『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』シリーズ一気通貫レビュー

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『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
 Luftslottet som sprängdes

公開:2009年 時間:178分(完全版)  
製作国:スウェーデン

スタッフ 
監督:   ダニエル・アルフレッドソン
原作:      スティーグ・ラーソン

 「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」

キャスト
ミカエル・ブルムクヴィスト:
        ミカエル・ニクヴィスト
リスベット・サランデル:ノオミ・ラパス
アニカ・ジャンニーニ: アニカ・ハリン
エリカ・ベルジェ:   レナ・エンドレ
ブブランスキー警部:  ヨハン・キレン
エクストレム: ニクラス・ユルストレム
テレボリアン医師:

 アンデシュ・アルボム・ローゼンダール
ザラチェンコ: ゲオルギー・ステイコフ
ニーダーマン:  ミカエル・スプレイツ
グルベリ:  ハンス・アルフレッドソン
エドクリント警視: ニコラス・ファルク
モニカ・フィグエロラ:

        ミリヤ・トゥレステット
アルマンスキー:

    ミカリス・コウトソグイアナキス

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

あらすじ

犯罪組織の大物ザラとの対決で瀕死の重傷を負ってしまった女性リサーチャー、リスベット。元相棒の社会派記者ミカエルに発見されて一命を取り留めるが、病院に入院することに。

一方、かつてスパイだったザラを利用してきた大物たちの組織はその事実を闇に葬り去ろうと関係者の口封じに動く。

ミカエルは妹である弁護士アニカら数少ない理解者たちを総動員し、“狂卓の騎士”というチームを結成。法廷でリスベットを救おうと目指す。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ストーリーとしては、前作『ミレニアム2 火と戯れる女』の続きものになる。

前作のラストで瀕死の重傷を負ったリスベットと、彼女が殺そうとして失敗した、実父であり巨悪の権化ザラチェンコが同じ病院に入院。

一方、無痛性のシリアルキラーであり、彼女の実兄ニーダーマンは、せっかくミカエルが前作で拘束したのに、愚かな警察の対応でまんまと逃げられてしまう。

三部作の完結編である本作が、前作同様にクライムサスペンスだと思ってしまうと、おそらく期待外れということになる。公開時に観た時の私はそうだった。

だが、原作を読んでみると、三作目は法廷ドラマなのだ。かなり多くのページ数を、法廷での争いに割いている。

映画も同様で、ミカエルの妹で弁護士のアニカ・ジャンニーニが、被告人リスベットのために戦う。

(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

リスベットは精神障害などない健常者であり、少女の頃から長年、ザラチェンコ機密を共有する公安警察の一味の策略で、精神的・肉体的な苦痛を与えられてきたのだと。

三作目は法廷ドラマだという認識があれば、本作は相当面白い。

二作目以降、パンクファッションとは無縁な見た目になっていたリスベットが、法廷ではまるで正装のごとく、パンクファッションとピアスで髪をおっ立てて、革ジャンでキメて登場する。これは痺れる。

今回観たのは3時間近い完全版。登場人物を親切に説明してくれないので、原作を読んでいない観客には、結構人物把握が難しいように思う。

特に、グルベリたち公安警察の特別分析班の連中や、警察とミルトンセキュリティのメンバーなどは分かりにくい。とはいえ、それでストーリーが理解不能になるほどではない。

(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

3時間あっても原作からは省かれた部分も多い。

ミレニアムの編集長からエリカが他紙に引き抜かれ、そこで判明した役員の不正の話はまるまる無くなり、その会社で起きたエリカへの脅迫メールの件も、ミレニアム社内で起きる事件にトーンダウン。

入院しているリスベットに、ミカエルが秘かにハッカーの武器である携帯情報端末(PDA)を渡す手法も、原作では凝っていたのに、映画では主治医経由でただ渡すだけ。

興味深かったのは、原作ではミカエルとモニカ刑事がすぐにベッドを共にする仲になって不倫相手のエリカを混乱させるのだが、映画では一切カット。

さすがに主人公のフリーセックスが過ぎてスウェーデンのイメージダウンになると危惧したのだろうか。

映画は終盤、無事に裁判が終わり釈放されたリスベット。その後、すっかり忘れていた最大の脅威、巨人ニーダーマンと廃工場で鉢合わせし、最後の対決に。

無事に合法的な形で実兄に復讐を果たしたリスベットは、最後にようやくミカエルと再会。

だが、ここで二人が愛を語らい合ってハッピーエンドというのではない。「またね」「きっとだよ」と再会を期待させる形であっさり別れる二人。

(C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

長編の三部作まであるのに、主演の二人が共演しているカットは、はたしていくつあるのだろう。会うことに関してはかなり禁欲的な関係といってよい。

三部作を書き上げた時点で、スティーグ・ラーソンには次の構想があったはずで、この二人の仲をどう発展させるつもりだったのか。

原作者が亡くなっても、シリーズは受け継がれていく。映画化された残り一作は、どう進むのか。