『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』
Captain America: Brave New World
アベンジャーズ再結成に向けての大きな布石。新キャプテン・アメリカを襲名したサムの活躍。
公開:2025年 時間:118分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジュリアス・オナー
キャスト
サム・ウィルソン/ キャプテン・アメリカ:
アンソニー・マッキー
ホアキン・トレス/ ファルコン:
ダニー・ラミレス
イザイア・ブラッドリー:
カール・ランブリー
ロス大統領/ レッドハルク:
ハリソン・フォード
ベティ・ロス: リヴ・タイラー
ルース・バット=セラフ: シラ・ハース
レイラ・テイラー: ゾシャ・ロークモア
コッパーヘッド:
ヨハネス・ヘイクル・ヨハネソン
セス・ヴォルカー/ サイドワインダー:
ジャンカルロ・エスポジート
ダイアモンドバック:ローサ・サラザール
サミュエル・スターンズ/ リーダー:
ティム・ブレイク・ネルソン
尾崎総理大臣: 平岳大
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
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コンテンツ
あらすじ
アメリカ大統領ロス(ハリソン・フォード)が開く国際会議の場でテロ事件が発生する。それをきっかけに各国の対立が深刻化し、世界大戦の危機にまで発展してしまう。
ヒーロー引退を決めた初代キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャースから、正義の象徴である盾を託されたファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)。
混乱を収束させようと奮闘する新キャプテン・アメリカに、レッドハルクと化したロスが立ちふさがる。しかし、そのすべてはある人物によって仕組まれていた。
レビュー(まずはネタバレなし)
いつの間にやら3代目
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では待望の保守本流の新作。前作『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)は面白かったのだけれど、シリーズ的には完全なスピンオフ企画。
アベンジャーズの正史を受け継ぐ物語としては、『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』(2022)や『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)以来の作品になるのではないか。
◇
予備知識がなくたって、大して困ることはないが、一応知っておきたいことを書いてみたい。
まず、新たにキャプテン・アメリカを襲名したサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)。初代のスティーブ・ロジャースは引退してしまったので、もはやクリス・エヴァンスは写真でさえも登場させず。
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彼の相棒ファルコンとして長年戦ってきたサムに、星印の盾が託された。「じゃあ、なんで3代目なのよ?」となるが、このあたりはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に描かれている。
「俺には荷が重い」と一旦盾を返上したサムに代わり、二代目となったジョン・ウォーカーが暴走。すったもんだの末に、サムがキャプテンとなったのである。
◇
今回活躍する、30年間投獄され実験された超人兵士だった過去を持つ黒人老兵イザイア・ブラッドリー(カール・ランブリー)も、このドラマの登場キャラ。
Disney+の配信ドラマなので、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は押さえていない人も多いかもしれない。
MCU2作目のハルクを観よう
だが、むしろそれよりも観ておくべきは、懐かしき『インクレディブル・ハルク』(2008)。もはや17年も前のMCU第2作の続編要素が強いからだ。
ハルク役は、この1作だけでシリーズから離れたエドワード・ノートンの後釜マーク・ラファロですっかり定着したが、同作で一番の悪党だったサディアス・”サンダーボルト”・ロス陸軍将軍がその後もシリーズを生き抜き、ついに大統領に出世。
ロスを演じ続けたウィリアム・ハートが2022年に他界し、ハリソン・フォードが引き継ぐ。彼が大統領役だなんて、『エアフォース・ワン』(1997)みたいだ。
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リヴ・タイラーが17年ぶりにロスの娘ベティを演じているのには驚いたが、父親のせいで彼女の恋人ブルースがハルクに変貌し悲運な別れに繋がったことで、ベティは今も父親を許していない。
そして『インクレディブル・ハルク』でブルースの協力者のマッドサイエンティスト、サミュエル・スターンズ(ティム・ブレイク・ネルソン)が、ハルクの血清を浴びて天才になった男として登場。こちらも17年ぶりに伏線回収した気分。
知っておいたらより楽しめる情報はそんなところか。
新キャプテンのアクションって…
本作で各国の対立危機が深刻化する原因となったのは、インド洋上に突如現れた巨大な建造物と、そこで採取された謎の金属アダマンチウム。
これについては、所与の事実として扱われるのだが、過去作に登場してきたエピソードなのか、初お目見えなのか、よく分からなかった。
でも、これまでのMCUでは、ワカンダ国で採れる最強金属ヴィブラニウム一辺倒だったところに、ついに『X-MEN』のウルヴァリンでお馴染みのアダマンチウムが登場とは、今後の更なる両シリーズのクロスオーバーに期待。
サムが新キャプテン・アメリカとなり、自身のファルコンの座は、有望な若者ホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)に譲り渡す。ここにもアベンジャーズの世代交代の波が。
堅物で聖人君子のスティーブとは違うサムの軽妙さもいいし、アフリカ系米国人としての自負や葛藤を背負う真面目なキャラ設定もいい。あえて血清により超人化せず、普通の人間として特殊スーツのみで戦うこだわりも、好感がもてる。
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ファルコンを譲ったあとも、サムには引き続き人工翼があり、新キャプテンは盾と翼のハイブリッド型のバトル・アクションとなる。
動きは軽やかで、キレもいいが、人間味を感じた先代のアクションに比べると、やや挙動が早すぎて味気ないのが惜しい。ヒーロー固有の、見得を切るような決めポーズがないのも寂しい。
美しい翼を折りたたんでの防御姿勢には見覚えがあると思ったが、タツノコプロのアニメ『ガッチャマン』ってああいう動きじゃなかったっけ。
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レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
アダマンチウムを各国で共同保有するという当初の方針が、ロス大統領を襲うテロ騒ぎがきっかけとなって、各国の取り合いになりかける。
それならば米国が貰わねばと、先制攻撃を仕掛けるロス大統領。各国との交渉の中で、大きな存在感をみせるのが、平岳大演じる尾崎総理。
大統領が交渉事で東京まで専用機で飛んできたのに、信用ならんと門前払いをくらわす首相なんて、今の現実社会では想像もつかないが、それをやる平岳大がカッコいい。
『SHOGUN』の真田広之のおかげか、日本文化の扱われ方もまともになってきた。自衛隊があんなに即決で米軍機に反撃を決断できるのかは、疑わしいが。
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さて、本作で一番落胆したのは、ロスがレッドハルクに変貌を遂げ、キャプテンに襲い掛かってくる展開だ。
裏で操るのが天才サミュエル・スターンズなのはよいが、スマホの光の点滅で獲物を催眠にかけ、ある曲を聴くと攻撃するように操るという点や、常用する薬に細工をするという手段が、あまりに古典的でひねりがない。
レッドハルクに変貌したあとも顔にハリソン・フォードの面影があるのは面白いが、ハルクがグリーン、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックスがブルーだから、今度の大男はレッドにしたのなら安易な発想。
それに、レッドハルクのCGの動きも、17年前の『インクレディブル・ハルク』から進歩がみられない気がする。あの時のハルクVSアボミネーションの決戦の迫力を越えられていない。
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一方、レッドハルクなんかより、はるかにクールで強かったのが、謎の組織「サーペント・ソサエティ」の首領サイドワインダー(ジャンカルロ・エスポジート)だった。
生身の人間だが、銃火器を巧みに操り、キャプテンと互角以上の勝負を仕掛けてくる。この男は今後も活躍しそうな有望株だ。
というわけで、本作はついにロス大統領の用命により、アベンジャーズ再結成に向け動き出すという点では重要な一作であり、難点はあっても、見逃してはいけない。
5月にはサンダーボルト・ロスの名に因んだ次作『サンダーボルツ*』、そして7月には『ファンタスティック4』もMCUに仲間入りと、今年はハイペースでMCUの公開が予定されて嬉しい限り。