『エイリアン』 (リドリー・スコット監督)
『エイリアン2』(ジェームズ・キャメロン監督)
『エイリアン3』(デヴィッド・フィンチャー監督)
『エイリアン4』(ジャン=ピエール・ジュネ監督)
『エイリアン2』
Aliens
公開:1986 年 時間:137分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督・脚本: ジェームズ・キャメロン キャスト リプリー: シガニー・ウィーバー ニュート: キャリー・ヘン ビショップ: ランス・ヘンリクセン ヒックス: マイケル・ビーン ハドソン: ビル・パクストン バスクエス:ジェニット・ゴールドスタイン ゴーマン: ウィリアム・ホープ ドレイク: マーク・ロルストン エイポーン: アル・マシューズ バーク: ポール・ライザー
勝手に評点:
(何をおいても必見)
あらすじ
宇宙貨物船ノストロモ号での惨劇から57年後。唯一の生存者である航海士リプリー(シガニー・ウィーバー)が、催眠カプセルの中で眠りながら宇宙を漂っているところを発見された。
目を覚ました彼女は、かつて自分たちがエイリアンと遭遇した星が現在は植民惑星となっていることを知り、がく然とする。
リプリーがエイリアンの危険性を訴える中、植民惑星との通信が突如として途絶えてしまう。原因調査を依頼されたリプリーは、海兵隊とともに現地へ向かうが…。
今更レビュー(ネタバレあり)
今度は大量だ(This time it’s wow!)
前作から7年後の続編、とはいえ映画の中ではエイリアンを倒して猫とともに脱出したリプリーが人口冬眠している間に、地球では57年の歳月が流れている。
いつの間にか怪物のいた惑星は植民地と化しており、だが、誰も彼女の訴える危険性に耳を傾けない。そして通信の途絶えた因縁の惑星に、よせばいいのにリプリーは貴重な有識者として海兵隊とともに再び乗り込む羽目になる。
◇
何だよ、結局同じような設定で、またエイリアンと遭遇する話じゃないか。一体誰がこんな大傑作の二番煎じの監督を引き受けるんだ。だが、蓋を開けたらこれが面白い。さすが、ジェームズ・キャメロン監督。
前作と同じような素材でも、調理法ひとつでリドリー・スコット監督にまったく引けをとらない面白さとは恐れ入る。
タイトルも、前作にsを加えただけの”Aliens”。複数形にしただけで、本作の特色を如実に物語っているこのセンス。でも日本では、誰でも分かるよう『エイリアン2』になってしまって、ちょっと寂しい。
前作では7人の乗組員しか登場しない少人数ならではの良さと緊迫感があったが、本作ではリプリーが何人もの海兵隊に同行する展開なので、やや安心。
などと思っているとそんな筈がなく、無人と化した植民地の基地にはエイリアンの強酸性の体液やら標本やらが発見され、核爆発を引き起こすから危険と弾丸の使用は上司から禁止され、火炎放射器で戦うことになるメンバー。
エイリアンに襲われ、あっというまにメンバーは半減。海兵隊がいて安心するどころか、リプリーがみんなに率先垂範で敵に立ち向かうこととなる。生き残りが数人になったところで、ようやくキャラと名前が分かり始めた。
子役よし、アンドロイドよし
ジェームズ・キャメロン監督の上手なところは、まず植民惑星の唯一の生存者にニュート(キャリー・ヘン)という少女を持ってきたことだ。動物と子役には敵わない。前作が猫なら今回は小さな女の子。
誰が生き残るかの作劇の中で、ニュートは当確と予想できてしまう難点はあれど、スクリームクイーンとして貴重な存在。だって、リプリーもバスクエス(ジェニット・ゴールドスタイン)も泣き叫ぶ女性キャラじゃないから。
前回同様、地球人側にエイリアン以上に不気味なキャラを置いているが、ここにもサプライズがある。
人間離れしたナイフの曲芸をみせたビショップ(ランス・ヘンリクセン)が指を傷つけ、白い体液を流す。前作でリプリーたちを裏切ったアッシュと同じアンドロイド。これは不吉だ!
今回も身体を引き裂かれるのは機械人間の宿命だが、ビショップは最後までいぶし銀の活躍をみせ、リプリーに「人間にしては上出来だ」という賛辞を与える。
◇
一方、今回乗組員を騙して宇宙生物を地球に持ち帰り一儲けしようと企むのは、親会社から派遣の監視役バーク(ポール・ライザー)。種の保存のために本能的に人間を捕獲するエイリアンよりも、実は怖い存在だ。
パワーローダーでひと暴れ
序盤でリプリーが操縦してみせたパワーローダーが、最後に切り札として登場する。これなどは日本のロボットアニメの影響を感じさせるが、大いに盛り上がる。
『ターミネーター』の洗練とは違うが、さすがツボを心得た演出。ジェームズ・キャメロンは余程このバトルが気に入ったのか、パワーローダーのバトルは後に『アバター』でも採用されたっけ。
◇
エイリアンの造形はギーガーのデザインを継承するが、一匹で怖がらせたオリジナルから、大量発生の恐怖に発展させた本作。おまけに大量の卵を産む女王蜂さえ登場。
おなじみのセンサーに近寄ってくる多数の敵の存在は写るが、姿が見えない。だが天井裏をみると大勢で蠢いているという、殺虫剤をまきたくなる身の毛もよだつ恐怖。
前作とかわり、仲間のために身を挺して戦い死んでいこうとする者たちが現れたのも新鮮だった。ヒックス(マイケル・ビーン)とリプリーの、あっさり目の男女の友情の描き方もいい。
◇
終盤、戦いが終わったかと思ったところで、ビショップの八つ裂きとリプリーのパワーローダー登場。閉店間際の大サービス。前作の良さを保ちながらも、エンタメ度は大いに増量。甲乙つけがたい傑作となった。