『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』|ホイチョイ的映画レビューこの一本①

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『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』

ホイチョイプロダクションが贈るタイムトラベルコメディ。バブル崩壊を阻止せよ。

公開:2007 年  時間:116分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:          馬場康夫
脚本:          君塚良一
原作:ホイチョイ・プロダクションズ


キャスト
下川路功:         阿部寛
田中真弓:        広末涼子
田中真理子:     薬師丸ひろ子
芹沢良道:        伊武雅刀
高橋裕子:        伊藤裕子
宮崎薫:         吹石一恵
田島圭一:       劇団ひとり
菅井拓郎:        小木茂光
玉枝:          森口博子

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

あらすじ

2007年、東京。元恋人が作った借金の返済に追われるフリーターの真弓(広末涼子)の母親・真理子(薬師丸ひろ子)が亡くなる。

葬儀に現われた財務省の下川路(阿部寛)は、実は真理子は自身が開発したタイムマシンで1990年に飛び、日本経済の悪化を阻止すべく、歴史を変える任務に出発したのだと真弓に説明する。

だが、真理子は過去の世界で行方不明になってしまい、真弓は下川路に頼まれ、洗濯機に似たタイムマシンで1990年の東京に飛んで母親を捜すことになる。

今更レビュー(ネタバレあり)

バブル時代のミーハー映画の代名詞ともいえる、馬場康夫監督が率いるホイチョイプロ作品の今更レビューを開始。まずは新しい順に(といっても2007年公開だが)、本作から。

タイムトラベルものは当時すでに珍しくもないが、バブル時代に戻るという着想が目新しい。「Pokémon Go!」はまだだから、「電車でGO!」を真似たタイトルか。

SFコメディ映画は初の試みだが、バブル時代を語らせたらそれこそ一家言あるホイチョイだから、大ネタも小ネタも技ありで、安心感は大きい。

元ネタはホイチョイのコミック「気まぐれコンセプト」の特番エピソード「バブル崩壊を阻止せよ」

超高速エレベーター<ドドンパ>に乗ると1989年末にタイムスリップできることから、広告代理店勤めの主人公ヒライが社命で不景気を止めに行く。このアイデア一発勝負のネタを脚本家の君塚良一が娯楽映画向けに拡充したのだろう。

原作のメガネのダメ社員ヒライから、借金のあるキャバ嬢の真弓(広末涼子)に主人公を変更し、その相棒に財務省の官僚・下川路(阿部寛)を持ってくる。

(C)2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館

更には、真弓がバブル時代にタイムリープする理由付けとして、失踪した母親の真理子(薬師丸ひろ子)を登場させて物語に広がりを持たせる。

なかなか面白い布陣だ。かつて、角川事務所を脱退したばかりの原田知世『私をスキーに連れてって』に迎えて大成功したホイチョイが、ついに角川三人娘の長女・薬師丸ひろ子を投入。

若い娘とバディを組む偏屈男を演じる阿部寛『TRICK』仲間由紀恵で見慣れているが、本作はメインの広末を受ける役割。

本作の真骨頂は、タイトルそのもの、バブル時代に戻るところにある。

そこに、芹沢局長(伊武雅刀)不動産関連融資総量規制の発表を阻止して、バブル崩壊を食い止めるという大きな目的があるところは立派だが、ぶっちゃけ、バブル時代の六本木界隈のシーンを見ているだけで、十分に盛り上がれる。

2007年に登場するキャラクターが1990年ではまだ相当若いことになるので、ジャーナリスト役の吹石一恵や取り立て屋役の劇団ひとりを筆頭に、2007年では老けメイクが必須なのは分かるが、相当雑な処理(まるでコントだ)。

それに、1990年の時代を表現する為に、街頭ビジョンのコマーシャル映像今井美樹資生堂)やサントリーの各種飲料缶鉄骨飲料やら)を多用するのは、安上がりでお手軽な手法であることがミエミエだ。

だが、それでもなお、瀬里奈を除き店が様変わりしたスクエアビル近辺の様子やら、2007年のマックから戻った森永LOVEやら、画面の隅々まで凝視したくなるエモさ。

個人的には、東京タワーライトアップが当時は浮かび上がるのではなく、点線状にポチポチ光ってたのを採り上げているのが嬉しい。

ホイチョイ映画はフジテレビ製作というのも、バブルの匂いがするところ。

レインボーブリッジは随所に効果的に使われるし、お台場から河田町(最寄り駅は曙橋)という時代の変遷やら、入社間もないアナウンサー役で八木亜希子までディスコ(クラブではなく)に登場。

バブル時代というと、ジュリアナのお立ち台映像ばかり使われがちだが、本作はそれ以外の日常生活部分もわりと欲張って採り入れているように思う。

森田芳光監督の『愛と平成の色男』とは違うアプローチで、バブル期の高揚感と狂乱と疲弊が入り混じった空気感をうまく醸出している(どちらも、ロフト付きの部屋の非日常感が凄い)。

世代によって大いに盛り上がるか、「あのピタピタの服とゲジ眉と濃い色のパンストはないわ~」となるか、きれいに分かれそうだ。

馬場康夫監督が日立製作所社員だった経緯もあり、本作は同社とタイアップ。真理子(薬師丸ひろ子)の勤務先は日立の研究施設で、偶然作り出してしまうタイムマシンもドラム式の洗濯機。

過去に戻ったまま失踪した母を追い、スク水にMOF(財務省ね)のロゴ入りウェットスーツで真弓(広末涼子)は1990年に戻り、そこで若き日の下川路(阿部寛)と出会う。

(C)2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館

どうにか彼に経緯を信じさせ、ついには母をみつけ、芹沢局長(伊武雅刀)の暴走を止めようとする。

タイムリープでは、一般的に不用意に過去を変えてはいけないものだが、本作は経済破綻を阻止するという明確な目的のために手段を選ばない。革命家を殺しに未来から刺客がやってくる『ターミネーター』と同類ともいえるか。

だから、本作はただ平成ノスタルジイに浸るだけの作品ではない。

冴えない取立屋の劇団ひとりが、かつては長銀に就職が内定したパリっとした学生で、広末「あんた、その銀行潰れるよ」と言われたり、まだ元気だった飯島愛が本人役で出演したり、ちょっとしんみりする部分もある。

「意味なくない?」「ヤバい」といった言葉の用法の差異や、スマホがない時代の駅での待ち合わせといったネタの扱い方や、コミカルすぎる超強力の扇風機や掃除機の存在が後半に活きる点などには感心した。

だが、後半のお座敷でのバトルあたりからは、あまりにドタバタ喜劇になってしまった感があり、中盤までのワクワク感が一挙に盛り下がるのは残念。

(C)2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館

最新のキレキレのダンスを披露し周囲をたじろがせる広末涼子に、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で豪快なエレキギターテクを見せて「まだ早いか」と呟くマイケル・J・フォックスを思い出す。

お座敷バトルで畳の上をあちこち転がる、証拠動画を撮ったスマホは『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』の序盤のアクションシーンのオマージュ。

(C)2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館

現代の硬貨がポケットから出てくる場面は『ある日どこかで』ではキモになるシーンだが、本作では未来からきた証拠として使われる。

お座敷で芹沢局長が本性を現す場面を吹石一恵とクルーが生中継していた場面は、『カリオストロの城』銭形警部「ルパンを追ってたらとんでもないものを見つけてしまった~!」とわざとらしく叫ぶ名場面をいつも思い出してしまう。

(C)2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館

そして最後は、めでたくバブル崩壊を阻止し、現代に戻る真弓と真理子の母娘。戻ってきたのは、真弓の父親だと判明した下川路が総理大臣に就任する日(奇しくも、今日は石破内閣の誕生した日だ)。

母娘を過去に送り込んだ下川路や同僚の菅井(小木茂光)は、1990年にこのバブル崩壊阻止の一件に絡んでおり、そのまま17年を過ごしている。だから全て分かったうえで、母娘の帰りを待っていたわけだ。

ラストシーン。バブルがはじけなかった日本には、何本ものレインボーブリッジフジテレビ本社屋がみえる。

そのカットに(かつて湾岸にあった)巨大人工スキー場ザウスも複数あったんだけど、数秒しか登場しないから、バブル世代じゃないと視認できなかっただろうなあ。