①『東京リベンジャーズ』
②『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命』
③『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦』
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命』
遂に登場の大ヒット作の続編は二部構成。まずは謎が深まるばかりだが、血ハロの前半で盛り上がるべし。
公開:2023 年 時間:90分
製作国:日本
スタッフ 監督: 英勉 脚本: 髙橋泉 原作: 和久井健 「東京卍リベンジャーズ」 キャスト 花垣武道/タケミチ: 北村匠海 佐野万次郎/マイキー: 吉沢亮 龍宮寺堅/ドラケン: 山田裕貴 橘直人/ナオト: 杉野遥亮 橘日向/ヒナタ: 今田美桜 千堂敦/アッくん: 磯村勇斗 稀咲鉄太/キサキ: 間宮祥太朗 半間修二/ハンマ: 清水尋也 三ツ谷隆/ミツヤ: 眞栄田郷敦 場地圭介/バジ: 永山絢斗 羽宮一虎/カズトラ: 村上虹郎 松野千冬/チフユ: 高杉真宙 清水将貴/キヨマサ: 鈴木伸之
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
命を救えたはずのヒナタ(今田美桜)が、凶悪化した東京卍會によってタケミチ(北村匠海)の目の前で再び殺されてしまった。
かつてマイキー(吉沢亮)、ドラケン(山田裕貴)、バジ(永山絢斗)、ミツヤ(眞栄田郷敦)、パーちん(堀家一希)、カズトラ(村上虹郎)の6人が結成した東京卍會。
しかしある悲しい事件が起こり、彼らの固い絆は引き裂かれてしまう。東京卍會と敵対する芭流覇羅の幹部になった一虎と、敵側に寝返った場地。
タケミチはマイキーの親友でもある場地を東京卍會に連れ戻すことがヒナタを救う鍵だと考える。
レビュー(まずはネタバレなし)
当たったから続編を撮った訳ではない
大ヒットを記録した前作『東京リベンジャーズ』の続編は、<血のハロウィン>編として二部作の構成。
前作の盛り上がりとそのストーリー展開から、続編があるだろうことは容易に想像されたが、製作陣にははじめからその意気込みがあったという。
それだけ、二部作で語る<血ハロ>の物語はミステリー要素と感動が入り混じった、原作でも特に注目度の高い抗争なのだ。
前作で高校ヤンキーものとタイムリープものが融合した本作の面白さに出会い、エキサイトしたものの、その後原作も読み漁らず、アニメも一気に観ないうちに、続編が公開されてしまった。
かくなるうえは、6月公開の『血のハロウィン編 決戦』を観終わるまでは、何も予備知識を入れずにおこうと決意する。従って、本作は前回同様、原作抜きで映画本編だけのレビューとさせていただく。
序盤の不安を払拭する高校時代の興奮
映画はまず、東京卍會の潰滅を企む対抗勢力・芭流覇羅との乱闘、そして舞台は現代にとび、簡単な前回のおさらいに入る。
前作で歴史を変えてヒナタ(今田美桜)を生き返らせたタケミチ(北村匠海)は、彼女の弟ナオト(杉野遥亮)にけしかけられてヒナタとドライブに。
だが、ハンマ(清水尋也)の策略により、結局またヒナタは壮絶な死を遂げる。停めていた軽自動車に大型車が突っ込み、クルマごと炎上してしまうのだ。
◇
実は、この場面までの展開で、本作にはやや不安を抱いた。
デートにおけるタケミチとヒナタのベタで生ぬるく間延びした会話。炎上したクルマから彼女を救い出す時間は十分あったのに、抱き合って愛を語らっているうちにヒナタだけを死なせてしまう予定調和。
本編直前に劇場予告で観た『TOKYO MER~走る緊急救命室~』に匹敵するクサい芝居だ。横浜人情噺対決か。
だが、そんな不安もタケミチが再び歴史を変えてヒナタを取り戻そうと、高校時代にタイムリープした途端に一気に解決する。
もう、ここから先の、マイキー(吉沢亮)やドラケン(山田裕貴)が率いていた健全な不良集団だった東京卍會と、芭流覇羅との抗争前夜までのドラマが熱すぎるのだ。
たまに思い出したようにタケミチは現代に戻ったりするのだけれど、それすらまどろっこしい。このまま、高校時代の話に浸っていたいと思えるほどだ。
超豪華キャストはむさ苦しくない
キャスティングの多くは前作からの継続だが、今回から加わったメンバーが豪華度合いを更にランクアップさせている。
これだけの大作で台詞のある女優がほぼ今田美桜だけ(ああ、あとタケミチのバイト先のおばさん)というのも珍しいが、男性陣にイケメンが多いせいか、あまりむさ苦しさは感じない。
タケミチの北村匠海、マイキーの吉沢亮、そしてドラケンの山田裕貴、多方面で活躍するこのメインの三名が再び顔を揃えてくれている嬉しさ。互いの信頼感をにじませるキャラの安定感。マイキーは前作よりも、おとぼけなコミカル要素が増量。
そして中学時代からのタケミチの親友アッくん(磯村勇斗)。大して強くはない不良だが、気の置けないいいヤツなのだ。東京卍會に属していないから、出番は少ないのが残念。いや待て、序盤でヒナタのクルマに突撃して死んだ刺客も、アッくんだったか。
◇
前作では原作未読者には正体不明だったキサキ(間宮祥太朗)とハンマ(清水尋也)は、ともに本作では大活躍。インテリヤクザっぽいキサキは前作の敵組織・愛美愛主から東京卍會に寝返る、一番怪しそうな人物。
そして陰湿そうなハンマはトップ不在の芭流覇羅の副総長。キサキ役の間宮祥太朗、島崎藤村の文芸もの『破戒』(2022)での人種差別に苦悩する誠実な教師役からの激変ぶりがいい。
一方、ハンマ役の清水尋也、あの三白眼は『さがす』(2022)で彼が演じたサイコパスを思い出させる。
新規参入は三名。まずは東京卍會の創設メンバーだったが、足抜けして芭流覇羅に行くというバジ(永山絢斗)。ケンカは滅法強い。こういう超ヤンキーの永山絢斗見るの『クローズEXPLODE』(2014)以来久々じゃないか? なんか、本作で一番生き生きしている。
◇
そして、芭流覇羅のナンバー3・カズトラ(村上虹郎)。見た目ソフトだが、こいつも怖い。バジと同様、東京卍會の創設メンバーだが、少年院を出所し、敵対している。村上虹郎と北村拓海が絡んでいる姿は、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)のようである。
◇
もう一人の新メンバーは、東京卍會でバジの配下にいたチフユ(高杉真宙)。本作では終盤で唐突に登場した印象だが、どうやら次作ではタケミチの相棒役として活躍するとか。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
今回ネタバレの材料はないかも
創設メンバーでマイキーとも信頼関係のあったバジが、なぜいきなり芭流覇羅に寝返るのか。そして、それに先行して東京卍會を離れたカズトラは、なぜマイキーを恨んでいるのか。
その原因を描いた、タケミチがタイムリープする高校時代よりも更に少し遡って描かれる、東京卍會の創設期のエピソードがなんとも温かい。
みんなまだ青臭い不良連中だが、揃いの特攻服で相手をボコボコにして、渋谷スクランブル交差点で記念撮影。
だが、マイキーのために単車を盗もうとしたカズトラが、あやまってその持ち主を殺めてしまう。皮肉なことに、その相手は、10歳違いのマイキーの兄(高良健吾)だった。ここから、東京卍會の運命の歯車は狂っていく。
◇
もっとネタバレを書きたい気持ちは山々だが、なぜ東京卍會は凶悪集団と化してしまったのか、<首のない天使>の異名を持ち、総長の正体不明の芭流覇羅を統率しているのは誰なのか。
全ての謎は『血のハロウィン編 決戦』に持ち越されているので、バラしようがない。2か月後に後編を持ってくるワーナーブラザースお得意の『るろうに剣心』商法だ。
ああ、次作まで待ちきれない
現代で死刑囚として収監されているドラケンは、全てを知っているのに、何も語ってはくれない。辮髪がトレードマークのドラケンが、スキンヘッドになっているのもまた痺れる。
今どき、不良高校生が特攻服着て集まって決闘する映画やドラマを撮ろうと思えば、東映っぽいアクションとベタな笑いがセットになりがちだ。全編シリアスタッチで、この手のジャンルは撮りにくいのだろう。
だが本作は死んだ彼女をもう一度取り戻すという大きなミッションが根底にあるせいか、余計なコメディリリーフを入れていない。そこが嬉しい。だから、熱い。
主題歌は当然SUPER BEAVER。この充実した内容で90分は、「えっ、ここでおしまい!」と実にあっけないが、これからというところで終わってしまうのは、前後編のお約束だから仕方がない。
二作に分けて味わうべき、濃厚な内容なのだと信じて、待っていたい。