『キャプテンアメリカ ザファーストアベンジャー』MCU一気レビュー05

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『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』 
Captain America: The First Avenger

満を持してようやく登場のキャップ。ここまででシリーズ最高の作品完成度。大戦の歴史からしっかり描く作り手の真摯な姿勢。改造前の貧弱な肉体のスティーブの方が合成という逆転の発想。

公開:2011 年  時間:124分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:      ジョー・ジョンストン

キャスト 
スティーブ・ロジャース:

          クリス・エヴァンス
ペギー・カーター:ヘイリー・アトウェル
バッキー・バーンズ:

         セバスチャン・スタン
チェスター・フィリップス: 

       トミー・リー・ジョーンズ
ヨハン・シュミット/ レッド・スカル

       ヒューゴ・ウィーヴィング
ハワード・スターク:ドミニク・クーパー
アーニム・ゾラ:  トビー・ジョーンズ

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)2010 MVLFFLLC. TM & (C)2010 Marvel Entertainment, LLC and its subsidiaries. All rights reserved.

あらすじ

第2次大戦下、病弱のため兵士として不適格とされた青年スティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は、軍の極秘実験「スーパーソルジャー計画」の被験者第1号になる。

強じんな肉体と破壊不可能なシールドを武器に戦うヒーロー、キャプテン・アメリカとして生まれ変ったスティーブは、レッド・スカル(ヒューゴ・ウィーヴィング)率いるヒドラ党との戦いに挑む。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ここまでのMCUでイチオシです

独立した作品としてとらえた時に、ここまでのMCU作品でもっとも完成度が高いのが、本作だと私は思う。

愛国心から入隊を志願するが、ひ弱で病弱な身体のおかげで落選し続けるスティーブ。クリス・エヴァンスの顔に貧弱な肉体を合成させる、通常とは逆パターンの特撮効果が斬新だ。

そして、「スーパーソルジャー計画」の被験者として選ばれ、彼は血清により強じんな肉体を手に入れる。

彼は、転がりこんだ手りゅう弾にも身を挺して仲間を守ろうとする、勇気と正義の心が評価され、キャプテン・アメリカになったのだ。これまでのマーベル・ヒーローと違い、既に人間的に成長しているところが特徴的といえる。

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丁寧に描かれている戦時中の苦悩と葛藤

第二次世界大戦の時代にタイツ姿のヒーローとなり、戦時国債の売りさばきに貢献する屈辱的なキャプテンの姿から、ハウリング・コマンドーズの多様な人種の部隊とともに、祖国のためにヒドラを討つようになるまでを、映画は丁寧に描く。

当初の時代錯誤なコスチュームから、うまく現代風にアレンジされるところはうまい。この過程に時間を割いていることで、ドラマとしての深みが出ている。

円盾をフリスビーのように投げる戦い方は、絵としても盛り上がり、高揚感を与えてくれる。MCUヒーローが、生身の人間たち(コマンドーズ)と一緒になって戦うという構図も、これまでにはなかったものだ。これも悪くない。

恋人と親友は、ヒーロー定番アイテム

人間的なドラマの軸は、スティーブとペギーとの淡い恋愛関係だろう。ペギーがSSRの女性士官でスティーブの上司という設定は目新しい。

演じるヘイリー・アトウェルも、これまでのMCUヒロインほど知名度が高くないところも新鮮味があった。スピンオフのテレビドラマ『エージェント・カーター』も観ているので、彼女には親しみを覚える。

この後、スティーブは70年の眠りにつくので、この二人の関係はMCUでも極めて切ない悲恋となる。この伏線回収は、老いたペギーとの再会、葬儀への出席と続き、結局『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで何年も待つことになる。

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スティーブの親友バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)も、また印象的なキャラクターであった。彼はもとから屈強な兵士であるが、スティーブとの信頼関係も厚く、また陽気なところもいい。

彼が戦闘中に列車から谷底へと落ちて行ってしまうのは衝撃的だったが、それがやがてウィンター・ソルジャーに変貌するとは、当時は思いも寄らなかった。

『マイティ・ソー』のロキ同様、谷底落下系のキャラは、基本的に死なないものなのだ。

これまでのMCU作品の主人公には、恋人と親友という存在が大抵セットされていて、本作も例外ではない。それが、ストーリーに広がる余地を与えてくれるのだろう。

唯一の例外がハルクなのかもしれない。彼には親友とよべるキャラがいない。それが映画としての物足りなさに繋がっているのではないか。

MCUとのつながり方が丁度良い具合

戦時中の話ゆえ、MCU的な繋がりは控えめではあるが、例えばこれまで数多く登場してきた、トニーの父・ハワード・スターク(ドミニク・クーパー)が、いよいよ現役で登場する。これは盛り上がる。

キャプテンは、スターク父子とそれぞれに、時代を超えて付き合いがある訳だ。

本作のヴィランであるレッド・スカル(ヒューゴ・ウィーヴィング)が入手したテッセラクト(四次元キューブ)は、太古の昔にオーディンがノルウェーに隠していたもの。

ここは『マイティ・ソー』から繋がっている話になっている。よく知らないと、聞き落としそうなネタではあったが。

さらに、キューブに触っただけでレッド・スカルが消失してしまったのを、本作では死んだものとしていたが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、別の惑星まで転送されて生きていたことが分かる。現時点では知る由もないが。

それにしても、レッド・スカルの風貌はあまりにマヌケというか、黄金バット、或いは懐かしいジム・キャリー『マスク』っぽい(どっちも赤くないけど)。こんなので唯一のヴィランなの?というのが、本作の数少ない不満点。

トミー・リー・ジョーンズが陸軍大佐を演じているのは、嬉しかった。オーディンアンソニー・ホプキンス同様に、大物俳優を脇に置くパターンだろうか。時代の都合上、以降の作品に登場が難しいのが惜しまれる。

静かに終わらせた方が味わい深いのに

さて、本作の最後には70年間の冬眠の末に現代のマンハッタンでスティーブが目覚める。MCU的な繋がりには必要なシーンなのだろう。

だが、私は、その手前の、彼が決死の覚悟でNYめがけて飛来するミサイルとともに着水を試みる、そしてペギーとの交信が途絶えるシーンで終わってほしかった。

そして、ブルックリンの子供たちが、ゴミバケツの蓋でキャプテンごっこをして遊ぶ。一つの作品としては、ここでエンドマークが出て、余韻に浸らせてほしいと思うのだ。