『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』
A Big Bold Beautiful Journey
コゴナダ監督がコリン・ファレルとマーゴット・ロビーの共演で贈る、不思議なレンタカーの旅。
公開:2025年 時間:109分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: コゴナダ
キャスト
デヴィット: コリン・ファレル
サラ: マーゴット・ロビー
レンタカー整備士:ケヴィン・クライン
レンタカー店員:
フィービー・ウォーラー=ブリッジ
サラの母親: リリー・レーブ
デヴィットの父親:
ハミッシュ・リンクレイター
デヴィッドの母親:
ジェニファー・グラント
シェリル: クロエ・イースト
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
友人の結婚式で知り合ったデヴィッド(コリン・ファレル)とサラ(マーゴット・ロビー)は、レンタカーのカーナビに導かれ奇妙なドアにたどり着く。そのドアの先は、それぞれの「人生で一番やり直したい日」につながっていた。
デヴィッドが淡い初恋を経験した高校時代や、サラの母親が最期を迎えた場所など、人生のターニングポイントとなった出来事をやり直すことで、ふたりは自分自身や大切な人たちと向き合っていく。
レビュー(ネタバレあり)
ドアがトリッキーなのよ
『アフター・ヤン』に続き、コリン・ファレルを主役に起用したコゴナタ監督のロマンティック・ファンタジー。相手役はマーゴット・ロビー。『バービー』と『嵐が丘』の間に挟まれた出演作としては、意外なほど地味な作品ではある。
序盤の展開は結構気に入っている。主人公のデヴィッド(コリン・ファレル)は友人の結婚式に向かおうとするがクルマが駐禁でホイールロックされていて、仕方なく最寄りのレンタカー店に。
インターホン越しの怪しいやり取りで、「覚えておいて、ドアがトリッキーなのよ」と忠告されることの意味がやがて分かる。
中に入ると巨大な体育館なみの倉庫スペースの奥に整備士(ケヴィン・クライン)と受付の女性(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)がポツンと座り、背後に二台の同型のクルマが置かれている。
借りられるのは94年型サターンSLのみ、不要だというカーナビも執拗に勧められ、デヴィッドは渋々従う。ここまでの怪しい雰囲気と会話が何ともいえずいい。中途半端に懐かしい、消え失せたブランドのサターンというチョイスも世代的にはツボ。
この不思議な感覚は『マルコヴィッチの穴』を彷彿とさせると思っていたが、コゴナタ監督は本作に影響を与えた作品に『エターナル・サンシャイン』を挙げている。同じチャーリー・カウフマンの脚本だから、当たらずも遠からずか。
ちなみに、影響を受けた作品のもうひとつが『ハウルの動く城』だそうで、同じ久石譲を音楽監督に起用している。
どこでもドアをめぐる旅
友人の結婚式場には、同型のサターンで乗り込んできた女性サラ(マーゴット・ロビー)がおり、二人はパーティで出会い親しくなる。
だが、互いに自分の生き方に自信の持てない二人。デヴィッドはサラの誘いに腰が引け、サラもまた別の男と一夜をともにして、二人はそれぞれ帰路に向かう。

『アフター・ヤン』にも出ていたジョディ・ターナー=スミスの声によるカーナビとの会話を通じて、デヴィッドは<心に残るビューティフル・ジャーニー>に出かけることになる。
まずはチーズバーガーを食べにキキの店に行き、そこでバーガーを頬張るサラと偶然再会する。「ワッパー」の商品名や店の看板からバーガーキングの店だと分かったが、なぜか字幕にバーキンの名称は登場せず。プロダクトプレイスメントだった模様。
◇
店を出るとサラのクルマは故障。二人で一緒に旅に出ることになる。目的地に行くたびに<どこでもドア>みたいな扉があり、その向こうには二人がそれぞれ経験してきた苦い思い出の場所。

カナダの灯台であったり、母とよく行った美術館であったり。何も疑問に思わず、次々と不思議体験をしていく二人にツッコミを入れたくなるが、まあ、ファンタジーだからいいのか。
回顧シーンの真骨頂は、デヴィッドが高校時代の学園祭ミュージカルで主役を演じる場面だろう。
「ジェイソン・ボーンだって、記憶を失っても自然に体が動いて戦えてただろ?」
と、いきなりステージに上がってみんなと踊り出す。好きな子にフラれる記憶の場面なのだが、大人になった今は客席にサラがいて、一緒に歌い出す。このノリは楽しい。
もう傷つきたくない二人
デヴィッドにいつも「お前は特別なんだ」と言い続けた両親。これは単に、彼が過保護に育ったということを示すエピソードなのかと思ったら、そこには意外な理由があったことを、自分が生まれた時の父親との出会いでデヴィッドは知る。
一方のサラも、母親が亡くなった時に不倫相手の教授と性行為の真っ最中だったことで心の傷を負っていたが、扉の向こうで生前の母親と心を開いて会話したことで、救われる。

レンタカーのナビはしきりにデヴィッドとサラをくっつけようとしているように見える。サターンが鹿と衝突し横転炎上した際に、整備士が現れてすぐに修理してしまうのには笑った。
そして眼下に広がる地球を眺めながら会話をする二人。一体ここはどこなのだ。
◇
そろそろ二人が交際しそうな雰囲気になり、デヴィッドは十分その気なのだけれど、サラは気乗りしない。二人はドアの向こうで、それぞれが同じ場所で昔の恋人との別れ話をしてきたばかり。
これまでと同じような別れをデヴィッドとは経験したくないという理由から、サラは深い仲にはなりたがらない。こうして二人はバーガーの店で別れ、それぞれのクルマで自分の家に戻っていく。
レンタカー店員のフィービー・ウォーラー=ブリッジは、はじめと終わりにしか登場しないのに、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のヒロイン役より存在感があった。

最後は「別れのリスクを取るわ」とデヴィッドの自宅にやってくるサラ。
作品としては後半の展開がややもたついた印象はあるし、マーゴット・ロビーの無駄遣いという気もした。
だが、全編を通じ耽美的な映像はコゴナダらしさを感じさせるし、タイムスリップして若き日の父親と出会い打ち解け合う作品には個人的に弱いので、これまでの監督作品の中では一番のお気に入りかも。
