『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』
The Fantastic Four: First Steps
MCUに満を持してファンタスティック4のメンバーが初参戦。
公開:2025年 時間:130分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: マット・シャックマン
キャスト
リード・リチャーズ: ペドロ・パスカル
スー・ストーム: ヴァネッサ・カービー
ジョニー・ストーム: ジョセフ・クイン
ベン・グリム: エボン・モス=バクラック
シャラ・バル: ジュリア・ガーナー
ギャラクタス: ラルフ・アイネソン
ハーヴェイ:ポール・ウォルター・ハウザー
テッド・ギルバート: マーク・ゲイティス
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーローチームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命” も加わろうとしていた。
しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵“宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る!
滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。いま、全人類の運命は、この4人に託された。
レビュー(まずはネタバレなし)
マーベル最古参ヒーロー
ついにMCUにファンタスティック4が参画した。社名がマーベルとなった1961年にデビューだからマーベルコミックの初代ヒーロー。チームで行動するヒーローとしてはアメコミ最古参らしい。
何度か映画化しているが、当時ファンだったジェシカ・アルバが主演の『ファンタスティック・フォー 超能力ユニット』は結構楽しかった。クリス・エヴァンスもメンバーにいたことは、『デッドプール&ウルヴァリン』でいじられている。
◇
今回の作品は過去作との関連はない。冒頭にアース828と出るので、これまでのMCUとは別次元なのだろう。
宇宙でのミッション中のアクシデントで、宇宙線を浴びて特殊な能力を得てしまった4人の宇宙飛行士。その経緯やら、ヒーローになってからの活躍は、ダイジェスト版で最初に紹介される。
本作がファースト・ステップなのに、既にヒーローの座を確立してからの物語になっている。この辺は同時期公開の『スーパーマン』と似ているところだ。最近の風潮なのかも。
メンバー紹介
ミスター・ファンタスティックこと天才科学者リード・リチャーズ(ペドロ・パスカル)は、身体がゴムのように伸縮自在となる能力と卓越した知性と発明の才能を持つ、チームのリーダー。

彼のパートナーであるスー・ストーム(ヴァネッサ・カービー)は、インビジブル・ウーマンと呼ばれ身体を透明化する能力を持つしっかり者。
彼女の弟、ヒューマン・トーチことジョニー・ストーム(ジョセフ・クイン)は、全身を炎に包み、高速で空を飛ぶことができる、若く陽気なチームのムードメーカー。
そして、リードの親友で、岩のような強固な身体を持つザ・シングことベン・グリム(エボン・モス=バクラック)は、怪力の持ち主。
他のメンバーは見た目は普通の人間だが、ベンだけは岩のような肌の大男で顔も分からない。演じるエボン・モス=バクラックの顔は事故前の宇宙飛行士時代の一瞬しか写らず、気の毒な気もする。
リード役のペドロ・パスカルとジョニー役のジョセフ・クインはともに『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』に出演。ペドロは英雄だったが、ジョセフは愚皇帝役だったので、ギャップが面白い。
本作ではリードとスーが夫婦、しかも冒頭でスーが妊娠したことがわかるという展開。ここで生まれてくる赤ちゃんが、物語では大きな鍵を握るのだが、途中、宇宙航行中にスーが産気づく場面がある。
ヴァネッサ・カービーには『私というパズル』という自宅出産シーンに20分もかけて死産になる重苦しい映画があり、この映画でもそれが頭をよぎるのでヒヤヒヤした。

徹底して1960年代
映画の時代設定が1960年代なので、部屋のインテリアから家電製品、マンハッタンの町並や走っているクルマ、そして彼らをサポートするロボット・ハービーのデザインに至るまで、すべて当時のデザインになっていることはお見事。
でもタイトルがファンタなのに、町に登場する飲料系広告はセブンアップばっかりだったな。
◇
画質や色調までもがクラシックな風合いになっていて、どこかMCU配信ドラマ『ワンダビジョン』を思わせる。劇中に子供たちに人気の彼らのTVアニメも登場するのだが、これは日本でも『宇宙忍者ゴームズ』という邦題で放映されていた。
映画でもベンの決め台詞として使われる” It’s clobberin’ time!”(鉄拳制裁タイム!)は、当時のアニメでは「ムッシュムラムラ!」という掛け声になっていたのだ。「鉄拳制裁タイム!」にエモいと言えないのはこのせいか。

今回の敵は、まず使者として登場するシャラ・バル(ジュリア・ガーナー)。
彼女が仕えるギャラクタス(ラルフ・アイネソン)がこの星を食べることに決まったので、残された貴重な時間を愛する人と過ごしなさい。と、とんでもなく恐ろしいことを言い残して去っていく。
全身が銀色に覆われたサーフボードに乗っているこの使者は、懐かしや、『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』に登場のシルバーサーファーだ。いつの間に女性になったのか。
さて、このギャラクタスなる大きな怪物が今回の敵将なわけだが、そのサイズの巨大なこと。これまでいくつもの惑星を食い物にしてきているのも伊達じゃない。
ファンタスティック4の面々は、宇宙船に乗ってはるばるギャラクタスに交渉しに行くが、すぐにスーの妊娠に気づいた敵は、地球を見逃す代わりにその赤ん坊をよこせと言ってくる。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
大魔神を倒せ
ギャラクタスから何とか逃げて地球に戻ってきたファンタスティック4。帰路で無事出産を終えたスーに世間は祝福ムードだったが、記者会見でのリードの声明に状況は一変する。
「ギャラクタスは倒せませんでした。この子と引き換えに地球を食べる計画はやめてもいいと言われましたが、断りました」
リードさん、あんた正直なのにも程があるよ。世間の反応も節操がないとは思うが、子供と全世界の生命とどっちが大事なのかとみんなで4人にバッシング開始。だが、最後にはこの子も地球も守るとスーが啖呵を切って納得させる。
はじめは、世界中の電力をかき集めるヤシマ作戦もどき(©エヴァ)で地球自体を瞬間移動させてしまう計画だったが、シルバーサーファーに阻止される。
そしてついにギャラクタスが地球に襲来。摩天楼の高層ビル群をバックにしても、大きさが際立つ。しかも見た目は大映の大魔神のようであり、これがビル街を闊歩する様子は、日本の特撮を彷彿とさせる。
敵のねらいは我が子フランクリン。リードとスーは、我が子をおとりにギャラクタスをおびき寄せ、開発した装置を使ってどこかの果てしない彼方に追いやってしまおうと画策する。

家族で戦うヒーロー
MCUの過去作と比較して、敵将とその使者の二人だけというヴィラン勢はあまりに少数だが、ギャラクタスの規格外の大きさと強さからすれば、まったく無問題。
ファンタスティック4はメンバーそれぞれの戦闘能力を生かして戦う。我が子のために誰よりも必死になるスーだが、そのパワーがさすがに強大すぎて、他のメンバーとバランスが崩れている。まるでX-MENのジーン・グレイだ。
◇
ヒーローが集団で戦うアクションの興奮は『スーパーマン』とも共通するが、本来、能天気なヒーローものである本作よりも、硬派なはずの『スーパーマン』の方が笑いを取りに行っているのは、意外な結果だった。
家族のようなメンバーが戦うファンタスティック4に、赤ちゃんメンバーまで増えたとなれば、ピクサーの『Mr.インクレディブル』のようではないか。こっちのユニホームは青だけど。