『プロメテウス』今更レビュー|エイリアン前夜祭①

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

『プロメテウス』
Prometheus

リドリー・スコット監督が、長い沈黙を破ってついに描いたエイリアンの前日譚。

公開:2011 年  時間:124分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:       リドリー・スコット
脚本:      デイモン・リンデロフ
           ジョン・スペイツ
キャスト
エリザベス・ショウ:  ノオミ・ラパス
デヴィッド: マイケル・ファスベンダー
ヴィッカーズ:  シャーリーズ・セロン
ヤネック船長:    イドリス・エルバ
チャーリー・ホロウェイ:
    ローガン・マーシャル=グリーン
ファイフィールド:  ショーン・ハリス
ミルバーン:     レイフ・スポール
チャンス副操縦士: エミュ・エリオット
ラヴェル副操縦士:ベネディクト・ウォン
ウェイランド社長:   ガイ・ピアース

勝手に評点:3.5
  (一見の価値はあり)

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX

あらすじ

数学者エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)らのチームは、地球上の場所も年代も異なる数々の遺跡から、共通のサインを発見する。

それを知的生命体からの招待状だと判断した彼女は、サインが示す惑星へと、クルーと共に宇宙船プロメテウス号に乗り、未知の惑星を訪れる。しかし、そこには人類が決して触れてはならない、驚きの真実が眠っていた。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

リドリー・スコット監督が33年ぶりに『エイリアン』を手掛ける、それも前日譚だということで、大いに期待した本作。権利関係の問題なのか、当初の想定ほど、両作品の連関性は明確には示されない。

とはいえ、『PROMETHEUS』アルファベットの直線が一本ずつ増えていくタイトルの出し方は『ALIEN』のスタイル踏襲。

どこかの惑星に向かう長期航行中の宇宙船で、クルーが冬眠ポッドから覚醒する様子や、メンバーの一人がロボットであることなど、お馴染みの怪物が登場しなくても、『エイリアン』の雰囲気は濃厚に味わえる。

本家リドリー・スコットが作っているのだから、当然といえば当然か。

2089年、世界各地の遺跡で発見した古代人の壁画に、共通の星図を発見した考古学者のエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)チャーリー・ホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)は、それを人間を創造した異星人エンジニアからの招待状だと信じる。

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX

ウェイランド社の資金を得て、二人はプロメテウス号に乗り込み、そのメッセージが示すと思われる惑星へと向かう。ショウ博士らの仮説が正しければ、人類を創造したのは神ではなく、異星人エンジニア

彼らは、神に代わる者に会いにいくために、調査目的でこの船に同乗していた。

プロメテウス号にウェイランド社からの監視役として乗っているヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)。は、本シリーズではお馴染みの会社のイヌだ。クルーの安否より社命優先。

ちなみに、『エイリアン』ノストロモ号のオーナーはウェイランド・ユタニ社。本作以降に、ウェイランド社が合併する設定なのだろう。

シガニー・ウィーバーに代わる女性ヒーローは、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』フュリオサ隊長で名を挙げたシャーリーズ・セロンかと思っていた。

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX

だが、最後まで生き残り戦う女はエリザベス・ショウ博士、演じるのは『ドラゴン・タトゥーの女』ノオミ・ラパス(でもシャーリーズ・セロンが感染者のチャーリーを無情に殺す場面は、フュリオサ入ってました)。

清潔感がハンパないロボットのデヴィッドマイケル・ファスベンダー所作があまりに美しく、まるで人間味がない。

『エイリアン』の前の時代なのに、ロボットの動きが技術的に洗練されてしまっているのは厳密にはおかしいが、それは過去に『スターウォーズ』でも指摘された点で、堅苦しいことはいわないことで決着。

人間は誰が何のために創造したのか。その答えを追い求めるショウ博士らを、人間を安心させるために人間に似せて作られ、自分たちはなぜ作られたのか考え続けるデヴィッドがサポートする。

単純なSFホラーに見せかけて、実は哲学的なメッセージを問いかけてくるのがリドリー・スコット流。思えば『ブレード・ランナー』でも、レプリカントたちはせまりくる自分たちの寿命に脅えながら、工業製品である自分たちの人生を深く憂いていた。

さて、ついにプロメテウス号が降り立った惑星、地球と同じ大気成分だと喜び、油断してヘルメットを脱ぎ、人気のない洞窟内を探索し、そこからやがてエイリアンの攻撃が始まり、クルーが一人ずつ犠牲になっていく

これはもう、シリーズのどの作品にも登場する定番パターンであり、本作も当然例外ではない。でも、やはり本家はメリハリの効いた演出で他の監督より一歩抜きんでているように思う。

3作目以降の『エイリアン』は、敵が強すぎたり速すぎたりで、グロいけど怖くなく、むしろ笑っちゃうことさえあった。

その点、本作の怪物たちは初めは小さくおとなしく、やがて大きく凶暴になっていき、まあ怖いことといったらない。四肢を拘束されて、口の中に蛇のように敵が入り込んで体内をかき回される死に方は、私なら遠慮したい。

本作はただエイリアンと人間との戦いではなく、そこに異星人エンジニアの存在が絡んでくる。彼らはこの星でこの生物兵器を培養したが、自らがその生物の犠牲になり、絶滅してしまったのではないか。

『エイリアン』に登場した馬蹄のような形の遺棄された宇宙船。そのコクピットには、甲冑のような格好の異星人の化石があった。スペース・ジョッキーと呼ばれるものだ。

本作ではその同じ宇宙船で、クルーたちがスペース・ジョッキーのヘルメットを外すと、中から異星人エンジニアが現れる。筋骨隆々の大男のようなその人物は、冒頭で滝つぼに身を投じる異星人と同種族。

彼らは人間たちと同じDNAを持っていることが調査で分かっている。振り返れば、冒頭のシーンは、太古に地球に降り立った異星人が、身を挺して自分のDNAを海へと拡散し、人類を創造した場面だったのだ。

そんな異星人エンジニアとのファーストコンタクトを、古代語を解するデヴィッドが担当する。当然、知的で友好的な会話を想像するではないか。だが、異星人は何も言わずデヴィッドの首をもぎ取って放り投げる。これにはビビった。

結局そこから先は会話も何もなく、異星人も結局エイリアンの餌食になり、気がつけばプロメテウスのクルーも殆ど殺されてしまっている。

「あの怪物を地球には行かせねえぞ」と船長のヤネック(イドリス・エルバ)がプロメテウス号の艦隊ごと体当たりで決死の撃墜。「船長もしょうがねえな」と付き合う副操縦士の二人(エミュ・エリオット、ベネディクト・ウォン!)がいい。

恋人のチャーリーを介してエイリアンの子を宿し、急速に胎内で成長する怪物を開腹手術で摘出したり、首だけになって地べたに転がるデヴィッドがそのまま話し続けたり。

過去作で見覚えのあるシーンが随所にあるのは楽しく、また異星人エンジニアの参入により二番煎じの感も少ない。

(C)2012 TWENTIETH CENTURY FOX

最後に残るのは首だけのデヴィッドとショウ博士。彼女は、なぜ創造主は人間を絶滅させようとしたのかを確かめるために、異星人エンジニアの母星に向かうという。

次作は『エイリアン:コヴェナント』。デヴィッドが腹に何を隠し持っているのか、本作で提示された謎は、どこまで回収されるのか。

シリーズ一気通貫レビュー(時系列順)

『プロメテウス』(2011)
リドリー・スコット監督

『エイリアン:コヴェナント』(2017)
リドリー・スコット監督

『エイリアン』(1979)
リドリー・スコット監督

『エイリアン2』(1986)
ジェームズ・キャメロン監督

『エイリアン3』(1992)
デヴィッド・フィンチャー監督

『エイリアン4』(1997)
ジャン=ピエール・ジュネ監督