監督と彼は、『シンプル・フェイバー』でも組んでいる。

クリスマス・ショップの店主サンタに、久々のミシェル・ヨー。なんたって、あなた、元ボンド・ガールですよ。

しかも『クレイジー・リッチ』では、ヘンリー・ゴールディングの母親役じゃないか。混乱する。二人とも、マレーシア系俳優つながりなのか。

そして、ケイトが敬遠している、口うるさい母親役で、脚本も書くエマ・トンプソン。いい味出していた。さすがに演技はうまいんだけど、ますます高畑淳子に似てきた気が。

ワム!版マンマ・ミーア!

テーマ曲は定番すぎて、と冒頭に言ったものの、ワム!ジョージ・マイケルも、ひさびさに映画で流れると、やっぱりいいな!と再認識。

ABBAの曲だけで『マンマ・ミーア!』が作れるのなら、ワム!だって映画にしようぜ、というのは、なかなか気の利いた発想だ。

それに、ケイトのお姉ちゃんマルタ(リディア・レオナルド)が親には内緒だけどレズビアンだったり、ユーゴスラビアからの移民であるケイトたちにふりかかるブレグジットによる強制送還の不安があったり。

「英語喋れないやつはロンドンから出て行け」的な社会問題も散りばめられ、ワム!が流れていても、あくまで現代を描いた作品なのだ。

レビュー(ここからネタバレ)

そうきたか、と意外な展開

ネタバレありとはいっても、あまりおおっぴらに語ってはいけない作品なように思う。そもそもネタが仕込んでありますよと匂わせるのも、ためらわれる。

なので、今回は軽いネタバレとさせてください。何せ、私自身も、無予習・無防備でみた結果の感動だったので。以下、未見の方はご注意願います。

ケイトは昨年、心臓移植という大手術を乗り越えており、それまで特別扱いでちやほやされていたのに、今はフツウにしろと家族にも言われていることに悩みを抱えている。

それに、トムとケイトとの不思議な距離感や、彼がケータイを戸棚に置きっぱなしにしているところ、公園のベンチを好んでいるところとかも、あとから考えればなるほどという、伏線が張られている。

小ぎれいにしていたトムの部屋を、ケイトが後日再訪すると、「ここは1年ほど前から貸家だよ」という不動産業者がいる。ただ倹約家のトムが空き家に潜り込んでいたのだと思っていたのだが…。

(C)Universal Pictures

そういうことなら、さすがにありえないと思っていた、深夜のアイススケートリンクに潜入して二人で滑走するロマンティックなシーンにも、なんだか説得力が出てくる。

お涙頂戴演出でないところも、本作にはフィットしていた。最後は家族で大盛り上がり。ワム!ラストクリスマスだって、陽気なバージョンで歌いだす。

なるほど、この曲にインスパイアされた脚本だという意味が分かった。でも、<上を向いて歩こう>が伝えたいメッセージなら、坂本九のスキヤキ・ソングでもありか。