『ジョン・ウィック』
John Wick
キアヌ・リーブスの新たな代表作シリーズが幕を開けた
公開:2014 年 時間:101分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: チャド・スタエルスキ
デヴィッド・リーチ
(ノンクレジット)
脚本: デレク・コルスタット
キャスト
ジョン・ウィック: キアヌ・リーブス
ヘレン(亡妻): ブリジット・モイナハン
<タラソフ・ファミリー>
ヴィゴ・タラソフ:ミカエル・ニクヴィスト
ヨセフ・タラソフ: アルフィー・アレン
アヴィ(弁護士):ディーン・ウィンタース
オーレリオ(車修理):ジョン・レグイザモ
フランシス(用心棒): ケビン・ナッシュ
<殺し屋>
マーカス: ウィレム・デフォー
パーキンズ: エイドリアンヌ・パリッキ
<裏社会>
ウィンストン(ホテル支配人):
イアン・マクシェーン
シャロン(フロント):ランス・レディック
アディ(バーテン):ブリジット・リーガン
チャーリー(掃除屋):
デヴィッド・パトリック・ケリー
ハリー(殺し屋): クラーク・ピータース
医者: ランドール・ダク・キム
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
裏社会から足を洗った殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)。しかし、愛する妻ヘレン(ブリジット・モイナハン)は病に倒れて帰らぬ人となってしまう。
悲しみに暮れるジョンのもとに、ヘレンが生前に用意していた一匹の子犬が届けられる。
亡き妻の思いが託された犬との生活で再び心に平穏を取り戻していくジョンだったが、ジョンの所有する車を狙って家に押し入ったロシアンマフィアが、愛犬を殺してしまう。
ジョンは、かつてその名をとどろかせた裏社会に舞い戻り、組織を相手に単身戦いを挑む。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
ガンフーなる新たな銃術
『マトリックス』と並びキアヌ・リーブスの代表シリーズ作となっている『ジョン・ウィック』の第一弾。
最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)で4作目となるが、なぜか公開時に本作を観た際には印象が薄く、その後の作品を敬遠していた。
イケメン俳優がハゲヅラかぶって殺し屋役ってどうなのよ、と敵対視していたが、どこかでジョニデの『ブラックスキャンダル』と混同してしまった模様。
いや、勿体ない事をしてしまった。改めて観てみると、断然クールなアクション映画ではないか。
ちなみに、本作のキアヌはヒゲ面も精悍でひたすら渋い。ガンアクションとカンフーを組み合わせた<ガンフー>なる新銃術が圧巻。何事にも生真面目に取り組むキアヌの姿勢がよく表れている。
監督はチャド・スタエルスキ。本作が処女作だが、『マトリックス』ではキアヌのスタントマンを務め、彼とは長い付き合いで、アクションに関しては全幅の信頼を得ている人物らしい。
敵に回しちゃあかんヤツ
冒頭、満身創痍でクルマごとゆっくりと壁にぶつかって自宅の駐車場に停車させるジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)。部屋に入り亡き妻ヘレン(ブリジット・モイナハン)の動画を観て感傷に浸る。
分かりにくいが、このシーンは本編ラストシーン直前のカットにあたる。このあと映画はヘレンの病死した直後まで時を遡り、悲嘆にくれるジョンの魂が抜けたような生活を映し出す。
そこに突然、子犬が配達される。私の代わりに愛してねと、生前にヘレンが手配したのだ。ジョンがようやく取り戻した、人間的な生活。
だが、不運なことに、ジョンの愛車1969年製フォード・マスタングがロシアンマフィアの若造ヨセフ・タラソフ(アルフィー・アレン)の目にとまり、ジョンの自宅は襲撃。犬は殺され、愛車も奪われる。
チャールズ・ブロンソンの時代なら、主人公は殺された妻の復讐に走るところだが、今回、被害に遭うのは犬とクルマというわけだ。
しかも、無力な男が必死になってリベンジするのではなく、とてつもなく怖い伝説の殺し屋を、そうとは知らず怒らせてしまうパターン。
このヨセフはマフィアのボスであるヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクヴィスト)の放蕩息子で、父から自分が愚かにも敵に回したジョンという人物の怖さを、しつこく説明される。
◇
ジョンが本当に、ただ愛する妻のために裏社会から足を洗ったのか、妻ヘレンは本当に病死だったのか、謎めいた部分は残る。
だが、とにかくジョン・ウィックはかつての顔なじみ連中と再びコンタクトをとり、このヨセフとその父ヴィゴのタラソフ父子に反撃にでる。
ヴィゴはジョンの恐ろしさを十分知っているが、愛息のために仕方なく、カネで殺し屋を雇いジョンを始末しようと企てる。以上がが大きな話の流れ。
銃撃の一発一発にこだわり
裏社会では聖地とされ、そこでは殺人御法度のホテル・コンチネンタル・ニューヨーク、ディナー予約の電話で登場する死体処理班の面々など、ジョンのかつての仲間たちがみな魅力的なキャラ揃い。
そして、ヴィゴが刺客として雇う、ジョンと旧知の同業者であるマーカス。演じるのは、キアヌに負けない存在感のウィレム・デフォー。敵か味方か、読めない展開がいい。
本作の売りであるアクションについては、『マトリックス』で魅せたような、初めてお目にかかるような驚きの映像ではない。
どちらかというと、リアルさを追求しているのだろう。銃撃戦も派手にパンパンと撃ちまくるのではなく、一発一発に意味があるようなこだわりを感じる。弾薬数や火薬量がセールスポイントという大味な作品とは一線を画す。
ジョンが昔の仲間にサービスを依頼するときには、金貨で支払うのがお作法らしい。
殺し屋が金貨をやりとりしているシーンは『007ロシアより愛をこめて』を思い出させるが、日本びいきのキアヌのことだから、『必殺仕事人』を意識したのかもしれないな。
本作がシリーズ化するとは当時想像していなかったが、続きを観ていくと、この一作目で完成した基本形を少しずつ改変していくのが面白い。その意味では、シリーズ化したことで一作目の完成度の高さが再認識できたように思う。