『バズ・ライトイヤー』考察とネタバレ|無くして分かるウッディのありがたみ。バズらないと嫌?

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『バズ・ライトイヤー』 
Lightyear

無限の彼方へ、さあ行くぞ。懐かしのヒーロー、バズ・ライトイヤーがピクサーに帰ってきた。それは嬉しいのだが…。

公開:2022 年  時間:105分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      アンガス・マクレーン
脚本:        ピート・ドクター

キャスト
バズ・ライトイヤー:
       クリス・エヴァンス(鈴木亮平)
イジー:   キキ・パーマー(今田美桜)
ソックス:  ピーター・ソー(山内健司)
モー:タイカ・ワイティティ(三木眞一郎)
ダービー:デール・ソウルズ(磯辺万沙子)
ザーグ:
   ジェームズ・ブローリン(銀河万丈)
アリーシャ: ウゾ・アドゥーバ(りょう)
アイヴァン:
    メアリー・マクドナルド=ルイス
             (沢城みゆき)

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

あらすじ

バズ・ライトイヤーは有能なスペース・レンジャーだったが、自分の能力を過信したために、1200人もの乗組員とともに危険な惑星に不時着してしまう。

バズは猫型の友だちロボット・ソックスとともに、全員を地球に帰還させようと奮闘する。そんな彼の行く手に待ち受けていたのは、孤独だった彼の人生を変えるかけがえのない絆と、思いもよらぬ敵だった…。

レビュー(まずはネタバレなし)

無限の彼方へ、さあ行くぞ

ピクサー・アニメーションの出発点にして最高傑作のひとつである『トイ・ストーリー』。シリーズとしては三作目で感動は頂点に達し、四作目では多くのファンに賛否両論を巻き起こしたが、そこに今回スピンオフ作品が生まれる。

シリーズを通じ主人公ウッディの相棒だった心優しき正義の英雄、バズ・ライトイヤー。この愛すべき凸凹コンビはおもちゃだったが、本作はそのおもちゃのバズのモデルとなった本物のスペース・レンジャー、バズ・ライトイヤーの物語である。

監督は『ファインディング・ドリー』で共同監督を務めたアンガス・マクレーン。大の日本アニメ好きで知られる。その影響は随所にみられる。敵ロボットの集団の造形はどうみたって『機動戦士ガンダム』ズゴックだし、ラスボスのデザインも『マジンガーZ』風だし。

日本アニメの影響を受けていることは、気にはならないし、むしろ喜ばしい点だ。だが、残念なことに、私はこの作品にはいまひとつ乗り切れなかった。

うちの子供たちが小さい頃から、一緒にシリーズ全作を観てきたし、家には大きなバズ・ライトイヤーの人形も飾られているくらいなのだが、ちょっと本作はポイントをはずしているように思う

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
ヘルメットでアゴがきついぞ

だってあのバズじゃないんだよ

本作は1995年に少年だったアンディが夢中になって観ていた、バズを主人公とするSFヒーローアドベンチャーという設定だ。いわば『トイ・ストーリー』の前日譚である。

おもちゃではないリアルなバズ・ライトイヤーは、登場した時に多少違和感はあるものの、やることなすことおもちゃのバズと似ているので、すぐに馴染める。腕のレコーダーに向かって恒星日誌をまめにつぶやくところも、規則重視で堅物なところも、自信過剰なところも、そのまんまだ。

だが、我々がこれまで接してきた(所ジョージの声の)バズは、このスペース・レンジャーをモデルとしたおもちゃなのだ。あのバズは、一作目だったかで、この本物のバズの存在を知り、「自分は彼を模したおもちゃだったのだ」と悟り傷つくシーンがあったように記憶する。

そういう意味では、前日譚といいながら、厳密には本作のバズは、あのバズではない(声優も変わった)。

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そうはいっても『バズ・ライトイヤー』の映画なのだから、冒頭に「1995年、アンディは誕生日にバズの人形をもらった」と語られるだけではなく、もう少し『トイ・ストーリー』との接点があることを期待した。だが、悲しいくらいに何もない。これはファンとしては、なんとも寂しい。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
恒星日誌、〇月〇日、天候は晴れ…

ウラシマ効果が映画的

バズは同僚の女性スペース・レンジャー、アリーシャ・ホーソーンらと向かった惑星に敵対的な生命体がいることを発見した後、探査船へ撤退する。だが、バズは船に損傷を与えてしまい、乗組員たちは地球に帰れず、惑星に足止めをくう。

バズは修理に必要なハイパースペース燃料のテストをするが、彼にとっての4分間の航行が、惑星での4年に相当することが分かる。

罪悪感と責任感から、何度も航行実験を繰り返すバズ、その数を重ねるだけ、惑星では何十年の歳月が流れ、同僚のアリーシャは、パートナーと結婚し、子供が生まれ、孫ができ、そして息を引き取る。このあたりまでの話の展開は悪くない。

堅物の自動操縦システムIVANの杓子定規な機械音声を相手に、無茶な速度で危険な航行をするバズは、まるで『トップガン・マーヴェリック』トム・クルーズのようであり、ゆえに序盤の過激な振る舞いのツケを払わされる。ここまでは面白い。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
無限の彼方へ、さあ行くぞ

時間の経過で夫婦が老いていく様子を情緒豊かに見せたのは、同じピクサーの『カールじいさんの空飛ぶ家』だったが、本作ではウラシマ効果でバズだけが年を取らずに周囲が老けていく

信頼できる同僚女性レンジャーのアリーシャとの年齢差が広がっていく様子は、『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督)の父娘の姿のようで切ない。

ディズニー/ピクサー映画『バズ・ライトイヤー』特報

引っ掛かりがいくつか

だが、この時点で引っ掛かった点のひとつは、アリーシャのパートナーが女性だったことだ。

多様性の観点から、彼女がLGBTであったって良いのだが、本作で唯一といってよい恋人同士の役を、わざわざ女性同士にして、一部の国で上映禁止をくらうほどの必然性があっただろうか。

先頃、同じディズニー傘下のマーベル映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でも、同様に重要キャラの少女が女性同士の親に育てられているシーンで上映禁止騒ぎがあったばかりだ。ディズニーは今、あえてこの領域を攻めているのだろうか。

もうひとつの引っ掛かりは、バズに与えられるロボット猫ソックスのキャラデザイン

ネコ型ロボットが猫にみえないのはドラえもんの頃からのお約束かもしれないが、猫好きとして言わせてもらうと、あのまん丸の目はどうも猫にはみえない。ピクサーなら、もっと猫らしく、人間に媚びないソックスのキャラが作れたのではないか。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
ギズモじゃないよ、ソックスだよ

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

それってスターウォーズじゃん

本作の後半では、ソックスの助けを借りてバズがついにハイパースペース燃料の精製に成功し、そしてアリーシャの孫にあたるイジー・ホーソーンやジュニア・パトロール隊の仲間たちと出会い、みんなで正体不明の敵ザーグとロボット兵たちに立ち向かっていく。

はじめは仲間を信じ切れず何でも自分でやろうとしてきた主人公が、途中でくじけるが、最後はみんなで力を合わせて、目的を達成する。

それって、これまでの『トイ・ストーリー』ではウディが常々演じてきた役だ。

バズはこれまで、そんなウッディを説得する役回りだったが、本作では彼が従来のウッディをやり、イジーが従来のバズ、ソックスや他のメンバーがオモチャ箱の仲間たちをやっている。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そして、ここからはネタバレになる。敵のラスボスであるザーグの正体は、バズの父親なのである(余談だが、この辺から私にはバズは阿部寛、ザーグはジョージ・クルーニーに見えてきた)。

バズが持ってきたハイパースペース燃料で、時間を戻そうと企んでいる。このザーグの正体には驚いた。だって、まんまダース・ベイダーじゃん。

そう思っていたら、「いや、ザーグの正体はもうひとりのバズですよ」と親切な方からご指摘をいただいた。(感謝です

実はその前にすでに『スターウォーズ』まるパクリ事件が起きている。ソックスの目から、このネコにバズ宛てのメッセージを託した生前のアリーシャの姿が投影されるのだ。

その構図は、R2D2がレイア姫の姿を映し出す『スターウォーズ』1作目の完コピといってよい(みんなディズニー一家だから、こういう使いまわしには寛容なのだろう

そのせいもあって、私は、ザーグをダース・ベイダーと早とちりしてしまったようだ

ターゲット層はどこか

ウラシマ効果に加えて、それを悪用したバズの父親の悪行。想像した以上にストーリーの理解には科学的な素養が求められる。

一体、この作品はどの年齢層をターゲットにしているのだろう。ある程度の大人向けなのであれば、ソックスの造形も、「無限の彼方へ、さあ行くぞ」の決め台詞繰り返しも、ちょっと子供じみている。

近年、鉄壁の完成度を誇ったピクサーの脚本力が落ちているように思えてならない。個人的には、2018年の『リメンバー・ミー』を最後に、絶対的な感動作に出会えていない。

繰り返しになるが、私はこの作品は『トイ・ストーリー』との結節点があって初めて成り立つものだと思っている。だからこそのスピンオフ企画なのだ。

せめて、ラストに、エンドロールのあとでもよいが、わずかなつながりでもあれば、印象も変わったのに残念である。ちなみにエンドロール後にあるのは、何にも関係がないおまけ映像。