『リトル・ロマンス』
A Little Romance
ジョージ・ロイ・ヒル監督には珍しい恋愛映画。ダイアン・レインの鮮烈なデビュー作。
公開:1979年 時間:109分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジョージ・ロイ・ヒル
脚本: アラン・バーンズ
原作: パトリック・コーヴァン
『リトル・ロマンス』
キャスト
ダニエル: テロニアス・ベルナール
ローレン: ダイアン・レイン
ジュリアス: ローレンス・オリヴィエ
リチャード: アーサー・ヒル
ケイ: サリー・ケラーマン
ジョージ: デヴィッド・デュークス
ナタリー: アシュビー・センプル
ロンデ: グラハム・フレッチャー=クック
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
パリに住む13歳のダニエル(テロニアス・ベルナール)は映画好きのマセた少年。ある日彼は、裕福なアメリカ人実業家の娘ローレン(ダイアン・レイン)に出会い、たちまちお互いを好きになる。
パリの街中でデートを重ねるようになった二人は、ふとしたことがきっかけで老紳士ジュリアス(ローレンス・オリヴィエ)と知り合う。
そして彼から、「ベニスの運河にかかる“ため息橋”の下で日没の瞬間にキスした恋人たちは、永遠の愛を手にする」という伝説を聞いた二人は、ベニスに向かう。
今更レビュー(ネタバレあり)
単純明快ロマコメでよし
今思えば、相当に甘ったるく単純明快なロマコメ映画なのだが、公開当時の私は主人公たちと同年齢でもあり、何の疑問も抱かずに素直にのめり込んでいた。
『小さな恋のメロディ』(1971)の頃はまだガキだったが、『リトル・ロマンス』なら、テレビじゃないけどリアタイ世代なのだ。
もっとも、この数年後にはソフィー・マルソーの『ラ・ブーム』がきて、もっと性に奔放になってしまうので、本作のような初心な恋愛映画は稀少。

映画はいきなり、ジョージ・ロイ・ヒル監督自身の代表作『明日に向って撃て!』の1シーンから始まる。
ロバート・レッドフォード扮するサンダンス・キッドが泳げないヒーローであることを白状するこの名場面を、私はまずこの映画で知ったのを思い出す。でも、何か違和感が。そう、映画の台詞がフランス語吹替なのだ。
劇場でこの映画を観ているダニエル(テロニアス・ベルナール)は、パリに暮らす映画少年。
といっても内向的ではなく、ボギーの台詞を諳んじては女の子を口説いたり、綿密な予想により競馬で大儲け(実際に馬券は買えず、机上の計算)したり。
このパリっ子のダニエルが、ベルサイユ宮殿の課外授業で、母親に連れられて映画の撮影現場に来ていた裕福なアメリカ人実業家の娘ローレン(ダイアン・レイン)と出会う。ここから、あっという間に二人は意気投合する。

オリヴィエに聞きながら
ダニエルはタクシー運転手の父親とアパートに二人暮らし。ハリウッド映画が好きで、英語も話せるようになった。ローレンは裕福な家に暮らすが、母親が男狂いで何度も父親が変わっている。
生意気な二人が、ハイデッガーの哲学本について議論するのが面白い。
◇
ジョージ・ロイ・ヒル監督が舞台の演技を観てスカウトしたというダイアン・レインは、本作が映画デビュー。
映画と違い実生活では、彼女の父親の方がタクシー運転手。この映画で注目を浴び、『アウトサイダー』はじめ、コッポラの青春映画で重用されるようになる。
一方で、本来の主演であるテロニアス・ベルナールは、本作のほか出演映画は1本のみで引退してしまった模様。今は歯科医だとか。
さて、ダニエルとローレンの恋路には特段トラブルも試練もなく順風満帆だったが、ローレンの父リチャード(アーサー・ヒル)の転勤でヒューストンに引っ越すことになる。
ローレンは、以前にダニエルとともに偶然知り合った老紳士ジュリアス(ローレンス・オリヴィエ)から聞いた話を思い出す。
「ベニスの運河にかかる“ため息橋”の下で日没の瞬間にキスした恋人たちは、永遠の愛を手にする」
米国に帰国する前に、サンセット・キスで永遠の愛を手にしたい。そう願ったローレンは、ダニエルとともにベニスに旅立つ。

船頭突き落としちゃうんだ!?
列車で行けるとはいえ中学生が親に内緒でフランスからイタリアに国外脱出を企んだり、旅費捻出のために得意の競馬で一攫千金をねらったりと、無謀な話ではあるが、老紳士ジュリアスの協力があることで、どうにか計画は実現し、三人はベニスにたどり着く。
だが、ローレンの捜索届が出されたことで、本件は誘拐事件として扱われ、スリの常習犯だったジュリアスは指名手配されてしまう。そんな状況で、はたしてベニスでキスができるのか。

そもそも、生意気盛りで世間ずれしたローレンが、こんな乙女チックな都市伝説に執心するとも思えない。そう考えてしまうのは、年を取った証拠なのだろう。
大人目線にたつと、ダニエルの言動にもいくつか気にいらない点がある。
例えば、ダニエルの指示通りの馬券を買わずに、結果的に大穴を当てて旅行代金を稼いだジュリアスに対し、感謝もせずにカネを受け取るところ。
更に、ベニスでゴンドラに乗るのにカネが足らず値切ったのはよいが、そのせいで“ため息橋”をくぐってくれない船頭を、運河に突き落としてゴンドラを乗り逃げしちゃさすがにアカン。

◇
まあ、理屈ではそういうものの、鐘が鳴り響く日没のベニスの橋の下でめでたく二人がキスするシーンには達成感があるし、その後に米国に戻るローレンとダニエルの別れの場面も泣ける。
ここはダイアン・レイン自身が、一番満足している出来だという。抱擁する二人のそばのベンチに、ひっそりとジュリアスが座っているのもいい。
◇
終盤にあまり出番がないのが残念だが、ローレンの親友でちょっと抜けてるキャラで歯列矯正中のナタリー(アシュビー・センプル)と、ダニエルの親友で映画館主の息子、ハリポタの親友ロンみたいなロンデ(グラハム・フレッチャー=クック)も、憎めないキャラでよかった。
なお、作曲賞でオスカーを獲ったジョルジュ・ドルリューのテーマ曲も良い感じなのだが、いまだに耳に残ってるのが、日本オリジナルのイメージソング、パオの「サンセット・キス」。
これ、映画のCMでしか聴いていないはずなのに、今でも歌えるのって、不思議すぎる。
