『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』 考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』考察とネタバレ

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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
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勉強漬けの高校生活だった女子二人が、卒業パーティで存分にはじける青春コメディ。お下劣だけどいい。二人が見下していたクラスの連中は、思いっきり遊んでたけど難関校に余裕で入っていたのだ。ああ、悔しい!

公開:2020 年  時間:102分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:     オリヴィア・ワイルド
製作総指揮:    ウィル・フェレル
          アダム・マッケイ

キャスト
エイミー:  ケイトリン・ディーヴァー
モリー:  ビーニー・フェルドスタイン
ファイン先生: ジェシカ・ウィリアムズ
ブラウン校長: ジェイソン・サダイキス
ライアン:   ヴィクトリア・ルエスガ
ニック:   メイソン・グッディング
ジャレッド:   スカイラー・ギソンド
ジジ:         ビリー・ロード
ホープ:    ダイアナ・シルヴァーズ
アナベル:      モリー・ゴードン
エイミーの父:   ウィル・フォーテ
エイミーの母:    リサ・クドロー

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

あらすじ

高校卒業を目前にしたエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)と親友モリー(ビーニー・フェルドスタイン)は成績優秀な優等生であることを誇りに思っていた。

だが、遊んでばかりいたはずの同級生もハイレベルな進路を歩むことを知り、自信を失ってしまう。

勉強のために犠牲にしてきた時間を一気に取り戻すべく、二人は卒業パーティへ繰り出すことを決意する。

レビュー(まずはネタバレなし)

ブックマートと混同しないよう邦題は親切

女子高生二人組が高校最後の一夜に繰り広げる騒動を描いた青春コメディ。本でも売る話かと思ったら(books-mart)、頭はいいけど世間知らず(book-smart)という意味だった。文字通り、ブックスマートな女子高生二名の物語だ。

『リチャード・ジュエル』の色仕掛け記者の役が記憶に新しい、女優として活躍するオリヴィア・ワイルドの監督作品。

コメディアンのウィル・フェレルアダム・マッケイによる製作総指揮のサポートもあってか、初監督とは思えない、ぶっ飛んだ過激なコメディに仕上がっている。

同時期公開の米国青春映画として『mid90s ミッドナインティーズ』が引き合いに出されることが多いようだ。あちらは俳優ジョナ・ヒルが監督。ともに俳優の監督作だが、主演の一人ケイトリン・ディーヴァージョナ・ヒルの妹という繋がりもある。

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

『ザ・プロム』と見比べたくなる

内容的にむしろ比較したくなるのは『ザ・プロム』だ。

ともに、ちょっとクラスメイトからは浮き上がっているレズビアンの女子高生が主人公卒業前夜のパーティへの参加が大きな目標になっているからだ。会場を教えてもらえず、主人公が右往左往するあたりも共通している。

ただし、風合いは随分異なる。本作は『ザ・プロム』のようなミュージカルではないし、格調も高くない。むしろお下劣だ

パーティも激しいダンスの公式なプロムではなく、どこかの会場で夜通し飲んでバカ騒ぎして、ドラッグ騒ぎで警察も登場するような代物である。

だが、本作で描かれる、卒業式前後の若者の集まりに特有のこの背徳感や猥雑さは、むしろ日本人には馴染みやすい気もする。

キャスティングについて

主演の二人、エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)は、ブックスマートな生徒たちと言われると、妙な納得感がある。

反動ではじけそうなキャラにも見えるし、冒頭に家の前で二人で風変りなダンスをするだけで、仲の良さが伝わってくる。

ケイトリン・ディーヴァーは他の作品を知らないが、蓮佛美沙子似だなあと思って観ていた。ビーニー・フェルドスタインは、『レディ・バード』でシアーシャ・ローナンの親友だった娘だ。こっちは渡辺直美似

他の生徒たちにも知っている俳優は少ないが、ジジ(ビリー・ロード)がキャリー・フィッシャーの娘だったり、ニック(メイソン・グッディング)がキューバ・グッディング・Jr.の息子だったりと、二世タレントが目立つ。

それと、エイミーの母親役にリサ・クドロー。ああ、TVドラマ『フレンズ』が懐かしい。

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

レビュー(ここからネタバレ)

ここからはネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意願います。

周囲はみんな遊んでいても難関校突破

エイミーとモリーは勉強熱心で先生の受けもいい。それぞれ、コロンビアとイェール大学に進学する。

だが、見下していたクラスの軟派連中も、高校生活を思い切りエンジョイしながら、要領よく難関校に入ったりGoogleに就職内定していたのだ。

何ということだ! こうなりゃ、勉強のために犠牲にしてきた時間を一気に取り戻すしかない。二人は卒業パーティへ繰り出すことを決意する。

『ザ・プロム』でもそうだが、日本のドラマにありそうな陰湿ないじめがでてこないのが、精神的に安らぐ。

勿論、クラスに溶け込もうとしない異分子には、それなりの悪口や冷たい対応はあるが、参加しそうにないから誘わないだけであって、けしてクラスメイトが二人を敬遠している訳ではない。

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

中盤から笑いの波長があってきた

実は、本作の前半までは、あまりこの映画の面白味には乗り切れなかった。

だが、卒業式前夜に、おバカな料理を作る両親からエイミーを奪還し、二人で拾ったタクシーは校長先生(ジェイソン・サダイキス)が副業で運転中。このあたりから徐々に笑いがかみ合ってくる。

リッチな友人ジャレッド(スカイラー・ギソンド)主催の、不人気な船上パーティ会場でヤク漬けのいちごを食べ、二人の身体がバービー人形のようになり、会場住所を知る為にピザ配達のクルマに潜り込むころには、完全に笑いの波長があっていた。

同性愛にしても、エイミーとモリーが好き同士なのではない、という描き方が面白い。

エイミーには気になっている女の子ライアン(ヴィクトリア・ルエスガ)がおり、一方のモリーは、生徒会副会長の軽薄男子・ニック(メイソン・グッディング)が好きなのだ。

だが、やっとたどり着いたパーティ会場で、この二人がいい仲であることをパーティで知り、エイミーは意気消沈する。もう帰ろうといいだすエイミーは、モリーと周囲も引くほどの大げんかになる。

(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

もっとも、エイミーがすぐにまた次の恋の獲物をみつけてしまうところは、『ザ・プロム』純愛路線とは一線を画す。

そのうちに会場に警察がやってきて、無謀にも単身立ち向かっていってしまうエイミー。どうなってしまうのだ。

一方、一人とぼとぼと徒歩で夜道を帰るモリーを、仲違いしていたアナベル(モリー・ゴードン)が車でピックアップしてくれる。

アナベルは何でもしてくれると男子に人気だが、そのサービスの良さからAAAというあだ名がある(日本でいえばJAFだ)。だが、女子のモリーにそう呼ばれることが嫌だったと吐露する。

そして卒業式がやってきた

そして、みんなでバカ騒ぎしたその翌日、この卒業式当日の展開が私はとても好きだ。

まず、留置所にいるエイミーを式典参加に間に合うよう釈放させようと、モリーが画策する。指名手配犯の似顔絵が昨夜のピザ配達人に酷似していることを、有力情報として警察に提供し、エイミーを即時に釈放させるのだ。

一方、みんなが集まる卒業式の会場。当然卒業生代表のスピーチは生徒会長のモリーだが、遅刻だ。ここで上昇志向の強いモリーがスピーチ代理人に託してあった言葉が笑える。

「(欠席の際に代理人をたてることは)上院ではよくあります

だが、二人を乗せたクルマが激走し、会場に到着。途中でスピーチを引き取るモリー。ここにきて、全生徒が彼女を親しい友として受け容れ、みんなが一体化している。もう、二人はただのブックスマートではない

女優出身の監督の目線やみずみずしい感性で田舎町の青春時代を描くあたりは、『レディ・バード』にも通じるところがある。どちらもビーニー・フェルドスタインが出演しているせいかもしれないが。

ラストの空港シーンの女同士のちょっと照れくささのある友情がいい。