『バットマン』『バットマン リターンズ』|ティム・バートンのシリーズ一気通貫レビュー

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『バットマン』(1989)
『バットマン リターンズ』(1992)

『バットマン』
 Batman

公開:1989年  時間:126分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        ティム・バートン
原案:           サム・ハム
原作:          ボブ・ケイン


キャスト
ブルース・ウェイン/ バットマン:

          マイケル・キートン
ジャック・ネーピア/ ジョーカー:

         ジャック・ニコルソン
ヴィッキー・ベール:キム・ベイシンガー
アレクサンダー・ノックス:

           ロバート・ウール
アルフレッド・ペニーワース:

            マイケル・ガフ
ジェームズ・ゴードン総監:

           パット・ヒングル
ハービー・デント検事:

     ビリー・ディー・ウィリアムズ
エクハート警部補:

       ウィリアム・フットキンス
カール・グリソム: ジャック・パランス

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

あらすじ

大都会ゴッサム・シティ。そこでは謎のヒーロー・バットマンが、特殊武器を駆使して悪党どもを毎夜退治していた。

フォトグラファーのヴィッキー(キム・ベイシンガー)はバットマンの正体究明に乗り出し、あるパーティで大富豪ブルース・ウェイン(マイケル・キートン)と知り合う。

一方その頃、バットマンに悪事を阻止され化学工場で廃液を浴び、常時笑っているような醜い顔となったギャングのジャック(ジャック・ニコルソン)はジョーカーを名乗りバットマンへの復讐に立ち上がる。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ダーク・ファンタジーの鬼才ティム・バートン監督とアメコミ・ヒーロー映画とは意外な組み合わせとは思うが、
バットマンはダーク・ヒーローだから、不思議ではないか。

アメコミ・ヒーロー映画の水準は、2000年以降『X-メン』シリーズと『アイアンマン』から始まり延々と続くMCUシリーズによって、格段に引き上げられた

だから、前世紀の映画をみると、どうしても安っぽく見えてしまうのは否めない。だが、この映画はけして子供騙しの作品ではない

今日のアメコミ・ヒーロー映画の礎を築いた、クリストファー・リーヴ『スーパーマン』(1978)から約10年を経て、DCコミックの双璧であるバットマンがようやく映画化される。

優等生のクラーク・ケントと違い、ブルース・ウェインは両親を殺された古傷を抱え、ゴッサム・シティの平和と秩序を影となって守ろうとする孤高のヒーローだ。

映画は、その複雑で繊細な内面を描こうとしている。だから、ただの勧善懲悪ものでは勿論ないし、主人公自身が鎧で身を包んだ生身の人間というのも、魅力のひとつである。

バットマンは2005年に始まるクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』トリロジーによって、リブートされる。これはもう、大人のためのバットマンであり、その完成度は素晴らしい。

本作はどうしても、それと比較してしまうのだが、特にキャスティングについては分が悪い。

       ティム・バートン監督版>  クリストファー・ノーラン監督版>
ブルース:   マイケル・キートン      クリスチャン・ベール
アルフレッド: マイケル・ガフ        マイケル・ケイン
ゴードン:   パット・ヒングル       ゲイリー・オールドマン
デント:    ビリー・ディー・ウィリアムズ アーロン・エッカート
ジョーカー:  ジャック・ニコルソン     ヒース・レジャー
横スクロールあり

更に『ダークナイト』には、技術担当のモーガン・フリーマンまで投入されており、豪華さには差がある。ティム・バートン版で勝ち目があるのはジョーカージャック・ニコルソンだが、ヒース・レジャーだって健闘している。

本作の配役で馴染めないのは、やはり主人公ブルース・ウェインを演じたマイケル・キートンだろう。

ヒーロー然とした二枚目俳優にはしたくないと、『ビートルジュース』での出会いから起用したようだが、あちらでは白塗り顔の幽霊だったマイケル・キートンが、白塗りをジョーカーに譲ってマスクヒーローになる。

彼のブルース・ウェインけして悪くはないのだが、かといってキートンの持ち味が発揮できたとも思えず、ランボルギーニを乗り回すクリスチャン・ベールに比べるとだいぶ地味な印象だ。

これでは、ブロンドのロングヘアが時代を感じさせる、ヒロインの女性カメラマン、ヴィッキー・ベールを演じたキム・ベイシンガーの派手な妖艶さともバランスが悪い。

この映画で唯一無二の存在感を放つのは、やはりジャック・ニコルソンの演じるジョーカー。製作費の多くを彼のギャラに費やしたのも、無駄遣いではなかった。

悪党のジャック・ネーピアの頃からパープルのスーツに身を包み、お馴染みの不敵な笑みをたたえる。

ボスであるグリソム(ジャック・パランス)の愛人アリシア(ジェリー・ホール)を寝取ったことで化学工場に誘き出され、そこでバットマンと戦った末、酸のタンクに落下してしまう。

爛れた顔を白塗りし、引き攣った笑顔のまま固定されると、ジョーカーの誕生だ。口角上がりっぱなしの表情と、グリーンに染めた髪。ビジュアルは歴代ジョーカーの中でもピカイチだと思う。

町中に恐怖の化粧品を流布させたり、仲間とダンスしながら毒ガスを撒いたりと、その行動のバカさらしさは、戦隊ヒーローものにも通じるところ。ジョーカーのキャラが光っているのは、ティム・バートンの世界観と相性がいいからだろうな。

バットマンのマスクの造形も鼻ペチャだし、お手製の武器もちょっと頼りないし、『ダークナイト』に比べると粗が目立つ気はする。

だが、バットモービルは、ハマーみたいに無骨な頑丈さが売りのあっちより、ホットウィールみたいにマッチョなこっちのデザインの方がクールだと思う。

ゴッサム・シティの町や建物のデザインも、『ダークナイト』のディストピア風なそれとは違う人間味がある。

バットマンは武装している生身の人間だし、ジョーカーに至っては、身体が爛れただけで特殊能力など何もない。

この二人の対決がクライマックスだが、そんなジョーカーに鐘楼の上から彼女と共に突き落とされそうになるバットマンがちょっと情けない。

「月夜に悪魔と踊ったことはあるか?」

ジョーカーのその口癖から、彼こそが、かつて幼少期に自分の両親を殺した暴漢であると気づいたブルースは、ようやく復讐を果たす。