『インクレディブルハルク』MCU一気通貫レビュー02

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『インクレディブル・ハルク』 
The Incredible Hulk

エドワード・ノートン一度きりのブルース役が見られる貴重な作品。終盤の対決が大相撲マンハッタン場所のようになるのが残念だけど。

公開:2008 年  時間:135分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:         ルイ・レテリエ

キャスト 
ブルース・バナー/ ハルク:

         エドワード・ノートン
ベティ・ロス:     リヴ・タイラー
サディアス・ロス: ウィリアム・ハート
ブロンスキー/ アボミネーション

             ティム・ロス
サミュエル・スターンズ:

      ティム・ブレイク・ネルソン

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)2008 MVLFFLLC. TM & (C)2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.

あらすじ

実験中に大量の放射能を浴びた科学者ブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、感情が高まると緑色の超人ハルクに変身するという特異体質になってしまう。

元の体に戻るべく治療方法を探すブルースだったが、その驚異的なパワーに目をつけたアメリカ陸軍ロス将軍(ウィリアム・ハート)が彼の元に追手ブロンスキー(ティム・ロス)を送り込む。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

一度きりのエドワード・ノートン

MCUとして放った第二弾は、前作からわずか二か月足らずで公開されている。しかも、知名度の低いアイアンマンに対し、こちらはテレビシリーズでも人気を博した超人ハルクだ。

本命登場のように思えたが、振り返ればMCUの多くの作品の中では、相当異質な存在になっている。

まず、ブルース・バナーを演じたエドワード・ノートンが、あまりに脚本・編集はじめ映画自体に口を出しすぎてしまったせいか、本作を最後にマーベルと仲違いしてしまった。

結果、以降の作品ではマーク・ラファロがブルースを演じることとなる。アベンジャーズの主要メンバーの中で途中交代した例は他にない。

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Beauty and Green Beast

本作の風合いも他のMCU作品とは異なる。『トランスポーター』で知られるルイ・レテリエ監督の意向か、エドワード・ノートンの仕業かは不明だが、ブルースと恋人であるベティ・ロス(リヴ・タイラー)ラブ・ロマンス濃度が結構高い。

メロドラマ風のBGMの効果もあるが、怪物になってしまう恋人を巡っての<美女と野獣>的な関係をシリアスに描いた本作は、MCU作品きっての恋愛ものとなっている(気がする)。

そうかと思えば、心拍数があがって(変身して)しまうので、「セックスは我慢しないとね」といったきわどい会話もあったりする。

エドワード・ノートン本作のようなブルースを演じるのなら、合っている。知的で、少しシニカルで、ブラジルの民家の屋根の上を逃げまわる運動能力もある。

だが、以降のMCUでのブルースは、特に変身後にコミックリリーフ的な役割が多くなる。マーク・ラファロは意外と似合うが、ノートンがあの場で、コミカルに緑の巨人に変身し戦う姿は想像しにくい、というより見たくない。

ブロンスキーの軍人魂をみよ

さて、本作では冒頭にいきなり、ブルースがハルクになってしまうまでの、実験失敗から大暴れまでの一連の流れがダイジェストで説明される。

まるで前回までのストーリー紹介のような乱暴さは、『アイアンマン』のそれとは大違いだ。まあアン・リー監督版の映画もあったし、内容理解に混乱はない。むしろテンポよく進むのは嬉しい。

はじめにハルクの餌食となった、ブラジルの工場労働者のチンピラたちは、生身の人間でさすがに気の毒だった

その後に対戦するのは、生粋の軍人である精鋭隊員のブロンスキー(ティム・ロス)。志願してスーパーソルジャーの血清を注入し、しまいにはブルースの血を入れアボミネーションに変貌してしまう。

強い相手に闘志をもやす生涯現役の軍人魂は良かったが、見た目可愛げのあるハルクに比べ、アボミネーションの風貌はちょっとかわいそうな気も。

大相撲マンハッタン場所かと

マンハッタンを土俵にした両横綱のがっぷりよつの対決は見応えあるにはあったが、そんなに面白味が持続しない。

これは、『アイアンマン』でも同様だが、同じような戦い方をする相手との対戦は、傍目には盛り上がらないからだ。

二作品で対戦相手をスワップして、例えばハルクVSアイアンモンガーだったら、もっと面白かったに違いない。

さて、多少同情の余地もあったブロンスキーにくらべ、完全なるヒールなのは、ベティの父親でもあるロス将軍(ウィリアム・ハート)だろう。そもそも、この男が全ての事件を巻き起こしたようなものだ。

だが、残念ながら、本作では彼は何の制裁も受けずに逃げ延びてしまう。ブルースは配役が変わったため、本作出演者で以降のMCUに出ているのは、ロス将軍だけかもしれない。

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遊び心はあちこちにあり

本作には遊び心も散見される。テレビシリーズで『超人ハルク』を生身で演じたルー・フェリグノは、本作ではハルクの声と、大学でブルースからピザをもらう警備員。

合気道のコーチは何とヒクソン・グレイシーだ。毎度おなじみのスタン・リーはハルクの血液入りのガラナジュースを飲んで倒れてしまうのだが、あんな血が混じってしまう瓶詰工場は恐ろしい。

ブルースが大学のPCに不正アクセスした際にセキュリティソフトのNorton360が走るのも、多分ネタなのだろう。

Mr.ブルーことスターンズ教授(ティム・ブレイク・ネルソン)、ベティの新しい恋人、レナード・サムソン(タイ・バーレル)は、原作だともう少し広がりがあるのかもしれないが、そこまでは把握できず。

結局ハルク単体での作品は本作のみと、続編の多いMCUにおいてはレアケースとなったが、変身後はただ暴れるだけで会話もできない巨人なので、団体戦でないと見せ場づくりが苦しいのかもしれない。