『アメイジング・スパイダーマン』
『アメイジング・スパイダーマン2』
『アメイジング・スパイダーマン2』
The Amazing Spider-Man2
公開:2014 年 時間:142分 製作国:アメリカ
スタッフ
監督: マーク・ウェブ
原案: ジェームズ・ヴァンダービルト
キャスト
ピーター・パーカー:
アンドリュー・ガーフィールド
グウェン・ステイシー: エマ・ストーン
メイ・パーカー: サリー・フィールド
リチャード・パーカー:
キャンベル・スコット
メアリー・パーカー:
エンベス・デイヴィッツ
マックス・ディロン/ エレクトロ:
ジェイミー・フォックス
ハリー・オズボーン/ グリーンゴブリン:
デイン・デハーン
ドナルド・メンケン: コルム・フィオール
フェリシア: フェリシティ・ジョーンズ
アレクセイ・シツェビッチ/ ライノ:
ポール・ジアマッティ
ノーマン・オズボーン: クリス・クーパー
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
スパイダーマンとしてニューヨークの平和を守り、ひとりの男性として恋人グウェン(エマ・ストーン)との愛を育む、忙しくも充実した日々を送っていたピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)。
しかし、彼の旧友で巨大企業オズコープ社の御曹司であるハリー・オズボーン(デイン・デハーン)が街に戻ってきたことから、ピーターの生活は少しずつ狂い始める。
一方、オズコープ社に勤める冴えない電気技師マックス(ジェイミー・フォックス)は、感電事故に巻き込まれたことで、突如電撃を発する超人・エレクトロに変貌してしまう。
平凡な青年であることと、スパイダーマンとしての大いなる責任の間で葛藤してきたピーターに、更なる試練が襲い掛かる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
亡きグウェンの父との約束に従う
前作ではほとんど語られなかった、ピーターの父リチャード・パーカー(キャンベル・スコット)と母メアリー(エンベス・デイヴィッツ)が、オズボーン社の刺客に追われてプライベートジェットで墜落死する詳細が冒頭で描かれる。まるでスパイ映画のオープニングのようだ。
◇
そんな経緯などつゆ知らず、ピーターは今日もマンハッタンの平和のために奔走し、高校の卒業式もあわや欠席しそうになる。学校生活もよく語られぬまま、もう卒業なのだ。
喜んでくれるメイ叔母さん。両親に代わってピーターを育てた彼女との間柄の描き方は、前作同様に心温まる。サリー・フィールドの好演が光る。
グウェンとの親密ぶりは前作以上となっているが、ピーターの脳裏によぎるのは、前作でリザードに殺された彼女の父との約束。彼女を危険に巻き込まないために、別れるべきだ。そう決意したピーターに、「別れてあげる」とグウェンは涙で応じる。
青い稲妻・エレクトロ
オズコープ社の電気技師マックス(ジェイミー・フォックス)は誰からも相手にされない孤独な青年なのだが、町で助けてくれたことでスパイダーマンのファンになる。そのマックスが、不慮の事故で高圧電流と電気ウナギの攻撃を受けて、電気人間エレクトロに変貌してしまう。
『スパイダーマン:ノーウェイホーム』でも大活躍だったエレクトロだが、彼のフード姿に青白く光る身体はビジュアル的にも相当クールで、ヴィランとしてのインパクトは強い。
だが、元々の気弱なオタク青年キャラはエレクトロになっても変わっておらず、世間が恐れて攻撃するようになり変わっていく様子が悲しみを誘う。ウルトラマンで怪獣となった宇宙飛行士ジャミラのようだ。
エレクトロは、戦ったあとに「自分をヒーローとしての売名行為に使った」スパイダーマンを逆恨みするようになる。
リザードだけで一本の映画になった前作に対し、エレクトロだけでは不足感があったか、本作では、おなじみオズボーン社の御曹司・ハリー(デイン・デハーン)を本命ヴィランとして登場させる。
それにしても、研究員だったパーカーの両親にスパイダーマン、リザードになったその同僚、電気技師だったエレクトロ、インターンだったグウェン、そして最後にはグリーンゴブリンと化してしまうハリーと、オズボーン社はこれまで本シリーズの殆どの登場人物と関わっているには驚きだ。モンスターの総合商社のようだ。
緑の精霊ハリー・オズボーン
ハリーはピーターの数少ない古くからの友人だという設定がいい。それに、とてもゴブリンになるとは思えない、デイン・デハーンの端整な顔立ち。
これまでトビー・マグワイアで見慣れてきたピーターのイメージとアンドリュー・ガーフィールドに少々違和感を抱いていたが、ハリー・オズボーンと並ぶと、ちょっと悪ガキっぽさを残すこのピーターはバランスがいい。
◇
父から遺伝した病気を治すためには、スパイダーマンの血が必要だと考えたハリーが、ヒーローの写真を撮っていたピーターに仲立ちを依頼する。
旧友の命は救いたいが、自分の血を与えることで、どのような反応を起こすか不安を拭えないピーターは、葛藤のすえスパイダーマンとしてハリーと対峙し、要望を拒絶する。
さて、冒頭の飛行機墜落前に、両親が命がけで誰かに残そうとしたデータは、失踪理由を語ったビデオレターだった。ピーターは終盤にそのデータにようやく辿り着く。
マンハッタンの地下鉄廃駅に、父が残したトークンを入れると、秘密の車両が現れる。この仕掛けは凄すぎて、あの研究者二人でどうやって作ったのかと思う。『キングスマン』じゃないんだから。
◇
オクスフォード大への留学が決まって、ピーターとも会えずに英国に旅立つことにするグウェン。彼女のためにピーターがマンハッタンの橋に糸で書いた I Love Youのメッセージ。さよならニューヨーク。ここでもう、彼女には死亡フラッグが立っていたのか。
悲嘆にくれるピーター・パーカー
本作で注目すべきは、グリーン・ゴブリンとの戦いの中で、時計台でのバトルに巻き込まれたグウェンが高い塔の上から墜落死してしまうことだ。
落ちていくグウェンに向けたクモの糸、落下寸前で彼女の身体をとらえたように見えたが、間一髪間に合わなかったのか、帰らぬ人になってしまう。
恋人を救えずに死なせてしまったヒーローの無力感は、『ダークナイト』のバットマンにも通じる。だが、発刊当時に原作コミックでグウェンを死なせてしまった際には、ヒーローコミックでは想像できない出来事にファンは騒然としたという。
ピーターが彼女を失った悲しみがどれだけ大きかったかを、我々はいま『ノーウェイホーム』を観ることで感じ取ることができる。
絶望の淵に立ち、気力をなくしたピーターは、グウェンが残した卒業式のスピーチのビデオを観て、再び勇気づけられる。最後に登場するのは、冒頭でピーターに逮捕されたアレクセイ(ポール・ジアマッティ)。
バトルスーツで装甲し、サイノとなって暴れるのだが、これは完全に賑やかしのおまけキャラ扱い。ただ、元気を取り戻したスパイディーでシリーズを終わらせるために引っ張り出される。
ハリーの父・ノーマン・オズボーンをクリス・クーパーがノークレジットで演じているのだが、存在感がありすぎて、もっと活躍してほしかった。両親とピーターとの繋がりも、いまひとつ消化不良な面はある。
三部作の予定だった本シリーズが、結局MCUとのコラボレーションで主演をトム・ホランドにバトンタッチすることとなり、本作で完結してしまった中途半端感は残る。
だが、シリアス路線のスパイダーマンを描いたマーク・ウェブ監督の仕事は、ファンの期待を裏切らないものだったと思う。マンハッタン狭しと飛び回るスパイダーマンを、3Dで観たい作品だ。