『オーロラの彼方へ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『オーロラの彼方へ』今更レビュー|そのLINEの相手は、30年後の息子かもよ

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『オーロラの彼方へ』
 Frequency

異常気象のオーロラの夜がつなぐ、30年前の父との不思議な無線交信。未来を変えろ。

公開:2000年  時間:117分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:     グレゴリー・ホブリット
脚本:       トビー・エメリッヒ


キャスト
ジョン・サリヴァン:ジム・カヴィーゼル
(子役)      ダニエル・ヘンソン
フランク・サリヴァン:デニス・クエイド
ジュリア・サリヴァン:

        エリザベス・ミッチェル
ジャック・シェパード:ショーン・ドイル
サッチ・デレオン:アンドレ・ブラウアー
ゴード・ハーシュ:  ノア・エメリッヒ
(子役)    スティーブン・ジョフィ

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

あらすじ

消防士フランク(デニス・クエイド)は危険を顧みず人命を救助する英雄であり、趣味で無線を楽しむ良き父親でもあった。

彼が殉職してから30年が経過した1999年、NYにオーロラが発生したある日、ニューヨーク市警の刑事ジョン(ジム・カヴィーゼル)は、父の形見の無線機を発見し、ある男と交信することに成功する。

その男はなんと、30年前に死んだ父フランクであった。しかもその日は、消防士であった父が救助中に事故死する前日だった。

ジョンは、なんとしても父を救おうとするが、過去を変え、新しい未来を創り出そうとしたその行動が、思わぬ事態を招くことになる。

今更レビュー(ネタバレあり)

2016年に『シグナル 長期未解決事件捜査班』というドラマが放映された。坂口健太郎北村一輝が演じる二人の刑事が、時空を超えて無線で交信し合い事件を解決していく物語だ。その元ネタとなっているのがこの映画である。

但し、殺人事件を未然に防ごうとする点は変わらないが、過去の時代で無線を受ける相手は刑事ではなく消防士、それも父親という設定だ。

NYに突如発生したオーロラによって、30年の時空を超えて、父子が無線で交信しあうことになるファンタジー。坂口健太郎のドラマも悪くなかったが、やはりオリジナルには敵わない。

1969年を生きる父親フランク・サリヴァン役に昭和のオヤジの似合うデニス・クエイド、当時は野球好きの子供で、1999年には成長して刑事になっているジョン役に『パッション』でキリストを演じたジム・カヴィーゼル

正直いってキャスティングに華はない。監督のグレゴリー・ホブリットも、日本では無名に近いのではないか(他の作品を私が観ていないだけか)。

だから作品自体、けして知名度の高いものとはいえないように思うが、個人的にはとても気に入っている映画なのである。

世にタイムトラベルものの映画は無数にあるが、本作は声だけが時空を超える。それも、異常気象によるオーロラの影響というのが、何ともロマンティックで絵になる設定ではないか。

人間は無理でも、無線の声だけなら時空を超越することくらい何とかできる気もするし。

映画は冒頭、1969年。消防士のフランクが、派手に火柱のあがる大爆破から間一髪で人命救助のスペクタクルから始まる。勇敢な男の代名詞であるファイアファイターを描いた金字塔『バックドラフト』(1991、ロン・ハワード監督)に負けてない迫力。

そして怪我もなく家に帰れば、愛する妻ジュリア(エリザベス・ミッチェル)と6歳の息子ジョンとの幸福そうな家庭。

デニス・クエイドは同じ『彼方』でも、オーロラより二年後の『エデンより彼方に』(トッド・ヘインズ監督)のゲイの夫役の方が高く評価されているが、こっちのマッチョな父さんの方が断然似合っている。

時代は1999年になり、成長したジョンは刑事になっている。30年前に仕事で焼死した父が残していった古い無線機を引っ張り出すと、突然誰かの声が入り、交信が始まる。

メッツのファンと思われる相手はワールドシリーズの話をするが、それは30年前の試合だ。どうも話が噛み合わない。

翌日にも交信すると、「なぜ試合結果を知っていた?」となり、そしてジョンは、相手が息子のことを、自分の幼少期のように「チビ隊長(Little Chief)」と呼んでいることに気づく。

極めつけは、相手の名乗る無線のコールネームが、目の前の無線機に書かれた自分の父親のものと同じだったこと。こうして二人は、30年を隔てて無線で会話している現実を受け容れる。

子供は死んだはずの父親と話し合うことができ、親は未来で立派に成長している子供の近況が聞け、ともに喜びを噛み締める。私は早くに父親を亡くしていることもあって、この手の父親との再会ものにはすこぶる弱い。

大林宣彦監督の『異人たちとの夏』クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』と並んで、本作も世界三大【死んだ父と再会の泣ける映画】の一角を占めている。

さて、30年前の父親と分かったのはいいが、それならば今日は父が事故で焼死した日の直前だ。どうにか運命を変えられないか。息子から父への注意メッセージが、父をアクシデントから救う。

だが、歴史は書き替えられても、結局フランクは他の死因で死ぬことになる。ジョンはどうにかして父親が生き続けられるよう、歴史を操作していく。

そして、何と今度は、どこで行き違いがあったのか、看護婦をしている母親のジュリアが、30年前に世間を騒がしていたナイチンゲール連続殺人事件の被害者になってしまう。父子は力を合わせて、ジュリアを何とか生還させようとする。

死んだ父と無線で会話させるだけでも満足なのに、その父をどうにか死なせないように歴史を変えていくのみならず、母のために連続殺人犯を見つけ出し対決しようとするなんて、盛り沢山すぎ。サスペンス要素を盛り込んだのはとても良い。

30年を飛び越えての小道具の使い方もなかなか効果的だ。ぶつかってひびが入ってしまった窓ガラス、焼け焦げを作ってしまった木の机など、30年前の振る舞いが時を超えて反映される。

犯人の指紋付きの財布を、まるでタイムカプセルのようにどこかにしまい込んで30年後に届けるという手にも感心した。

ただ、父親が電気ごてで机に書いているも文字が、30年後にリアルタイムに焦げ跡となって次々と浮かび上がってくるのは、さすがにやりすぎかと。

無線の交信相手が30年前に死んだ父親だということも、連続殺人犯が病院に患者として潜り込んでいたジャック・シェパード(ショーン・ドイル)だということも、あまり出し惜しみせずに初めから開示してしまう。

だが、それで面白味が損なわれることもなく、物語のテンポはよくなっている。現代でシェパードに襲われそうになるジョンにはハラハラしたが、そこからのサスペンスの着地は少々やりすぎ感はあれど、なかなかの切れ味だ

「Yahooの株、買っておけよ」とジョンが30年前の親友ゴード・ハーシュに入れ知恵するのは、さすがに反則だと思うが。

今、異常気象で東京にオーロラが出たら、30年後の我が子との交信はやっぱスマホなんだろうな。LINEだったらちょっと味気ない。

ベイスターズが史上最大の下克上で日本シリーズを勝つのかどうか、うちの息子はちゃんと教えてくれるだろうか。