『デッドプール&ウルヴァリン』
Deadpool & Wolverine
死んだはずだよウルヴァリン、俺ちゃんとバディ結成でMCUに合流。ディズニーのフォックス買収にもいいことあった!
公開:2024 年 時間:127分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ショーン・レヴィ
キャスト
デッドプール: ライアン・レイノルズ
ウルヴァリン: ヒュー・ジャックマン
カサンドラ・ノヴァ: エマ・コリン
パイロ: アーロン・スタンフォード
セイバートゥース: タイラー・メイン
ローラ / X-23: ダフネ・キーン
エージェント・パラドックス:
マシュー・マクファディン
ハンターB-15: ウンミ・モサク
ヴァネッサ: モリーナ・バッカリン
ネガソニック:ブリアナ・ヒルデブランド
ブラインド・アル: レスリー・アガムズ
ドーピンダー: カラン・ソーニ
ユキオ: 忽那汐里
ピーター: ロブ・ディレイニー
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
不治の病の治療のために受けた人体実験で自らの容姿と引き換えに不死身の肉体を手に入れた、元傭兵の無責任で破天荒なヒーロー、デッドプール(ライアン・レイノルズ)は世界の命運を懸けたあるミッションに挑むことになる。
彼はそのミッションの鍵を握るウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)に助けを求める。獣のような闘争本能と人間としての優しい心の間で葛藤しながらも、すべてを切り裂く鋼鉄の爪を武器に戦ってきたウルヴァリンは、ある理由により戦いから遠ざかっていた。
レビュー(まずはネタバレなし)
俺ちゃんもアベンジャーズに
『ウルヴァリン X-MEN ZERO』(2009)での初共演から敵対キャラであるデッドプール(ライアン・レイノルズ)とウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)が、まさか仲良く主役を張る映画が登場するとは。
巨人ディズニーによる21世紀フォックスの買収劇は作品に多様性を求める映画ファンにとっては嫌な予感しかしなかった。
だが、独自路線を歩んできたフォックスの『X-MEN』シリーズが、これによってマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に組み込まれたことは喜ばしいことだ。
それも、この二人がアベンジャーズの仲間になるような単純な話ではない。
そもそもX-MENの正規メンバーにもなっていない(トレーニー扱いだったか)デッドプールが、「俺ちゃんも不死身で強いからアベンジャーズの一員になれないか」と採用面接に行くなどというナンセンスな設定が心憎い。
MCUに組み入れられても、デッドプールの無駄口と下ネタ連発は健在だし、人を喰ったストーリーも相変わらずで安心する。
映画のタイトルは『デッドプールVSウルヴァリン』ではなく『&』であり、この二人がとある理由から共闘し強大な敵に立ち向かう話である。
劇場予告でも想像できたが、どちらかというと主役扱いはデッドプールの方だ。まあ、久々にヒュー・ジャックマンのウルヴァリンが観られるだけでも良しとしよう。
マルチバースにダメ出しかよ
『LOGAN/ ローガン』(2017)の感動的な死で、長かった新旧『X-MEN』シリーズは幕を閉じたと思っていたが、その十字架を傾けてX字にしたウルヴァリンの墓碑までデッドプールにあばかれる始末。
「ってことは、ウルヴァリンは死んでいなかったのか。感動台無しじゃん」となるところだが、そこは一応、うまく脚本が練られている。
MCU得意のマルチバース絡みの話であり、ドラマ『ロキ』に登場した時間変異取締局(TVA)がここでも活躍する。
◇
サノスを倒すまであんなに面白かったアベンジャーズ映画が、マルチバースの話を採り入れてからこっち、全然面白くねえじゃん。
我々の思っていたことを、こんなにズバッと代弁してくれるマーベルヒーローは、俺ちゃん以外にいるか?(そういえば、「俺ちゃん」って何の意訳なの。この日本語訳を考えた人、天才か)
さて、映画そのものについて語りたいのだけれど、何を書いてもネタバレになりそうで、とりあえず面白いとしか言いようがない。
前作『マーベルズ』もイマイチ冴えなかったし、このところ消化不良気味のMCU作品群にとっては、久々のスマッシュヒットだ。この勢いで、来年の『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で再び波に乗れるとよいが。
どんな予備知識が必要なの
本作をしっかり堪能しようと思うと、結構予習が必要だ。一本だけ観ておくのなら『LOGAN/ローガン』だろうか。ウルヴァリンの血を受け継ぐ幼い娘ローラ/ X-23(ダフネ・キーン)の存在は知っておきたい。
誕生日パーティでデッドプールを囲む仲間たちの顔ぶれは、『デッドプール2』を観ておけば概ね問題ない。ネガソニックよりもユキオ(忽那汐里)のが台詞が多かったのは感動。
その他、X-MENの悪役ひな壇メンバーが今回は何人か参戦。団体戦の中で彼らが登場すると、『X-MEN』らしい画になる。
全員覚えるには何作も観ないといけないが、知らなくても問題はない。第1作『X-メン』に出てきたウルヴァリンの兄貴セイバートゥースも登場。
一方、MCUのメンバーは、アベンジャーズの初期メンバーが大体分かればよいレベル。TVAについては映画の中で説明してくれるので、『ロキ』のドラマを復習することも不要。
むしろ、今回驚いたのは、試験範囲外から小ネタが多く出題されたこと。たしかにマーベルではあるのだが、これは意外だった(詳しくは後述)。
監督は『デッドプール2』のデヴィッド・リーチからショーン・レヴィにバトンタッチ。
デヴィッド・リーチ監督は現在公開中のライアン・ゴズリング主演の『フォールガイ』、ショーン・レヴィ監督はライアン・レイノルズ主演の『フリーガイ』。混同しそうだが、両監督の俺ちゃん作品の切れ味はどちらもGood。
ショーン・レヴィはヒュー・ジャックマンとも以前に傑作『リアル・スティール』で組んでいるし、本作の監督にはもってこいの人選。
また本作には、まるで『マッドマックス』のような舞台で二人が戦い『フュリオサ』と叫んでみたり、『スパイダーマン・スパイダーバース』並みに何種類ものデッドプール軍団が登場したりと、他作品のオマージュ的なイイとこ取りが散見され、楽しませてくれる。
なお、本作のメインヴィランは、兄チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーXです)を敵対視する双子の妹カサンドラ・ノヴァ(エマ・コリン)。
スキンヘッドの三蔵法師のようなキャラは、『ドクターストレンジ』のエンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)が出てきたのかと思ったら、全くの別人だった。
このカサンドラは滅法強い。彼女の指が相手の頭の中を通貫しグチャグチャかき回す映像は、メチャクチャ怖いっす。
これは、毒舌と下ネタだけでR15に指定するのは勿体ない。子供たちも観たいだろうに。かといって、下品じゃなかったら、俺ちゃんらしくないしなあ。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
映画の本筋とはまったくの無縁ではあるが、あのキャラクターは何だったの、という方のための補足情報。未見の方は知らない方が楽しめます。
◇
中盤でキャプテン・アメリカがついに登場したと思ったら、メチャクチャ口が悪く別人のよう。何と、同じクリス・エヴァンスでも『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチの役なのだ。だって胸に④マークあるし、弱っちいし。
これはライアン・レイノルズがグリーン・ランタン役で現れるような楽屋オチでワロタ。
デッドプールとウルヴァリンが組む仲間には、エレクトラ、ブレイド、ガンビット、それにX-23。
エレクトラとブレイドはマーベル仲間だが別リーグなので初参加か。
ガンビットは『ウルヴァリン X-MEN ZERO』でも活躍したトランプマンだが、ここにきて久々復帰。X-23は『LOGAN/ローガン』の少女ローラだが、すっかり成長。このメンバー編成も、なかなかゴージャスだ。
ヘンリー・カヴィルがDCコミックの世界から越境してきたのは驚いた。彼が演じるのはキャプテン・ブリテンかと思いきや、数あるデッドプールの亜種の中の一人。
◇
最後は自己犠牲を張り合う<混ぜるな危険>コンビ。バディムービーとして、ちゃんと成立しているではないか。散々バカな口喧嘩と派手な戦いを繰り広げながら、最後には力技で思わぬ感動展開にもっていく。これには驚く。
『LOGAN/ ローガン』の感動は、本作で帳消しではなく、上書きされると言ってよい。赤鼻のトナカイじゃないが、ウルヴァリンの鉄爪の長さが、初めて役に立った気がするな。