『プロジェクト・ヘイル・メアリー』考察とネタバレ|それは無謀なロングパス

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
 Project Hail Mary

アンディ・ウィアーの人気ハードSF原作をライアン・ゴズリング主演で映画化。全人類を氷河期から救え

公開:2026年 時間:156分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:  フィル・ロード&クリス・ミラー
原作:        アンディ・ウィアー
   『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
キャスト
ライランド・グレース:

          ライアン・ゴズリング
エヴァ・ストラット: ザンドラ・ヒュラー
ヤオ・リー=ジエ:     ケン・レオン
イリュヒナ:ミラーナ・ヴァイントゥルーブ
マーティン・デュボア: トラビス・ジェイ
ブラウン博士:    トミア・ソテリュー

勝手に評点:3.5
  (一見の価値はあり)

(C)2025 SONY PICTURES ENTERTAINMENT

あらすじ

太陽のエネルギーが奪われるという原因不明の異常現象が発生。このままでは地球は冷却し、人類は滅亡してしまう。

同じ現象が太陽だけでなく宇宙に散らばる無数の恒星で起こっていることが判明し、11.9光年先に唯一無事な星が発見される。

人類に残された策は、宇宙船でその星に向かい、太陽と人類を救うための謎を解くことだった。

このプロジェクト・ヘイル・メアリーのため宇宙に送り込まれたのは、優秀な科学者でありながら学会を去り、いまはしがない中学教師をしていたグレース(ライアン・ゴズリング)だった。

彼は地球から遠く離れた宇宙でたったひとり、自らの科学知識を頼りにミッションに臨み、そこで同じく母星を救おうと奮闘していた異星人ロッキーと出会う。

姿かたちも言葉も違う二人は、科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、その過程で友情を育んでいく。

レビュー(まずはネタバレなし)

日本でも星雲賞を受賞するなど評価の高いアンディ・ウィアーの同名原作の映画化。『スパイダーマン・スパイダーバース』シリーズの製作などで知られるフィル・ロード&クリス・ミラーがメガホンを取り、主演はライアン・ゴズリング

彼が宇宙船に乗るとはいっても、『ファーストマン』の時のような宇宙飛行士ではなく、今回は科学者として乗り込む。それも全人類を救うための、片道切符のミッションだ。

上下巻にわたる長編原作を、映画はきちんと原作のポイントを押さえながら、160分程度にうまく纏めていたと思う。

今のところ世間的な評判も悪くないようで、それは良かったなと思う一方、原作が面白くて一気読みした者のひとりとしては、もっと掘り下げてよといいたい部分も多い。

でも、ハードSF小説を映画化するなら、ある程度エンタメ路線に走るのは、必然なんだろうな。原作のアンディ・ウィアーも、映画は別物なので納得しているみたいだし。

(C)2025 SONY PICTURES ENTERTAINMENT

太陽と金星を結ぶ赤外線の帯「ペトロヴァ・ライン」が発見され、それによって太陽の光度が減少していることが判明。数十年以内に地球は氷河期並みに寒冷化することが予想され、人類は早急な対策を余儀なくされる。

プロジェクトを統率するエヴァ・ストラット(ザンドラ・ヒュラー)は、かつて優秀な科学者で今は中学教師のライランド・グレース(ライアン・ゴズリング)を引き込み、金星から採取した粒子状物質アストロファージの調査をさせる。

(C)2025 SONY PICTURES ENTERTAINMENT

アストロファージの調査研究には乗り気で参加していたグレースだが、唯一影響を受けていない恒星タウ・セチに飛ばす探査機に乗船する決死のミッションに参加させられることとなる。

このように、ストーリー展開には概ね原作からの破綻はないものの、グレースがどのようにアストロファージの成分や特徴を見極めていくかのプロセスが、原作では大きなウェイトを占めていた。

その大半は彼の科学的なウンチクなのだが、それがとても分かり易く、かつ科学的な興味をそそったのだ。だが、映画ではそのあたりは一般ウケしにくいと思われたのだろう、バッサリと割愛だ。

だから、グレースにどれほどの科学的素養があるのかも、アストロファージに秘められた驚異的なパワーや特性も、今ひとつ分かりにくい。

また、私が心配することではないが、原作未読の観客には、この物語の奥深い面白味がどのくらい伝わったのだろう。

あくまで、グレースと異星人ロッキーが育む友情話がメインだから、作り手としては問題なしとしているのか。

ロッキーという名はグレースが勝手に命名したものだが、同じ調査目的でタウ・セチに来ていたこの異星人との遭遇や、次第に交流を深めていくプロセスは、本作の最大の見せ場であって、とても良くできている。

ロッキーの造形もさることながら、地球人と同じ空気では共存できない彼らが自前のガラスケースのようなもので体を覆って現れる姿もうまく考えられている。

原作ではなかなかイメージできなかった部分が、これでようやく視覚化できた。

グレースもロッキーも、同乗のクルーが全員死別した唯一の生存者同士だから、映画は回想シーンを除けば殆ど二人芝居。

ロッキーは着ぐるみではないから、実際の撮影はライアン・ゴズリングが一人で感情をこめて演じていたのだろうか。

剛腕でグレースに無理難題を課す総責任者エヴァ・ストラット役にザンドラ・ヒュラーとは驚いた。なるほど、このキャラに彼女ほどお似合いの俳優はいない。

そういえば、ザンドラ・ヒュラー『約束の宇宙』(2021)の時も、エヴァ・ストラットと同様に欧州宇宙機関(ESA)所属の人物を演じていたはず。

(C)2025 SONY PICTURES ENTERTAINMENT

ところで、「ヘイル・メアリー」アベ・マリアの英語表現だとは知らなかったが、映画の中では「イチかバチか」の賭けというような字幕だったのではないか。

原作では、アメフト用語で、試合の勝敗を託す、無謀ともいえるロングパスだったか。字数は多いが、味気ない「イチかバチか」より、こっちのが好きだなあ。

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見未読の方はご留意ください。

ヘイル・メアリーな計画は、物語の最後にはパスが通って人類が滅亡の危機から逃れることがお約束ではあるが、片道切符で帰りの燃料のない宇宙旅行に無理やり連れ出されたグレースの運命までは安泰とはいえない。

でも、タウ・セチの調査でアストロファージには捕食者がいることが分かり、これで事態の解決の糸口がつかめる。捕食者プレデターとはいっても、どちらも粒子状なので、傍目には怖さも実感も湧かないけど。

(C)2025 SONY PICTURES ENTERTAINMENT

ロッキーから帰りの燃料であるアストロファージをもらい、地球に生還できることになったグレースだが、別れを告げたロッキーの危機を察知し、彼を助けに向かう。

相棒を助けるために地球に戻れない選択をするグレースの葛藤『インターステラー』のようにしっかりと描かれていないのが惜しい。ここは原作でも盛り上がるところだったのに。

それにしても、ロッキーといえばエイドリアンといったり、『未知との遭遇』の5音階で遊んだりと、70年代の映画ネタが健在なのには驚いた。『ロッキー4』以来久々の<炎の友情を味わっせてもらった。