『だいじょうぶマイフレンド』今更レビュー|ピーター・フォンダの気持ちよいほどの無駄遣い

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『だいじょうぶマイ・フレンド』

村上龍が自身の原作を監督映画化。ピーター・フォンダの主演起用に驚き。

公開:1983年 時間:119分  
製作国:日本

スタッフ 
監督・原作:        村上龍


キャスト
ゴンジー・トロイメライ:
        ピーター・フォンダ
ミミミ:        広田レオナ
ハチ:          渡辺裕之
モニカ:         乃生佳之
ドクター:        根津甚八
ジュリアス:  リチャード・ライト
レイ子:         青地公美
白衣の男A:       岸部一徳
白衣の男B:       苅谷俊介
白衣の男C:       辻畑鉄也
白衣の男D:        団時朗

勝手に評点:1.5
(私は薦めない)

あらすじ

ミミミ(広田レオナ)、ハチ(渡辺裕之)、モニカ(乃生佳之)の三人の若者の前に、奇妙な男が墜落してきた。

彼の名はゴンジー・トロイメライ(ピーター・フォンダ)、超人パワーを失ったスーパーマンなのだという。

ミミたちは彼を助け、元のパワーを取り戻させようとするが、ゴンジーの能力を利用しようとする悪の組織ドアーズが彼らの前に立ちはだかる。

今更レビュー(ネタバレあり)

2026年に原田マハが自著『無用の人』を自ら監督して映画化するらしい。

それはそれで期待したいが、古来、原作者が脚本を手掛けるにとどまらず、メガホンまで取った映画で成功したと思える例は殆ど記憶にない。

あ、一つあった。漫画だけど、井上雄彦『THE FIRST SLAM DUNK』は稀少な成功例だろう。

翻って、村上龍。鮮烈なデビュー作『限りなく透明に近いブルー』から本作『だいじょうぶマイ・フレンド』、そして『トパーズ』と当初は自著を自ら監督して映画化していったが、1996年の『KYOKO』を最後に監督業からは距離を置いている。

それは賢明だと思う。村上龍に監督の才能があるかないかではない。文学の世界でそれなりに名をあげてきた人が監督までやってしまうと、その演出や方向性に苦言を呈してくれる人が登場しにくい

結果的に独りよがりで理解不能な作品になるか、まったく盛り上がりに欠ける退屈な作品になりがちだ。

本作もその例に漏れない。超人パワーを失ったスーパーマンが空から降ってきて、若者の力を借りて遠い故郷の星を目指す。

原作のプロットそのものは、今思えば、とても社会風刺と快楽主義を信条とする(違うかな)村上龍の著作には思えないが、お気楽なコメディ・アクション映画としては成立するように思う。

でも、映画として力を入れるところが、ことごとく的外れな気がする。

©キティフィルム

例えばオープニング。後方に懐かしきワールドトレードセンターがそびえるブルックリン橋のたもとで、ミミミ(広田レオナ)ダンスミュージカルシーンから始まり、そこから彼女の全裸でバスト開陳ショットにつながる映像。

見応えはあるが、本筋とは全く無縁の映像処理にカネがかかっている。どうせなら、西新宿の上空からホテルのプールに墜落するゴンジー(ピーター・フォンダ)のシーンに、もっとカネをかければよいのに。

ゴンジーを助ける三人の若者たち、ミミミ(広田レオナ)、ハチ(渡辺裕之)、モニカ(乃生佳之)

プールに降ってくる出会いから次第に親しくなっていく導入部分を期待したのに、すぐに悪の組織ドアーズに捕まり、強制的に洗脳されそうになる展開に。ここはテンポも悪く、しつこい。序盤の勢いが欲しい所なのに。

オーディションで本作デビューの広田レオナを中心に二人の男友達という構成が、同じキティフィルム製作で河合美智子デビューの『ションベン・ライダー』と重なる。

ただ、同作は手練れの相米慎二監督に共演が永瀬正敏坂上忍だから、間が持つ。本作では、ファイトいっぱつ渡辺裕之と、元ジャPAニーズ乃生佳之が共演だから、ミミミを支えるにはやや心もとない。

あちらが『ションベン・ライダー』なら、こちらは『イージー・ライダー』ピーター・フォンダだよ。

この起用には驚いたが、ハリウッドのサラブレッド俳優にこんなポンコツ超人を演じさせるとは、更に驚きだ。演技力も要求されないような役が勿体なさすぎる。

©キティフィルム

髪型が似てるダニエル・カールなら、山形弁で話してくれたのに。そういえば、ディーン・フジオカにも見えなくもない。ディーン『海を駆ける』なんて、まさにゴンジーみたいな超人の役だった。

そして、ピーター・フォンダに比肩する無駄遣いが、悪の組織ドアーズの首領であるドクター役の根津甚八。何で引き受けるかな、こんな役を。

ただ、しかめっ面で部下に指示をしてゴンジーを追い詰めるだけの役に、根津甚八の渋さは不要だ。彼の手下には岸部一徳、苅谷俊介、団時朗など個性派揃い。

©キティフィルム

ドクターのキャラが岸田森っぽく見えるところに、隣に団時朗がいつもんだから、まるで『帰ってきたウルトラマン』のように見える。

ドアーズは、ゴンジーの皮膚細胞を採取し、人工単性性殖による超人のコピーを造ろうとしていた。一方、生まれ故郷に帰りたいが、飛べなくなってしまったゴンジーに三人は協力を申し出る。

こうして、ミミミたちとドアーズとのドタバタ対決が繰り広げられるわけだが、ワンシーンだけのカメオ出演する俳優たちが無駄に豪華すぎて、全体のバランスを崩している。

刑事役のタモリタモリ一義を名乗っていた時代)、トマトのイベント登壇者の小松政男、店頭販売でスプレーを売る研ナオコに、ドアーズ工場の上司の武田鉄矢など。

©キティフィルム

音楽のクレジットの顔ぶれも豪華だった。加藤和彦、来生たかお、桑田佳祐、坂本龍一、高中正義。記憶にあるのは、シングルにもなった主題歌だけだが、劇中のジルバの曲は面白かったな。

ミミミが地下駐車場で『だいじょうぶマイ・フレンド』を歌う場面の、背後に駐車しているクルマは全てホンダ・シティ。そのトランクにすっぽり入る形状の原付バイク・モトコンポも、ドアーズ工場で乗り回されている。

これは、当時ピーター・フォンダが名前つながりでCM起用されたホンダを意識しているのだろうが、映像的には斬新。

ハングライダーやパラセイリングでゴンジーが空を飛ぶシーンや、ドアーズのバイク隊とのチェイスシーンなど、アクション映画なら盛り上がるべきポイントがダルい感じ、かつ冗長

大量のトマトが喋ってゴンジーを怖がらせる演出も物足りない。

尻すぼみ的な原作のエンディングを映画向けに仕立て直したのは分かるが、トマトを瞬時にジュースにしてしまうスプレーのご都合主義や、ロケットをマスターベーションの精液弾で破壊するゴンジーのお下劣な荒唐無稽さも、ちょっと寒々しい。

©キティフィルム

ちなみに、本作の3年後に森田芳光監督がとんねるず主演で撮るのが『そろばんずく』。両者の映画全体の雰囲気がよく似ているのが興味深い。森田監督の才能をもってしても、この手の映画はうまくいかないのだ。だから悲観することはない(してないか)。