『ゴッドファーザー』|ドン・コルレオーネ一気レビュー①

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『ゴッドファーザー』 
 The Godfather

フランシス・フォード・コッポラ監督が贈るイタリア系マフィア一族の不朽の一大叙事詩。

公開:1972 年  時間:177分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ  
監督: フランシス・フォード・コッポラ
原作:         マリオ・プーゾ

キャスト
<コルレオーネ>
ヴィトー(ドン): マーロン・ブランド
マイケル(三男):   アル・パチーノ
ソニー(長男):  ジェームズ・カーン
トム・ヘイゲン: ロバート・デュヴァル
フレド(次男):   ジョン・カザール
コニー(長女):   タリア・シャイア
カルロ・リッツィ:  ジャンニ・ルッソ
ケイ・アダムス:  ダイアン・キートン
アポロニア:シモネッタ・ステファネッリ
<ファミリー>
クレメンザ: リチャード・カステラーノ
サル・テシオ:    エイブ・ヴィゴダ
ルカ・ブラージ:   レニー・モンタナ
ジョニー:     アル・マルティーノ
<その他>
バルジーニ:    リチャード・コンテ
タッタリア:   ビクター・レンディナ
ソロッツォ:    アル・レッティエリ
マクラスキー: スターリング・ヘイドン
モー・グリーン:  アレックス・ロッコ
ジャック・ウォルツ: ジョン・マーリー

勝手に評点:4.5
   (オススメ!)

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

あらすじ

シシリーからアメリカへ移住し、苦闘の末に巨万の富を築きあげたドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)には三人の息子がいた。

長男ソニー(ジェームズ・カーン)は血の気が多く荒っぽい。次男フレド(ジョン・カザール)は腰抜け。温和な三男マイケル(アル・パチーノ)はドンのお気に入りだが、堅気の道を歩もうとしている。

だが、父が敵対するファミリーに銃撃されて重傷を負った時、マイケルは父の世界へ一歩足を踏み入れる。彼は敵のボスと悪徳警官の二人を射殺し、故郷シシリーへ逃亡した。この事件が引き金となって、五大ファミリーの間に血で血を洗う抗争が勃発していく。

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一気通貫レビュー(ネタバレあり)

50年でも色褪せない不朽の名作

フランシス・フォード・コッポラ監督を巨匠に押し上げた、説明不要の不朽の名作『ゴッドファーザー』トリロジーは、第1作目の公開から本年が50周年にあたるそうだ。『ゴッドファーザーPARTⅢ』を再編集した『ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期』が登場したことから、久々にシリーズを振り返ってみることにした。

イタリア・シシリー島からアメリカに移住し、巨万の富を築き上げたドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の一族の跡目相続問題や、麻薬ビジネスに手を出したがる周囲のマフィアとの間に起こる抗争。マフィア映画の金字塔ではあるが、安直に火薬使用量だけが膨らむような安っぽいギャング映画ではない。

まずは、移民のひとりがドンに相談を持ち掛ける。娘を乱暴した連中を殺してくれ。それを落ち着いて差配するしわがれ声の男。はじめは声しか聞こえないが、やがてマーロン・ブランドが顔を表す。綿で膨らませた頬が貫禄を出す。

この相談の一件と、その後20分ほど続く、愛娘コニー(タリア・シャイア)の結婚披露宴のガーデンパーティ。何ともゆったりした流れだが、このシーンを通じて、複雑な家族構成が概ね把握できる。

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ドンの右腕として仕える長男のソニー(ジェームズ・カーン)は、逆上しやすく、やや思慮に欠ける。ドイツ系で実子ではないが、養子となり相談役をこなす弁護士のトム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)

気弱でこの家業には不向きな次男のフレド(ジョン・カザール)。コニーの結婚相手カルロ(ジャンニ・ルッソ)は軽薄なDV男で、はじめから一族からは相手にされていない。

そして、マフィアとは無縁の三男マイケル(アル・パチーノ)は、大学を出て海兵隊で活躍した堅気の若者。披露宴には恋人のケイ(ダイアン・キートン)を同伴している。

ここまでは、大変豪華ではあるが、内容的には登場人物紹介のコーナーだ。そして、ドン・コルレオーネがいかにこの移民社会の中で人々に頼りにされ、顔役として権威を持っているかが伝わってくる。

THE GODFATHER | 50th Anniversary Trailer | Paramount Movies

馬のクビに念仏じゃなく寝室

この後、ようやく血なまぐさいシーンが登場する。

ハリウッドのスタジオに飛んだトムが、大物プロデューサーのウォルツ(ジョン・マーリー)に、ドンが名付け親である人気歌手ジョニー・フォンテーン(アル・マルティーノ)を主役にするようねじ込む。

拒絶したウォルツの寝るベッドの中に、彼の大事にする愛馬の生首をもぐりこませる。これがシチリア流の報復か。実直そうなトムが、ここまで荒っぽい仕事をするとは。

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そして標的は動物から人間へ。麻薬密売人のソロッツォ(アル・レッティエリ)を介して、同業者のタッタリア(ビクター・レンディナ)がドンに商売の話を持ち込む。

だが、ドンがこれをきっぱりと断ったことから、組織同士の血で血を洗う抗争が始まる

まずは汚れ仕事担当の忠実な部下ルカ・ブラージ(レニー・モンタナ)が海に沈められ、コルレオーネのもとに魚が二匹贈られてくる(シチリアには独特のメッセージ伝達手段があるらしい)。

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

マイケル・コルレオーネの決意

麻薬取引の一件で敵に狙われたドンは、果物屋で買い物をする一瞬の隙をつかれ、ヒットマンに撃たれ、瀕死の重傷を負う。このシーンは大昔に観て以来、今も印象に残っている。

本作には多くの名場面があるが、演出が冴えているのは、堅気だったマイケルが、撃たれた父親の復讐のために、ソロッツォと、悪徳警官のマクラスキー警部(スターリング・ヘイドン)イタリア料理店で射殺する場面だろう。

警戒された面談の場に銃を持ちこめず、どうにか事前に突き止めた店のトイレタンクに予め銃を隠す。そして地下鉄線の騒音の中での銃撃。何ともスリリングなシーンだ。

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ドンは何とか一命を取り留めるが、ソニーが仕切るコルレオーネ家は次第に弱体化していく。マイケルはしばし米国を離れ、シチリアに向かう。記憶が正しければ、ここで初めてニノ・ロータメインテーマ曲が流れる。何とも切なく美しいメロディ。

妹コニーのDV夫を懲らしめるために、激昂したソニーが一人でクルマを走らせ、自動車道の料金所で待ち伏せした敵に機関銃で一斉射撃を浴びる。

そしてシチリアでは、マイケルの美しい妻アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)が自動車運転の練習中に、仕掛けられた爆弾の犠牲になる。

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ドン・コルレオーネの信念

次々と家族が殺されていく。見かねたドンは、米国の五大ファミリーを呼び、和平を申し入れる。復讐からは何も生まれない。マイケルの入国を許し、手出しをしなければ、平和協定を守る。ドンは、あれだけ拒んでいた麻薬ビジネスも、他のメンバーの意見を聞いて、渋々認める。

改めて観直すと、ドンは決して不必要な血が流れることを望む荒くれ者ではないことが分かる。勿論清廉潔白な人物ではないが、ファミリーとビジネスのことを常に考える、思慮深い人物なのだ。

そしてドンは、抗争とは関係なく、孫と戯れるなかトマト畑で発作を起こし、帰らぬ人となる。マフィア稼業とは最も縁遠いはずのマイケルが、気がつけば父を後継し、辣腕をふるうようになる。

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ファミリーを狙った五大ファミリーのボスたちは、エレベーター、理髪店、回転ドア、マッサージ店、それぞれコルレオーネ・ファミリーに銃撃され落命する。

そしてマイケルは、組織の裏切り者にも制裁を下す。長くファミリーに仕えたテシオ(エイブ・ヴィゴダ)、そしてコニーの夫のカルロ。こうしてマイケルは新たなドン・コルレオーネとなっていく

(R) & (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

みんな本作で名前が売れた

本作の大ヒットで、これまでひとつもヒット作に恵まれなかったフランシス・フォード・コッポラ監督は一躍有名になり、落ち目だったマーロン・ブランドは息を吹き返し、アル・パチーノ、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートンそして先月亡くなったジェームズ・カーンらにとっても出世作となった。

コニー役のタリア・シャイアコッポラ監督の妹であり、洗礼を受けるコニーの息子役の乳児は、監督の娘のソフィア・コッポラが演じている。家族総出の作品なのだ。

マイケル役には当初ロバート・レッドフォード、ソニー役にはロバート・デ・ニーロという案も浮上していたそうだが、今ではこの配役しか考えられない。

マイケルをアル・パチーノ、そしてデ・ニーロには若き日のドン・コルレオーネを次作で演じてもらわねば。それがやがて、『ヒート』(マイケル・マン監督)の共演に繋がっていくのだから。

当初コッポラ監督自ら125分に刻んだ本作を、会社の意向で177分まで長くしたそうだが、まったく飽きを感じさせないどころか、物足りないくらいだ。

『ゴッドファーザーPARTⅡ』の公開は二年後。当時のファンは待ち遠しかったに違いない。暴走族なら、ホーンを鳴らしたくなるくらいに。