『ミレニアム2 火と戯れる女』
Flickan som lekte med elden
公開:2009年 時間:179分(完全版)
製作国:スウェーデン
スタッフ
監督: ダニエル・アルフレッドソン
原作: スティーグ・ラーソン
「ミレニアム2 火と戯れる女」
キャスト
ミカエル・ブルムクヴィスト:
ミカエル・ニクヴィスト
リスベット・サランデル: ノオミ・ラパス
エリカ・ベルジェ: レナ・エンドレ
パルムグレン: ペール・オスカルソン
ビュルマン弁護士:ピーター・アンダーソン
ヤン・ブブランスキー警部:ヨハン・キレン
パオロ・ロベルト: パオロ・ロベルト
ザラチェンコ: ゲオルギー・ステイコフ
ニーダーマン: ミカエル・スプレイツ
ミリアム・ウー: ヤスミン・ガルビ
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

あらすじ
敏腕ジャーナリストのミカエルと天才ハッカーのリスベットが協力し、大富豪ヴァンゲル家で起きた連続殺人事件を解決してから1年。
リスベットはこつ然と姿を消したままだったが、少女売春組織を追っていたジャーナリストの殺害現場でリスベットの指紋がついた銃が発見される。
無実を確信するミカエルは、仲間とともに事件の真相を追うが、リスベットは謎の大男ニーダーマンに命を狙われる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
あれから一年後のミカエルとリスベット
前作から1年後の設定。原作・映画ともヒットで一躍有名になったミカエルとリスベットのコンビによる第二弾。
ありきたりな物語なら、前作の最後でミカエルとリスベットは愛し合う仲になってハッピーエンドだろうが、ミカエルには堂々とした不倫相手のエリカがおり(さすがスウェーデン)、それを知ったリスベットはひっそりと身を引き隠遁生活に入る。
お互いに、何のコミュニケーションもなく1年が経過しているという状況設定が面白い。

原作ではリスベットはその後、タトゥーを消したり豊胸手術したりで、見た目もすっかり女性っぽくなっている。映画でも同様で、前作では衝撃的だったノオミ・ラパスのビジュアルは、相当マイルドになってしまっている。
これは物足りないところだが、二作目ならではの、人物説明に時間をさかずにハイテンポで進んでいく展開はよい。
◇
ミレニアム誌で掲載予定だった少女売春組織とその顧客に関する特ダネ記事。それを追っていたジャーナリストとその恋人が殺される。現場にはリスベットの指紋がついた銃。
警察は当然、無能力者で危険人物であるはずのリスベットを捜索するが、彼女の潔白を信じるミカエルは、警察とは別に独自の調査を進める。

何者かもわからない謎の調査員リスベットに助けられて謎を解明していった前作にくらべると、ミステリー要素はかなり薄まってしまった。
リスベットが無実であることははじめからお約束だろうが、今回の謎の金髪の巨人ニーダーマンや、その背後に潜むザラと呼ばれる謎の人物にたどり着くまでの捜査過程は、映画版に未公開シーンを加えた完全版でも、原作未読だとやや難解だったかもしれない。
最後まで会わない二人
ただ、この金髪の巨人ニーダーマンは敵キャラとしては分かりやすく、前作にはないスパイアクションの要素が新たに盛り込まれたのはよい。
小柄なリスベットは撃退スプレーやスタンガンが武器なのでアクションは淡泊だが、彼女の味方にプロボクサーのパオロというキャラを登場させたことで、迫力の殴り合いを観ることができる。

この巨人ニーダーマンは痛みを感じない病気という設定(映画や小説でよく出てくるヤツ)なのだが、スタンガンも通用しないものなのだろうか。
この作品で特徴的なのは、ミカエルとリスベットのコミュニケーションが、ミカエルのPC上のメモを彼女が盗み見て書き足す文通のような形式に限定されているということだろう。
互いに信頼しながらも、主役の二人が直接顔を合わすことは、ラストシーンまでないのだ。このじれったい距離感が独特の雰囲気を作っている。主役の男女を徹底して同じシーンに登場させないスタイルは、東野圭吾の『白夜行』を思わせる。
◇
ザラとニーダーマンを追い詰めたリスベットは返り討ちに遭い、地中に埋められてしまう。さすがにそのまま死ぬとは思っていないが、もう少し地中で苦しんでハラハラさせる演出が欲しかった気はする。
このザラという男がリスベットの父で、ニーダーマンは異母の兄弟だったという事実は、唐突感もあってあまりドラマの中では活かされていないのも残念。
ただし、本作『火と戯れる女』と次作『眠れる女と狂卓の騎士』は続き物になっているようなので、次作での展開に期待したい。