『ヒズ・ガール・フライデー』 今更レビュー:掛け合い漫才のように息つく暇も与えないコメディ

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『ヒズ・ガール・フライデー』 
 His Girl Friday

これがスクリューボール・コメディというものか。あまりの勢いにタジタジだ。記事の為なら何でも有り! ケーリー・グラントの髪型と割れたアゴ、それにくわえ煙草の仕事姿が時代を感じさせる。

公開:1940 年  時間:92分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:    ハワード・ホークス

キャスト
ウォルター・バーンズ: 
       ケーリー・グラント
ヒルディ・ジョンソン: 
      ロザリンド・ラッセル
ブルース・ボードウィン:
        ラルフ・ベラミー

勝手に評点:3.0 
(一見の価値はあり)

(C) Columbia Pictures Corp

あらすじ

敏腕女性記者ヒルディ(ロザリンド・ラッセル)は元上司であり元夫でもあるウォルター(ケーリー・グラント)に、堅実な保険業者ブルース(ラルフ・ベラミー)と結婚すると報告する。

ヒルディに未練を残すウォルターは、最後の仕事にと死刑が確定している警官殺しの冤罪事件の取材を無理矢理引き受けさせ、あの手この手で結婚を妨害しようとする。

レビュー(ネタバレなし)

これがホークスのスクリューボール

久しぶりに40年代の作品を観る。ハワード・ホークスの作品は、タイトルこそよく聞くが、残念ながら殆ど観たことがない。コメディなら『紳士は金髪がお好き』、あとは西部劇を少々といった程度。

なので、本作のコメディとしての押しの強さというか、いわゆる<スクリューボール・コメディ>といわれる速いテンポでのまくし立て合いには、圧倒された。

再婚する相手を連れて新聞社の編集部オフィスに久々に現れた女性記者のヒルディと、仕事はできるが厚かましくいけ好かない元夫で元上司のウォルターが、冒頭からほぼずっと、マシンガントークのぶつけ合いだ。

舞台がオフィスからレストランに代わり、刑務所脇の記者控室に移っても、とにかく登場人物が早口で喋り続けるスタイルは変わらない。このスタイルが当時の主流なのか。

また、私の中ではケーリー・グラントはヒッチコック作品の俳優であり、生真面目な紳士然としているイメージが強く、あまりコメディで笑かす人とは思っていなかった。今回調べてみると、ケーリー・グラントは元々コメディで売れたキャリアのひとではないか。

(C) Columbia Pictures Corp


むしろ本作ではクソまじめな堅物は再婚相手のブルースだ。結婚退社するというヒルディを引き留め記事を書かせようと、あの手この手で騙そうとするウォルターを、「いい人そうじゃないか」と信じ続ける善人ぶり。

そして、はじめは記事など書かないつもりだったヒルディは、死刑執行が翌朝にせまる案件を記事にする羽目になり、だんだんと敏腕記者魂が刺激されていくのだ。

ウォルターは人格的に、ブルースは面白味で、それぞれダメなキャラで描かれているのに対し、ヒルディは仕事もできて男勝りに物を言ういい女、だが最後には男の言うなりに戻るみたいなキャラクター。

これをどうやらホークス的女性と呼ぶらしいが、あまり耳にしたことはない。

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新聞記者ものは傑作多いがコメディは?

記者の人間性という意味では、ウォルターに限らず、誰もロクな人物に書かれていない。みなスクープに目の色を変える、筆は立つが人間的にはどうも、という連中揃い。

ジャック・レモン主演で、こういう新聞記者もののコメディを大昔に観たなと思っていたら、同じ原作を映画化した『フロントページ』のことだった。同作はヒルディが男なので、本作とは随分と雰囲気が違う気もする。

本作のタイトルの意味が分からず、アメリカの新聞には金曜版のようなものがあるのかと思ったが、どうやらロビンソン・クルーソーに出てくる下僕のフライデーのことらしい。

このタイトルといい、職場での喫煙三昧といい、黒人を射殺した事件といい、なかなか現代では取り扱いが難しいものばかりだが、80年も前の時代ともなると、すべて笑いの名のもとに許されているようだ。

よく作り込まれた設定と脚本によって笑いをとるスタイルは、日本でいえば三谷幸喜のそれに近いように思った。かつて三谷幸喜と和田誠の対談に本作の名前もあがっていた気もするが、三谷作品が当時のコメディに影響を受けていることは強く感じられる。