『ゼンブ・オブ・トーキョー』考察とネタバレ|東京メトロの車内広告ムービーかと思った

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『ゼンブ・オブ・トーキョー』

日向坂46四期生が全部入りの修学旅行ムービーを、なぜか熊切和嘉が手掛ける

公開:2024年 時間:87分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:         熊切和嘉
脚本:         福田晶平
キャスト
<池園班>
池園優里香:     正源司陽子
桐井智紗:       渡辺莉奈
羽川恵:        藤嶌果歩
説田詩央里:      石塚瑶季
枡谷綾乃:      小西夏菜実
<その他>
辻坂美緒:      竹内希来里
花里深雪:       平尾帆夏
満武夢華:       平岡海月
角村若菜:       清水理央
梁取茜:       宮地すみれ
門林萌絵:      山下葉留花
タクシー運転手:     真飛聖
引率教師:       八嶋智人

勝手に評点:2.5
  (悪くはないけど)

(C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会

あらすじ

修学旅行で東京を訪れた高校生の池園(正源司陽子)は、東京の名所を巡る完璧なスケジュールを組み立て、班長として同じ班のメンバーたちと行動を共にするはずだった。

しかし、待ちに待った自由行動の日、なぜか班の全員がバラバラになってしまい、気が付くと池園はひとり東京スカイツリーの下にいた。

なんとか計画をやり遂げようと東京観光に乗り出した池園だったが、そんな彼女の思いとは裏腹に、班のメンバーたちはそれぞれの思惑を抱いて東京に来ていたのだった。

レビュー(ネタバレあり)

日向坂46四期生全11名が出演する修学旅行ムービー。自慢じゃないが、日向坂46のメンバーなんて、誰も分からない。三田にもあるから<ひゅうがざか>と読むのだとずっと思っていたが、恥をかく前に読み方を知った。

熊切和嘉監督が何を間違えて、これまでの作品とは縁遠いアイドル映画に手を出したのか、そこのみに関心があって、観てみた。

アイドル女子グループの映画なんて観るの、『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』(1986)以来じゃないか。あの映画も原田眞人監督のフィルモグラフィからは異色中の異色だった。

さて、本作は徹頭徹尾、修学旅行もの。どこかの地方からバスで東京にやってくる高校生たち。

観たいところは山ほどあるが、「明日でなくなっちゃうお菓子を一杯貰ったら、全部味わいたいでしょう!」と、全部入りの綿密なプランを作って旅行に臨む、班長の池園優里香(正源司陽子)。この子が主演か。

(C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会

池園班は5名。まずは<浅草>の仲見世からスタートし、花やしきが閉園で早くも計画に暗雲。<月島>のもんじゃが長蛇の列で、メンバーそれぞれ、行きたい店で昼食食べて再集合することに。

だが、待ち合わせたスカイツリーの下<西十間橋>には、誰も集まらず。心配になった池園だが、LINEではみんな現地に来ていることに。

「え、これってマルチバース?」

時間もないし、とりま、みんな単独行動で、てことになる。

この辺から、少なくとも池園班のメンバーは顔が判別できるようになって嬉しい。

クール系の枡谷綾乃(小西夏菜実)は東京出身なので、観光に興味ないのだが、彼女に憧れる別班の花里深雪(平尾帆夏)が、「お洒落な場所を案内してください」と付き纏う。

そこに、枡谷が東京時代に級友だった満武夢華(平岡海月)と偶然再会。みんなで<下北沢>に向かう。

(C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会

憧れの男子・守谷(島村龍乃介)を追っかける羽川恵(藤嶌果歩)は、単独行動の彼をみつけアタックしようとするが、そこにライバルの辻坂美緒(竹内希来里)が登場。抜け駆けは許さんと、二人で守谷を見守りつつ、鍔迫り合いを繰り返す。

説田詩央里(石塚瑶季)は推しキャラの限定Tシャツを手に入れようと、推し仲間の角村若菜(清水理央)、梁取茜(宮地すみれ)、門林萌絵(山下葉留花)とそれぞれ<上野><新宿><池袋><原宿>に向かい行列に並ぶ。

(C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会

班長の池園優里香(正源司陽子)は、みんなと一緒じゃないことに寂しさを感じつつ、独りでせっせとゼンブ入りのプランを消化していく。

そして、池園班のもうひとり、桐井智紗(渡辺莉奈)は一番引っ込み思案のキャラなのだが、憧れのアイドル有川凛(小坂菜緒)の誘い文句に勇気づけられ、アイドルオーディションに出場しようとしている。

(C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会

こんなにアイドル並みに可愛い子が多数在籍している高校なんて、堀越高校かよ、と突っ込みたくなる。みんな垢ぬけてるし、地方の設定には無理があるか。

熊切和嘉監督は、『#マンホール』で主演に中島裕翔を起用してから、アイドルの俳優の潜在能力というか、表現力の豊かさに気づいて、この企画でメガホンを取ることにしたそうだ。

個人的には、『海炭市叙景』『私の男』『658km、陽子の旅』といった酷寒の風景で良質なドラマを撮る熊切監督が好きなので、お気楽でハッピーオーラ全開の本作に、監督らしさがあったようには思えなかった

池園班のメンバーそれぞれにドラマがあって、みんな単独行動なのだけれど(今の修学旅行ってそんなのありなの?)、最後にはヤマ場にむかって力を合わせるようになるという構成自体は、アイドル映画の王道パターンで好ましい。

ただ、ストーリーそのものがどれも小粒で弱い

枡谷さんが実はコミックとアニメ好きのオタク女子だったり、メグがライバルともども守谷君にフラれたり、説田ちゃんがクレーンゲームでTシャツ獲ろうと頑張ったりと、結局あっさりめなエピソードの集合体になってしまっている。

喫煙姿をカメラに撮られたのではないかと神経質になるタクシー運転手(真飛聖)の存在理由がわからないし、引率教師役八嶋智人を、ただのルールにうるさくて間抜けな先生に留めてしまっているのも勿体ない。

この映画に価値を見出すとすれば、将来に向けた記録性だと思う。再開発が急ピッチで進む東京の各地をフィルムに収めることには意味がある。

例えば、ホイチョイ映画『メッセンジャー』(1999)は都内を走るバイク便の映画なので、もはや見られない各地の風景が楽しめる。

本作でも、再開発真っ最中の<新宿西口>をはじめ、いずれ様変わりしてしまう町並みを現役アイドルが走り回るショットは、十年もすれば貴重な映像になるかもしれない。

映画としては、当然ながら日向坂46四期生のファンには文句なしに嬉しい映画なのだと思う。それ以外の方には、メンバーの見分けがつくようになる効能はある。