『知らない、ふたり』 考察とネタバレ:善意のイスから広がる一目惚れの連鎖。この町には善人のイケメンが多すぎる

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『知らない、ふたり』

今泉力哉監督、今回は一目惚れと告白の美学か。<知らない>の後の句読点はいろいろな意味に取れる。三人の韓国人の若者は皆アイドルグループなのか。どうりでカッコいい筈だ。どれもいいヤツすぎるけど。

公開:2016年  時間:1時間46分  
製作国:日本

スタッフ
監督:  今泉力哉

キャスト
レオン: レン(NU'EST)
小風秋子:青柳文子
サンス: ミンヒョン(NU'EST)
ソナ:  韓英恵
ジウ:  JR(NU'EST)
荒川:  芹澤興人
加奈子: 木南晴夏

勝手に評点:4.0 
(オススメ!)

(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan

あらすじ

靴職人見習いとして、人とかかわらず生活している韓国人青年レオン(レンが、ある日公園で二日酔いの女性ソナ(韓英恵に遭遇したことをきっかけに、広がっていく七人の男女の思いの絡み合い。

レビュー(まずはネタバレなし)

両想いに与える試練の道

これ以上書くと、即ネタバレになってしまいそうで伝えにくいのだが、とても手の込んだ脚本で、観終わった後の幸福感の高い作品。本作は当時に見逃していた今泉監督作品だったが、今回出会えてよかった。

韓国にはイケメンしかいないのかというくらい、三人の韓国人の若者はカッコいいのだが、みんなNU’ESTっていうアイドルグループのメンバーだったのだ。まったく知らない世界。

『パンとバスと2度目のハツコイ』でもそうだが、こういうアイドルを起用する企画でも、まったくアイドル映画には仕立てようとせずに、ひとつの映画として完成度を高め、同時にファンも満足な内容にしているのが、今泉力哉監督のすごいところ。

そして『パンとバス』同様、あるいはそれ以上に監督が両想いに与える試練の道は険しく、本作では片想いの数も倍増なのである。

冒頭シーンの公園にある「善意のイス」なるベンチから始まり、数々の小ネタの活用や、たまに時系列を過去に戻す編集も、とても自然な形で物語を進行させる。

ウェルメイドな脚本は、内田けんじ監督の『運命じゃない人』を彷彿とさせるが(ちなみに、これは私の中では最上級の称賛)、本作はそれをミステリーやコメディでなく恋愛映画でやっているところに監督の才能を感じた。

レビュー(ここからネタバレ)

恋愛相関図

自分の頭の整理も兼ねて、恋愛相関図で単純図式化してみる

サンス(ミンヒョン)⇒ 秋子(青柳文子)⇒ レオン(レン) ⇒ ソナ(韓英恵)⇒ ジウ(JR)⇒ 加奈子(木南晴夏)⇒ 荒川(芹澤興人)

実際には、この一方向の恋心のうち、いくつかは両想いになりそうなものもあり、いくつかは瞬時に撃沈している。

また、ジウはソナのこともまだ好きだったり、ソナは途中から公園で一目惚れした男性を探し始めたりと、状況は変化する。

『知らないふたり』のタイトルの句読点の意味を想像するに、ただ単に一目惚れした相手が誰かを <知らない>ふたりなだけではない。

そばにいるけど想われていることを知らない、付き合っている相手を自分の言動が傷つけていることを知らない、本当は相思相愛なのにそれを知らない、など様々な意味を持たせているのだ。

(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan

レオンの抱える十字架

善意のイスのせいではないだろうが、登場人物はみんな基本的に善人だ。日本語学校で覚えた言葉で話すから、丁寧な日本語が多くなり、そう思えるのかもしれない。

一目惚れしたソナを尾行してアパートに帰宅するのを見るのが日課のレオンも、更にそのレオンを尾行する秋子も、ストーカーといえばその通りなので、善人で片付けてはいけないのだが。

レオンは2年前に信号無視をしたとき、つられて信号をわたって車にはねられた男性に罪悪感を持ち、以後なるべく人と関わらず、幸せになってはいけないと思うようになる。

ここはちょっと重たい部分だが、事故に遭った車椅子の荒川(芹澤興人)は恋人の加奈子先生(木南晴夏)と、事故を苦にせず痴話げんかしていたので、気が楽になった。

芹澤興人の話し方があまりに自然体なので、加奈子とのやりとりが映画の中の会話に聞こえず、感心する。

(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan

時系列順に行動を整理

さて、時系列は日付が出るので親切な作りになっているが、ちょっと整理してみたい。

  1. ジウが加奈子先生に告白する。
  2. それを不満に思う恋人のソナがサンス、ジウと痛飲する。
  3. 二日酔いのソナが公園でレオンに出会う。その時折れたヒールを友人のサンスが修理に持ち込み、店頭で秋子に一目惚れする。
  4. 修理の靴の伝票からサンスの住所を訪ねたレオンは、サンスの働くコンビニで張り込み、一目惚れしたソナを探しあてる。
  5. 秋子はレオンを尾行し、彼が毎晩ソナの部屋の陰で待ち帰宅を見届けていることを知る。
  6. サンスが秋子にラブレターを渡す。ソナは、気になるレオンと会った公園がどこだったか探し始める。
  7. 秋子、サンスを振る。サンスがソナの友人だと知る。
  8. ソナの公園探しを、秋子とサンスが手伝い始める。
  9. 荒川と加奈子が、靴のオーダーにレオンの店を訪れる。
(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan


省略部分もあるが、概ねこんな感じではないかと。3番目に書いた、ソナとレオンが公園で出会う日は、一目惚れ大量発生日だ。

7人の男女のうち、一番はじけていたのが秋子だ。サンスから突如ラブレターをもらうまでと、彼を振ったあとに、ソナとキスしていたことを知ってからのキャラの豹変ぶりがとても面白い。

「そんなの相手が困るだけじゃん、好きって伝えればいいってもんじゃないからね」

「どうせみんな幸せになれる訳じゃないんだから、好きな人が幸せになれるように頑張るべきじゃない?

とサンスに言いたい放題。

車椅子生活になった荒川に罪悪感を持ち続けるレオンも、ソナに言われたように「救われる」瞬間が訪れたことで、心が解放されたようだ。

善意のイスに座る人は、みんな善意を受けるのだ。