『バットマン』『バットマン リターンズ』|ティム・バートンのシリーズ一気通貫レビュー

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『バットマン リターンズ』
 Batman Returns

公開:1992年  時間:126分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        ティム・バートン
原案:     ダニエル・ウォーターズ
              サム・ハム
原作:          ボブ・ケイン
キャスト
ブルース・ウェイン/ バットマン:

          マイケル・キートン
セリーナ・カイル/ キャットウーマン:

        ミシェル・ファイファー
オズワルド・コブルポット/ ペンギン:

          ダニー・デヴィート
マックス・シュレック:

      クリストファー・ウォーケン
チップ・シュレック:

    アンドリュー・ブリニアースキー
ゴッサム市長:  マイケル・マーフィー
アルフレッド・ペニーワース:

            マイケル・ガフ
ジェームズ・ゴードン総監: 

           パット・ヒングル

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

あらすじ

クリスマス近いゴッサム・シティ。市民は謎の怪人ペンギン(ダニー・デヴィート)の出現に戦慄していた。

一方、市の電力を独占しようとたくらむ実業家シュレック(クリストファー・ウォーケン)は、秘密を知った秘書セリーナ(ミシェル・ファイファー)を殺害しようと窓から突き落す。

命を取りとめた彼女は女性の犯罪者、キャットウーマンとなって社会とマックスに復讐を誓う。

やがて手を組んだキャットウーマンとペンギンは、マスコミ操作でネガティブキャンペーンを張り、邪魔者バットマン(マイケル・キートン)を追放しようたくらむ。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

前作から3年後に撮られた続編。シリーズ自体は更に『バットマン フォーエヴァー』へと続くが、ティム・バートンがメガホンをとるのは本作まで。

監督はジョエル・シュマッカー、主演のマイケル・キートンヴァル・キルマーに変更となり、路線も異なっていくので、ファンにとっては本作までの二作が愛されるのは納得できる。

『バットマン リターンズ』は前作以上にティム・バートンのカラーが濃厚に出ていると思う。

雪の降るゴッサム・シティの町並や、ブルース・ウェインの住む城のような屋敷から見える、月夜に浮かぶバットシグナルなど、まるで『シザーハンズ』『コープスブライド』のようで、見紛うことなきティム・バートンの世界。

こういう場面を見ると、『ダークナイト』トリロジーとはまた違う、バットマンの映画としての存在価値を再認識する。

今回の敵は複数いる。畸形のために両親に下水道に捨てられ、閉鎖した動物園でペンギンに育てられたオズワルド・コブルポット(ダニー・デヴィート)、その名もペンギン。まんまるの体型にひれのような手、見た目は間抜けだが頭は切れる裏社会のボス。

そしてゴッサム・シティの実業家マックス・シュレック(クリストファー・ウォーケン)。彼は発電所に細工をし、市の生命線を握ろうと企んでおり、ペンギンを丸め込んで手を組む。

シュレックの秘書をしていたセリーナ・カイル(ミシェル・ファイファー)はその悪事を知ってしまい、彼に殺されかけたるが、猫の魔力で甦ってキャットウーマンとなり、復讐の機会をねらう。

ジャック・ニコルソンジョーカーに比べれば、どのキャラも魅力もインパクトも劣っている感は否めないが、ヴィランの人数が増えている分、飽きさせない展開にはなっている。

ペンギンにもジョーカーのような狂気があればよかったのかもしれないが、ただの丸っこいオジサンにしかみえず、せっかくのダニー・デヴィートが生かせていない

後半になると、巨大な黄色いアヒルちゃんに乗って襲撃するようになり、次第にコミカル路線を迷走していくシリーズを予感させるようだ。

実業家のシュレックは、名前だけ聞くと全身グリーンのスキンヘッドの怪物のようだが、そこはクリストファー・ウォーケンが演じているだけあって、渋めのイケオジだ。

彼はコスチュームがあるわけでも、バットマンを攻撃するのでもないただの悪人だが、ある意味、一番存在感のあるヴィラン。

シュレックの会社のトレードマークの不敵に笑うミッキーマウスみたいなキャラは、村上隆のデザインにありそう。

 

そして紅一点のキャットウーマンにはミシェル・ファイファーセリーナ・カイルの時とのギャップ萌えが素晴らしい。コスチュームの手作り感がまたいい。

前作のキム・ベイシンガーはそのワイルドさから、ちょっと作品から浮いてた感じがしたが、今回のミシェル・ファイファーはジャストフィット。『ダークナイト ライジング』キャットウーマン役、アン・ハサウェイに比べても遜色なし。

セリーナの部屋の壁にネオン管で”HELLO THERE”と文字が書かれているのが面白いと思っていたら、キャットウーマンになって暴れた時に、”HELLO THERE”にさりげなく変わっていた。

前作でブルースヴィッキー(キム・ベイシンガー)が仲睦まじくなるのはやや性急だったが、今回のセリーナとの距離の詰め方は良かった。

ブルースとセリーナとしてパーティで再会し、以前にバットマンとキャットウーマンがコスプレで一戦交えたときの台詞を言い合うことで、互いの正体を察知するという演出にキュンとなる。

惜しむらくは、終盤にバットマンが自分のマスクを剥いで、彼女に正体を晒してしまうことだ。ここは演出的にもイマイチだったし、それを傍でみていたシュレックに正体がばれてしまうのも冴えない。

セリーナのために素顔まで晒したブルースが、眼前で愛する女性をみすみす殺されてしまうというのも、ヒーローものとしてはどうなのかと。

複数ヴィランを出すスタイルは、本作が先鞭をつけたということらしいが、コウモリとペンギンとネコが入り乱れる、ティム・バートンらしい賑やかな作品だった。