『オールドボーイ』今更レビュー|なぜ監禁されたかよりなぜ解放されたか

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『オールド・ボーイ』
 Old Boy  올드 보이

パク・チャヌク監督の復讐三部作で、まず思い浮かぶのは本作か。突然15年監禁されることになった男がたどり着く真実。

公開:2003 年  時間:120分  
製作国:韓国

スタッフ 
監督:     パク・チャヌク
原作:     土屋ガロン(作)
         嶺岸信明(画)
       『ルーズ戦記 オールドボーイ』

キャスト
オ・デス:    チェ・ミンシク
ミド:      カン・ヘジョン
イ・ウジン:   ユ・ジテ
ノ・ジュファン: チ・デハン
パク・チョルン: オ・ダルス
ヒョンジャ:   イ・スンシン
イ・スア:    ユン・ジンソ

勝手に評点:4.0
 (オススメ!)

(C)2003 EGG FILMS Co., Ltd. all rights reserved.

    あらすじ

    平凡な人生を送っていたオ・デス(チェ・ミンシク)は、ある日突然何者かに拉致され気が付くと狭い監禁部屋にいた。

    窓の無い部屋にはベッドとテレビのみ、外部との交信は完全に遮断されている。ここはどこだ?一体誰が、何のために? 一切の理由が明かされぬまま15年の月日が流れたある日、デスは突如解放された。

    復讐を誓うデスに手助けを申し出る若い女性ミド(カン・ヘジョン)。そして目の前に現れた謎の男(ユ・ジテ)

    男は5日間で監禁の理由を解き明かせと、命を賭した「死のゲーム」を持ちかける。しかしその先には驚愕の展開が待ち受けていた。

    今更レビュー(まずはネタバレなし)

    なんで私が監禁に

    2022年5月に4Kリマスター版が公開された、パク・チャヌク監督の『復讐三部作』の中核となる作品。

    土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)の原作コミックは未読のままなので、どの辺を韓国風にアレンジしたのかは定かではないが、そんな余計な詮索をする気は全く起こさせないだけの面白さがある。

    本作は何度観ても面白いし発見もあるが、やはり予備知識なしで観る興奮には敵わない。その凄さをネタバレなしで伝えるのは難しいが、かといって未見の方には、ぜひ白紙の状態で臨んでほしいので、気を付けながら書いていきたいと思う。

    冒頭、泥酔して警察署に厄介になっている主人公の男・オ・デス(チェ・ミンシク)。相当悪酔いしてからむ姿が滑稽だ。娘の誕生日プレゼントに買った天使の羽根を背負っているむさ苦しいオッサン。壁にはソウル五輪のマスコットの虎がいる。時代は1988年頃ってことか。

    親友のジュファン(チ・デハン)が引き取りにきて、やっとデスは釈放されるが、友人が電話ボックスで連絡している隙に、忽然と姿を消す。彼は、そのまま、何者かにどこかに監禁されてしまう。

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    そして2か月。監禁といっても、シャワーもテレビもある部屋で、食事も届けられるため(常に餃子だが)、劣悪な環境ではないかもしれない。だが、2か月どころか、それから15年、デスは部屋から出られない。

    この序盤だけで、相当に引き込まれる。だって、ただ生かされているだけの15年。外部とは連絡は一切とれず、睡眠ガスで意識を失っている間に、掃除や散髪などがスタッフによって施される。

    そして、失踪中に妻は殺され、デスは指名手配されている。一体、誰が、何のために、そしていつまでこんなことを続けるのか。

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    そしてついに外界に出る日が

    謎だらけの中で、韓国の政治は動き、世界はY2Kを迎え、日韓ワールドカップが開催され、9・11のテロが起き、そして15年。ついにデスは壁に掘り続けた穴から手を伸ばし、指先に降る雨を感じる。

    よく分からんが、脱獄ものの映画だと思うではないか、それなりに見応えがあるし。だが、まるで予想ははずれる。彼はついに外界に出るが、それは自力ではなく、このタイミングで解放されるのだ。

    「笑う時は世界と一緒、泣く時はお前一人」

    監禁中に鍛えあげた肉体とイメージトレーニングで、まずは街でからんでくる若造どもを次々となぎ倒し、そして、テレビで紹介された日本食店がなぜか気になる。

    店に入り、そこで寿司を握る女・ミド(カン・ヘジョン)といつの間にか親しくなっていく。

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    この時点で、主犯の姿はまだみえない。だが、監禁中のデスに催眠術をかけたり、解放された彼を尾行し、ケータイや財布を与えたり、どうもデスを熟知し、彼を泳がせている様子が窺える。

    一体どうすれば、奴らの手がかりがつかめる。デスは、毎日食わされた餃子の味と店の名を頼りに、出前していた店を探し出す。これが復讐の第一歩だ。

    とまあ、これ以上は語りにくいので、犯人のプロフィールも書かずにおく。

    ただのバイオレンス映画ではない

    前作『復讐者に憐れみを』と同様に、本作も、まずは主人公が虐げられた苦しみから復讐に走るところから物語は始まり、そして復讐者は自分ひとりではないという、複雑な展開につながっていく。

    主人公デスを演じるのは『シュリ』(1999)で知られるチェ・ミンシクパク・チャヌク監督作品では、復讐三部作のトリを飾る『親切なクムジャさん』(2005)にも出演。

    相手役の若い女性ミドを演じるカン・ヘジョンは、『トンマッコルへようこそ』(2005)が印象に残っているが、最近はあまり日本では公開作がないのかな。

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    本作は、デスが金槌振り回して暴れまわったり、拷問で歯を抜いたり(麻酔抜きです)、巨大なタコの踊り食いをしてみたりと、パク・チャヌク監督お得意のエグい表現が随所に登場するせいで、それが売りの映画だと思われがちだ。

    4Kリマスター化で映像が鮮明になり、R15がR18に格上げしたのは、このグロ表現のせいなのか、デスとミドの濡れ場のせいなのかはよく知らないが。

    ただ、終盤まで観終われば、これらの要素は作品の個性にはなっているものの、観客を惹きつけるのは、あくまで、この監禁の謎解きであることが分かる。それも、トリックに唸らされるミステリーというよりは、犯罪動機や意図がわかったことで、作品に深みがでるヤツだ。

    それを支えるのは、謎の男イ・ウジン(ユ・ジテ)のキャラクターの魅力である。それでは、未見の方は、この辺でぜひ、本作をお楽しみください。

     

    今更レビュー(ここからネタバレ)

    ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はくれぐれもご留意ください。

    答えはエバーグリーンな高校時代に

    散々探し回ってようやく突き止めた餃子の店を手がかりに、デスは自分が監禁された建物を突き止める。

    エレベータの階数ボタンを二つ押すとその間の秘密のフロアに止まる仕組みが、『マルコヴィッチの穴』(2000、スパイク・ジョーンズ監督)っぽい。

    そこにいるのはパク(オ・ダルス)、ここで監禁ビジネスをやっている。暴れまくれば滅法強いデスなのだが、ついに現れた謎の男ウジンには、「俺を殺したら、「なぜ」は判明しないぞ」と落ち着き払って言い返される。

    とまあ、相当乱暴にストーリーを追ってみたが、結局デスは、5日間のタイムリミットまでにウジンの監禁理由をつきとめなければならなくなるのだ。

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    犯人と思しき人物が使っているチャットで名乗っているエバーグリーンを頼りに、心当たりを調べ尽くすデスと親友のジュファン、そしてミド。ついにエバーグリーンと名のつく、母校の同窓会サイトにたどり着く。

    そこには高校時代のウジンの姿もあったが、デスは顔の写っていない女生徒イ・スア(ユン・ジンソ)のことが気にかかる。

    彼女は、ダムに身投げしたはずだとジュファンがいう。自殺すると、卒アルにわざわざ写っている人物の顔だけボカシを入れて、誰だか分からなくするものなのか。これは厳しい。

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    「イ・スアは誰とでも寝るアバズレだったはずだ。俺も寝とけばよかった」とジュファン。

    イ・スアの当時の交際相手を聞きに彼女の旧友を訪ねるデスは、「あんたが一番よく知っているはずよ」と言われる。

    そうだった。デスは、スアが弟と教室で乳繰り合っているのを目撃し、それをジュファンに漏らし、やがて学校に広まった。彼女はそれを苦にして、自殺したのだ。

    なぜ監禁したかではなく、なぜ解放したかだよ

    姉を愛していたウジンには、デスを恨む理由があった。校舎を歩き回る大人のデスと、そこで回想に登場する高校時代の彼らが時間を越えて交錯する。

    だが、これで全ての謎が解けたわけではない。

    「正しい質問は、なぜ監禁したかではなく、なぜ解放したかだよ」

    ウジンがデスに告げる。彼にはまだ、切り札があった。

    彼がデスに開けさせたプレゼントの箱の中には、アルバムがあった。その中身が意味することが、ページを綴るごとに次第に明らかになっていく。この展開には鳥肌が立った。

    これ以上は、ネタバレで書いても無粋というものだろう。風貌からは知的で残虐なサイコパスに見えたウジンだが、最後まで観ると、彼の生き方にも美学を感じる(とはいえ立派な殺人犯ですが)。

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    なお、本作は再映画化権をめぐって、双葉社が訴訟を起こすなどの諍いの末、スパイク・リー監督(なぜ彼が?)でハリウッド・リメイクされた。

    顔ぶれがあまりにアベンジャーズの世界なので笑える。

    主人公がジョシュ・ブローリン(サノス)、お相手がエリザベス・オルセン(ワンダ)、それにサミュエル・L・ジャクソン(フューリー長官)ポム・クレメンティエフ(ガーディアンズのマンティス)までいる。

    なかなか興味深い面々だが、やはり韓国版の世界観には勝てないだろう。そう思って、いまだ観る気にはなれない。