『コットンクラブ』今更レビュー|モヤモヤは残るが、ステージパフォーマンスは熱い!

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『コットンクラブ』
 The Cotton Club

フランシス・フォード・コッポラ監督が贈るYA三部作の最終作は伝説のジャスクラブが舞台。

公開:1984年 時間:128分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:  フランシス・フォード・コッポラ


キャスト
ディキシー・ドワイヤー:リチャード・ギア
ベラ・シセロ:     ダイアン・レイン
サンドマン・ウィリアムズ:

          グレゴリー・ハインズ
クレイ・ウィリアムズ:モーリス・ハインズ
ライラ・オリヴァー: ロネット・マッキー
ダッチ・シュルツ:  ジェームズ・レマー
オウニー・マドゥン:  ボブ・ホスキンス
フレンチー・デマンジ:フレッド・グウィン
ヴィンス・ドワイヤー: ニコラス・ケイジ
バンピー: ローレンス・フィッシュバーン

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

あらすじ

1920年代、禁酒法時代のNY。黒人街ハーレムにある「コットンクラブ」は、黒人パフォーマーによる本格的なジャズとダンスを演し物とする店。客は金持ちの白人だけという高級店で、マフィアの息もかかっている。

ここを舞台に、運に恵まれ成り上がっていく若きジャズマンと、彼に恋してしまうマフィアのボスの情婦、タップダンスで頂点を極めようと努力する黒人兄弟、そしてマフィアたち、無数の人々のドラマが今宵も紡がれていく。

今更レビュー(ネタバレあり)

フランシス・フォード・コッポラ監督のYA三部作ヤングアダルトって死語だな)のラストを飾る作品。

そりゃ確かに、どれもダイアン・レインが出演するし、若い世代の青春映画と言えなくもないが、『アウトサイダー』『ランブルフィッシュ』とこの映画を一括りにするのは乱暴すぎる。

前2作に比べると、公開当時、この作品の人気も評判もさほど高くなかったように記憶する。

だが改めて観てみると、YAの人気俳優のネームに頼った前2作に比べ、『ゴッドファーザー』の匂いが漂うギャングの抗争と、ジャズやタップダンスといった圧巻のパフォーマンスの合わせ技で魅せる本作は、全く見劣りしない。

いやそれどころか、もはやとっくにYAではなくなった自分には、この作品が三部作中で一番楽しめた。

禁酒法下の1920年代に栄えた黒人街ハーレムにあるナイトスポット「コットンクラブ」。ステージで歌い踊るのは黒人のエンターテイナーたち、客席に座るのは白人たちばかり。そういう時代だ。

この巨大なステージを持つ店を舞台に、華やかなショーやマフィアの覇権争いが描かれる。

公開当時と違い、今では「コットンクラブ」と聞くと、丸の内TOKIAに入っている高級なライブレストランが思い浮かぶ。あれは「ブルーノート」の系列だが、Blue NoteはNYで営業しているが、Cotton Clubはハーレムに現存しない。今や伝説の店となっている。

主人公の白人コルネット奏者ディキシー・ドワイヤー(リチャード・ギア)は、商売敵から爆破されそうになったギャングのボス、ダッチ(ジェームズ・レマー)を偶然店内で救ったことから、彼に目をかけられる。

そこに居合わせた歌手のベラ(ダイアン・レイン)は、将来自分の店を持つ野望のためにダッチの愛人になり、ディキシーは、ダッチに顎で使われる雑用係のような立場で使われるようになる。

リチャード・ギアYA三部作に初参加。『愛と青春の旅立ち』(1982)で人気に火が付いていた時代だ。ダイアン・レイン演じるヒロインと次第に惹かれ合う展開にも華がある。

一方、若手の黒人タップダンサー、サンドマン(グレゴリー・ハインズ)は、兄のクレイ(実兄のモーリス・ハインズ)とコンビでコットンクラブのオーディションを受け、合格する。

サンドマンは混血の歌手ライラ(ロネット・マッキー)に一目ぼれし、店の中で果敢にアプローチし、愛を育む。

グレゴリー・ハインズはタップダンスの世界では大物であり、コットンクラブのステージで、実兄と息の合った華麗で軽快なタップダンスを堪能させてくれる。本作に続き『ホワイトナイツ/白夜』にも出演。

ステージや裏方は黒人たち、客席には正装した白人たちというコットンクラブを舞台にした映画ゆえ、A面にはディキシーとベラの白人同士B面にはサンドマンとライラの黒人同士の恋愛が、それぞれ進行する構成となっている。

ライラは混血のため外見は白人で通用するが、それゆえの二人の葛藤も描かれている。

この構成自体はよく考えられているが、バランスがフェアではない。興行上の理由だろうが、どうしてもリチャード・ギアダイアン・レインの方がメインの扱いで、グレゴリー・ハインズのパートは中途半端な添え物扱いだ。

クラブのオーナーであるオウニー(ボブ・ホスキンス)とその相棒フレンチー(フレッド・グウィン)は、暗黒街の黒幕的存在でもある。

ディキシーのボスであるダッチはすぐにカッとなり、商売敵を刺殺する等、目に余る行為が増えて行き、やがてオウニーたちにも見放され、ギャングの抗争に発展。

ディキシーの弟ヴィンス(ニコラス・ケイジ)も、かつてのボスだったダッチに牙をむく。

クルマの中から路上、或いは電話ボックス、馴染みの飲食店の店内やトイレ、こういった場所でマシンガンを浴びせてハチの巣にするギャングの抗争劇は、『ゴッドファーザー』の廉価版みたいなチープさは否めない。

ニコラス・ケイジの破天荒キャラや、オウニーとフレンチーの信頼関係の表現(懐中時計叩き壊して新品をプレゼントするやつ)など、コミカルな演出にしたかったのかもしれない。

盛り沢山な白人ギャング映画サイドに比べ、黒人サイドの多くの時間は、ステージ上のパフォーマンスに割かれている。

それはそれで見応えがあって楽しめたが、ドラマ部分は、仕事中に白人マネジャーに迫害を受ける場面ばかりが目立ち、あまり掘り下げられていない印象。

この手の映画は、ステージ上のシーンが長すぎて、途中でうんざりしてしまうこともあるが、この作品は飽きさせずに、いや、もっと観たいと思わせるパフォーマンスだった。

伝説的なライブレストランを舞台にした映画というと、ニコール・キッドマンユアン・マグレガー『ムーランルージュ』(2001)か。

あちらは現代ヒット曲満載のミュージカルで、こちらとはだいぶ勝手が違うが、実在したミュージシャンたちを登場させた本作の正統派アプローチは、この店の風格にふさわしい

長い時間を割いてくれた『ブルース・ブラザース』でお馴染みキャブ・キャロウェイ(ラリー・マーシャル)のステージに感涙。生前唯一の日本公演(MZA有明!)に行って「ミニー・ザ・ムーチャ」を一緒に歌った若き日を思い出した。

ディキシーはベラを愛人にするダッチの雑用係が耐えられず、ハリウッドでギャング俳優として活躍し始める。

だが、弟ヴィンスも殺され、”MOB BOSS”暗黒街のボスとなって街に戻ったディキシーは、コットンクラブで愛人ベラを守ろうとして、ダッチに銃を向けられる。

ついにディキシーはダッチと勝負する、そう思う場面だろう

だがその銃を蹴り上げて助けたのは、サンドマンなのだ。その直後、確かにダッチは殺されるんだけど、ディキシーは何もしていない。ベラだってダッチにゴージャスなクラブを買ってもらったら途端に塩対応だもんな。

結局、ディキシーと列車で駆け落ちで終わるとは、これってホントにハッピーエンドなのか。