『フォール・ガイ』
The Fall Guy
デヴィッド・リーチ監督がライアン・ゴズリング主演で贈る、スタント愛溢れるサスペンス・アクション。
公開:2024年 時間:124分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: デヴィッド・リーチ
脚本: ドリュー・ピアース
原作: グレン・A・ラーソン
『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』
キャスト
コルト・シーバース:ライアン・ゴズリング
ジョディ・モレノ: エミリー・ブラント
トム・ライダー:
アーロン・テイラー=ジョンソン
ゲイル・マイヤー: ハンナ・ワディンガム
イギー・スター: テリーサ・パーマー
アルマ・ミラン: ステファニー・スー
ダン・タッカー: ウィンストン・デューク
ヘンリー: ジャスティン・イートン
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
大怪我を負い一線から退いていたスタントマンのコルト(ライアン・ゴズリング)は、復帰作となるハリウッド映画の撮影現場で、監督を務める元恋人ジョディ(エミリー・ブラント)と再会する。
そんな中、長年にわたりコルトがスタントダブルを請け負ってきた因縁の主演俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)が失踪。
ジョディとの復縁と一流スタントマンとしてのキャリア復活を狙うコルトはトムの行方を追うが、思わぬ事件に巻き込まれてしまう。
レビュー(まずはネタバレなし)
スタント愛だろ、愛
『フォール・ガイ』って何かと思ったら、スタントマンのことだった。監督のデヴィッド・リーチは、ブラピやジャン=クロード・ヴァン・ダムのスタント等を務めた後、『ジョン・ウィック』で監督デビューした人物。
スタントマンやアクション映画愛に満ちた本作のメガホンを取るのに、彼ほど適任な監督はいないだろう。
◇
ライアン・ゴズリングが演じる主人公のコルト・シーバースは一流のスタントマンで、売れっ子俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)専属のスタントダブル。
監督志望のジョディ・モレノ(エミリー・ブラント)とは恋人同士だが、彼女がカメラクルーを務めるトムの主演映画の撮影で、コルトは落下のスタントに失敗し、業界からもジョディからも姿を消してしまう。
そして18か月後。人知れずレストランの駐車係をしているコルトの元にプロデューサーのゲイル(ハンナ・ワディンガム)から復帰の要請。シドニーで撮影中のトム主演のアクション映画『メタルストーム』の撮影に参加して欲しいとのこと。
渋るコルトだったが、ジョディが初監督に抜擢され、自分を必要としていると聞き、浮き足立ってシドニーに向け飛び立つ。ところがジョディがコルトを呼んでいるというのは真っ赤な嘘で、ゲイルが勝手に呼び寄せたものだった。
そうとは知らぬジョディは、新入りのスタントに、次々と過酷なアクションを求め、張り切って撮影を進めていく。そして撮影後にコルトの存在に気づき、恋人の自分を置いて失踪したことを激しく責める。
途中からサスペンスタッチに
ここまでの序盤展開で、スタントシーンとしては相当盛り沢山、かつバラエティに富んでいる。スタント好きには堪えられないシーンが多いのではないか。
通常のアクションではなく、それをスタントマンがやっている様子が見えるのだから、これは貴重だ。クルマの衝突や横転、ビルからの落下、あちこちで爆破が起きる中のチェイス、火だるま攻撃。
ライアン・ゴズリングにも当然代役がいる訳で、これらのシーンをそのスタントダブルが命がけで引き受けているのだ。ちなみに、その人物ジャスティン・イートンは別な重要な役としても本作に登場。
ジョディたちが撮っている映画『メタルストーム』は、『DUNE/デューン 砂の惑星』を思わせるカウボーイとエイリアンのバトルアクション。俳優たちがみなエイリアンのかぶり物とボイスチェンジャー装着なので、滑稽でもある。
デヴィッド・リーチ監督作品としては『ジョン・ウィック』のようなシリアス路線ではなく、『ブレット・トレイン』や『デッドプール2』のコミカルなエンタメ路線。
さて、このままコルトたちが頑張ってジョディの初監督作を完成させる物語なのかと思いきや、途中で方向性が大きく変わる。
プロデューサーのゲイルがコルトに新たなミッションを授ける。映画の撮影中に失踪してしまったトムを至急探せというのだ。
コルトにそれを引き受ける義理はないが、主演の失踪は映画の予算超過につながり、ジョディの監督になる夢も果たせなくなると思えば、彼に迷う余地はない。こうしてコルトは、トムの足取りを追い始め、事件に巻き込まれていく。
映画愛に溢れる会話
- テイラー・スウィフト聴いて思い出に浸ってコルトが泣いてみたり
- 左右の分割画面でジョディと二人で遊んでみたり
- ドラッグでハイになってユニコーンが登場したり
- 記憶力の悪いトムの自宅の壁一面がポストイットだらけだったり
- フランス語で命令すると股間を狙うジャン=クロードという猟犬が参戦したり
正統派のサスペンス・アクションで成立させるには若干プロットが弱いと判断したのか、笑いの要素多めでごまかしている感はある。
ただ、本作の元ネタである80年代のテレビドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』が同じような路線だったのかもしれない(ドラマは未見なので分からず)。
◇
スタントマンたちが当然ながらみなアクション映画好きで、会話の中に映画ネタがさりげなく散りばめられているのはとても楽しい。
この手の会話は『桐島、部活やめるってよ』から『フェイブルマンズ』まで、映画オタクの物語には必須アイテムだが、スタントの世界だって同じなのだ。
主人公コルトを演じたライアン・ゴズリングの近作『バービー』のケン役はちょっと違うが、『グレイマン』や『ブレードランナー2049』など、アクション映画もお手の物。
お相手のジョディ役のエミリー・ブラントは、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『ボーダーライン』などアクション作品にも出演。本作でも監督役ながら、キレのいいアクションを披露。
失踪してしまった人気俳優トム役のアーロン・テイラー=ジョンソンは、『ブレット・トレイン』で殺し屋をやっていた人物。マーベルのMCUではクイックシルバーを演じているが、バトルの場面はほとんどないか。
MCUの出演者なら、コルトの相棒でスタント・コーディネーターのダン・タッカーを演じたウィンストン・デュークの方が屈強っぽい。『ブラックパンサー』シリーズではエムバク役。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
失踪したトムを探すうちに、コルトはホテルの部屋で謎の氷漬けの死体を発見する。その死体はコルトが引退したあとにトムのボディダブルの座についたヘンリー(ジャスティン・イートン)。
コルトはトムの残した携帯の動画から、トムが飛び蹴りでヘンリーを殺したことを知る。それはアクシデントではなく、生意気になったスタントに制裁を加えたのだ。そしてトムはその殺人の罪を、コルトになすりつけようとしていた。
結局最後にコルトたちは、トムをスタント撮影に無理やり付き合わせて、罪を自白させるという荒業に出る。ここはクライマックスだが、映像の派手さは申し分ないが、展開としては強引と言わざるを得ない。
首謀者であるトムとプロデューサーのゲイルは逮捕され、『メタルストーム』の主演は『アクアマン』のジェイソン・モモア本人に差し変わって公開され、成功を収める。これでハッピーエンド。
◇
伊坂幸太郎ファンとしては納得できないデヴィッド・リーチ監督作品『ブレット・トレイン』に比べ、本作は能天気に観られるエンタメ作品としてランクアップしている。
ジェイソン・モモア登場に唐突感は否めないが、エンドクレジット後に、なぜそうなったのかが分かるワンシーンがオマケについている。
ここにトムとゲイルを逮捕しに駆けつける警察官が妙に不自然なバストショットで、このカメオっぽいオッサン誰と思ったら、リー・メジャースだって? ドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』でのコルト役だったそうだ。
リー・メジャースといえば『600万ドルの男』しか思い浮かばなかった。まあ、俺は『バイオニック・ジェミー』派だったけど。