『エイリアン』 (リドリー・スコット監督)
『エイリアン2』(ジェームズ・キャメロン監督)
『エイリアン3』(デヴィッド・フィンチャー監督)
『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ監督)
『エイリアン』
Alien
公開:1979 年 時間:116分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: リドリー・スコット 脚本: ダン・オバノン キャスト ダラス: トム・スケリット リプリー: シガニー・ウィーバー ランバート: ヴェロニカ・カートライト ブレット:ハリー・ディーン・スタントン ケイン: ジョン・ハート アッシュ: イアン・ホルム パーカー: ヤフェット・コットー
勝手に評点:
(何をおいても必見)
あらすじ
宇宙船ノストロモ号の乗組員はある惑星で異星人の宇宙船を調査する。だがその時、卵の中の生き物が乗組員に寄生。
やがてそれは腹を食い破り、ノストロモ号内に潜伏する。その後、宇宙生物は人間をひとりずつ抹殺。
生き残った航海士リプリー(シガニー・ウィーバ―)はたった独りで戦いを繰り広げることになる。
今更レビュー(ネタバレあり)
40年以上経ってもなお色褪せぬ完成度
巨匠リドリー・スコット監督の名を世界中に轟かせた、SFホラーというか閉鎖空間系ホラーの金字塔。何度観ても、怖い。未知の生物というのは、ネバネバとウェット系になるだけでこんなにキモさマシマシになるものなのかと感心する。
1979年の作品だけあって、さすがに宇宙船のクルーが使うコンピュータの画面インタフェースや文字の荒さには時代を感じるものの、むしろ気になったのはそれ位。あとは宇宙船の造形から物語の展開までどれも色褪せていない。
クラシックな名作は大抵「(当時にしては)素晴らしい」という感想になるものだが、本作は今なお現役で素晴らしいのだ。
◇
冒頭、宇宙空間に一本ずつ増えていく謎の棒がやがて『A L I E N』のタイトルになっていく洗練。薄暗く無人と思われた宇宙船ノストロモ号で、人口冬眠から目覚める乗組員たち。
採掘された鉱石を積んで地球に帰還途中で、謎の信号を傍受し、その正体を探る任務遂行中に、仲間を救うためにエイリアンを船内に入れてしまう。そこから惨劇が始まっていく。
剛速球投げ込み系のホラー
今更ストーリーの説明は不要だろう。登場人物は七人の乗組員とエイリアン、あと猫一匹のみという潔さ。その七人のメンバーも、ちゃんとキャラが立っており、一人も無駄死にしていない。
はじめにサソリのような敵を顔に貼り付けて帰還したケイン(ジョン・ハート)が腹を食い破られ、それから次々と餌食になっていく。
◇
くるぞ、やばいぞと盛り上げておいて、ホントにそうなる。なのに怖い。
この手のホラーは、怖い雰囲気だけ作って、一旦「なあんだ」と安心させ、次に襲わせるのが常套手段だが、本作はそんな姑息なチェンジアップは使わず、豪速球でバンバン投げ込む(あ、捕まえたら猫でした、があったか)。
最初にケインの腹から飛び出すヘビ状の怪物、白い汗をかいて頭をもがれ人間でないと分かるアッシュ(イアン・ホルム)、最後までチラ見せだけでなかなか全貌をみせないからこそ不気味なエイリアン。
これ、作り手は絶対面白がって撮ってるだろ~。マジで怖いけど、なぜか楽しく思えて二やついてしまう。そんな映画だ。H・R・ギーガーならではの天才的なクリーチャーデザイン。昔、白金にあったギーガーズ・バー、行ったなあ。
そしてシリーズは始まる
そして、主人公は毅然とした女性乗組員リプリー(シガニー・ウィーバー)。もはや女性主人公のみが最後まで生き残り、敵と渡り合うなんてことは珍しくなくなったが、本作の公開当時はまだ、そのような役割を女性にアサインするのは珍しかったように思う。
本作の脚本家ダン・オバノンが学生時代に『ダーク・スター』を共同制作した友人がジョン・カーペンター。
南極基地と宇宙船の違いはあるが、本作と同じように閉鎖空間の恐怖を描いたジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』は、メンバー全員が男性だったな。あの作品は怪物の造形で遊び過ぎたので、本作よりもコミカルなホラーになってしまった。ま、そこが彼の魅力なのだが。
これだけの作品をヒットさせれば、当然同じ監督で続編が作られそうなものだが、面白いことにエイリアンのシリーズは次々と監督を替え、しかも高い作品レベルを維持する。
リドリー・スコット監督の手を離れたおかげで、我々は『ブレード・ランナ―』(1982)という、本作に負けないカルトムービーに出会うことができたわけだ。
リドリー・スコット監督は後に、本作の前日譚である『プロメテウス』(2012)とその続編『エイリアン:コヴェナント』(2017)を手掛けるが、やはりオリジナルの完成度には及ばなかったと思う。