『赤い風船』(1956)
『白い馬』(1953)
『白い馬』
Crin-Blanc
公開:1953 年 時間:40分
製作国:フランス
監督: アルベール・ラモリス 出演: アラン・エメリー
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
南フランスはカマルグの荒地に、野生馬が群れをなしていた。牧童たちは群れのリーダーである白い馬を捕獲しようと躍起になるが、なかなか上手くいかない。
そんな中、同じく白い馬に魅せられた漁師の少年フォルコ(アラン・エメリー)は、牧童たちから馬を守ろうと奮闘する。
やがて馬もフォルコに心を許し、ともに牧童たちの追跡から逃れようとする。
今更レビュー(ネタバレあり)
1953年のカンヌ国際映画祭で短編グランプリを受賞のモノクロ作品。『赤い風船』が少年と風船との友情なら、こちらは白馬と少年の友情だ。
牧童たちも手を焼く荒馬だが、優しくしてくれる少年とは心が通じ合う。風船同様、馬にもセリフなどないが、見つめ合う表情だけで心情が理解できる。
50年代に動物映画のノウハウがどこまであったのかしらないが、馬の動きはとても自然だし、群れのリーダーの座をめぐって馬同士で争ったり、牧童から逃げる際に後ろ脚で蹴り上げるサマは、とてもリアルで躍動感がある。
◇
そして少年は漁師なのに、乗馬のうまさに目をみはる。牧童が三人がかりでも追いつかないほどだ。
それにしても、馬とは関係ないが、この少年は顔立ちが整っているなあ。おまけに、ピチピチのシャツに着こなしがカッコよい。
さすがおフランスのファッションだ。現代でも全然通用するというか、むしろ今よりハイセンスだ。
◇
けなげに馬の世話を手伝う幼い弟は、パスカル・ラモリスとあるので、『赤い風船』の少年なのだろう。気づかなかったけど。
南仏のカマルグ地方は湿地帯で、白い馬の放牧で有名なところだとか。勉強になった。映画にあったような川や海の浅瀬を、牧童が白馬を走らせるのだろうか。
「馬はお前にやるから、戻ってこい!」
そう叫ぶ牧童たちも、悪い人ではないのだが、少年と馬は、ひたすら逃げ走り、ついには海へと到達してしまう。
モノクロ映画でも馬の白さはよく分かったが、ケガをしたときの傷跡の血や、草原の緑、いぶりだす炎、そしてしぶきのあがる水の色などを想像すると、カラーでも見たかった気がする。
『赤い風船』のあの美しい色合いを思うと、なおさらに。