『私ときどきレッサーパンダ』『あの夏のルカ』|考察とネタバレ

1. 『私ときどきレッサーパンダ』(2022)
2. 『あの夏のルカ』(2021)

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『私ときどきレッサーパンダ』
 Turning Red

公開:2022 年  時間:100分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督・脚本:  ドミー・シー
声優
メイリン: ロザリー・チアン(佐竹桃華)
ミン・リー: サンドラ・オー(木村佳乃)
ミリアム:  エイバ・モース(関根有咲)
アビー:    ヘイン・パーク(れいみ)
プリヤ: 
マイトレイ・ラマクリシュナン(田村睦心)
ジン:    オリオン・リー(安元洋貴)
祖母:  ワイ・チン・ホー(定岡小百合)

勝手に評点:2.5
        (悪くはないけど)

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

あらすじ

伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。

母親の前ではいつもマジメで頑張り屋でいる彼女だったが、本当は流行りの音楽やアイドルも大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだり、やりたいこともたくさんある。

母親の前で本当の自分を隠す日々を送るメイは、本当の自分がわからなくなり、感情をコントロールすることができなくなってしまう。

悩んだまま眠りについた彼女は、翌朝目を覚ますと、なんとレッサーパンダになっていた。突然のことに驚くメイ。しかし、その変身の裏にはある秘密があった。

レビュー(まずはネタバレなし)

今度は現代の女子中学生の物語

前作『あの夏のルカ』に続き、本作もディズニープラスでの配信となる。古き良き時代のイタリアを舞台にして、純朴な小学生たちが主役だった前作に比べると、本作は現代を生きる多感な女子中学生たちが主役とあって、だいぶ風合いが異なる。同じピクサーアニメのカテゴリーで一括りにできない振幅の広さだ。

配信される国によって、しっかり映画の中の小道具の文字まで現地語に置き換えるピクサー作品、本作はついにタイトルロールの背景になっているタワーまでスカイツリー仕様なのかと思ったが、どうやら早合点。あれはトロントタワーだった。

今回の舞台はカナダ・トロント。チャイナタウンで寺院を運営する家庭に育った13歳の少女メイリンが主人公。悪ガキっぽい顔立ちだが、厳しい母親ミンの前ではおとなしく従うしかなく、表向きは良い子になっている。

そんなメイリンが、友人たちと夢中になっているのが、人気アイドルの五人ユニット<4★TOWN>。なんとも中学生女子っぽい! たまごっちがキーアイテムとして登場するが、あれはカナダではまだ流行っているのだろうか。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

レッサーと呼ぶにはでかいけど

多感な年ごろゆえ、イケメン男子に抱かれキスする妄想を絵に描いてみたり、初潮がきたのかと親に勘違いされて赤っ恥をかいたりと、ピクサー作品にしては、しっかりとローティーンの性を描いている。

そう思っていたところに、いきなりメイリンが目を覚ましたらレッサーパンダになっているという非現実とのギャップが斬新だ。

どうやら、感情の起伏が激しくなりコントロールできなくなると、大きく逞しい、おまけにモフモフで獣臭いレッサーパンダになってしまうらしい。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

感情が落ち着くと、人間の姿に戻る。突如宿った不思議な力によってレッサーパンダになってしまったことを悩んで、泣いて、ぶつかって、というメイリンの苦難の物語。

『私ときどきレッサーパンダ』という邦題は、原題の<Turning Red>よりも気が利いている。レッサーパンダは日本語英語ではないようだが、欧米ではレッドパンダの方が一般的なのか、映画の中ではずっとRed Pandaと言っていた。大体、本作ではジャイアントパンダ以上に巨大化するので、どう見ても<小さい方のレッサー>ではないのだけれど。

『私ときどきレッサーパンダ』|本編映像「レッサーパンダに変身!」編|Disney+ (ディズニープラス)

レッサーパンダの造形と表情は妙にコミカルだ。周囲はみなはじめ怖がるが、やがてその愛くるしさとモフモフに参ってしまい、メロメロになる。

レッサーパンダはアライグマに近いために、どちらかというと見た目はアライグマ、特に尻尾のフサフサ具合はタヌキのようである。そうなると、ピクサーアニメというより、森見登美彦『有頂天家族』を観ているような気になってくる。

本作はこれまでのピクサーアニメに見られた感動の質とは、ちょっと違うところにツボが仕掛けられているように思う。こんなのピクサーじゃないよ、という意見もあるだろう(私もどちらかというとそうだ)。

だが、時代の変化とともにこういう作品にも間口を広げることを作り手はねらったのかもしれない。主人公のメイリンは、かつて例がないほど現代風の少女だ。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

アイドルユニットの絡め方も現代風

メイリンの実家が運営している寺に、狛犬かシーサーのように祀られているのがレッサーパンダ。メイリンが突如変身してしまったことを知った両親は、なぜかあまり驚かない。「思ったより、早かったな」という父のジン。

そう、レッサーパンダに変身してしまうのは、代々この家の女が乗り越えてきた運命だったのだ。厳しい母でさえ、かつて感情が高ぶるとレッサーパンダに。まるで中島敦『山月記』のようだ、虎じゃないけど。

大好きな<4★TOWN>のドームツアーに友だち四人で行こうと、レッサーパンダとの写真撮影で資金を集めようとするメイリン。一方、彼女の親族一同は、新月の日にお祓いをする儀式で、メイリンを元の身体に戻そうとする。友人たちとの絆、家族との絆。憧れの<4★TOWN>。全てが混沌とする中で、運命の日がやってくる。

メイリンを取り戻そうと巨大なレッサーパンダと化した母がドームを襲撃するシーンが結構な大迫力。

本作は、ターゲットの年齢層がつかみにくい。内容的には大人向けではないが、小さな子どもたちだとすればややとっつきにくいかと。でも、イマドキの子供たちには、こういうのもウケるのかな。

(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.