『なま夏』
公開:2006年 時間:57分
製作国:日本
スタッフ
監督: 吉田恵輔
キャスト
益雄: 三島ゆたか
杏子ちゃん: 蒼井そら
勝手に評点:
(私は薦めない)

あらすじ
あぶないおじさん益雄(三島ゆたか)は、恋をしている。相手は、通勤電車で一緒になる女子高生の杏子ちゃん(蒼井そら)。
益雄のピュアな片思い? は、杏子にとってはキモイだけ…。人生をかけた告白も瞬殺される。とにかく恋愛関係に発展しそうにないこの二人の行方は?
今更レビュー(ネタバレあり)
𠮷田恵輔監督のデビュー作となった中編のエロティックコメディ。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭・ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得。
そうきくと、案外まともそうな作品に思えるが、中身は相当にヤバい。というかキモい。当時人気のあったAVアイドルの蒼井そらがヒロインの女子高生を演じているところは興味をそそる。パッケージ写真などもいい感じ。
◇
彼女が出演するとなれば、それなりの露出度を期待するところだが、意に反して、その手の過激さとはまるで縁遠く、のちのAKB48・小野恵令奈出演の『さんかく』あたりと、エロさは大差ない。
観ようによっては、『純喫茶磯辺』の麻生久美子のミニスカート姿の方が、余程エロいかもしれない。
だが、この映画の主人公は、青井そらが演じる女子高生に夢中になっている独身ストーカー男の方である。
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中年のおっさんと呼ぶにはまだ若い気もするが、実家の自室にこの娘の隠し撮り写真を貼りまくり、家でも会社でも妄想しているこの男・益雄が相当にキモい。
マスオという名も、サザエさんからではなく、冒頭に出てくる自慰行為にちなんでいるに違いない。演じているのは、本作以降、全ての𠮷田作品にクレジットされているという𠮷田恵輔のミューズ・三島ゆたか。
今なお、ストーカー殺人というものが一定の頻度で発生している。この映画は20年前の作品だが、令和の現代でも、ストーカー男の不気味さを、こういうコメディ映画で笑い飛ばせるほど、平和な世の中にはなっていない。
だから、この女子高生の家に忍び込んで洗濯物の下着を盗んだり、盗聴器付きのぬいぐるみを渡したり、通学電車の中で痴漢行為に及んだ挙句に彼女を刺してしまったり、一連の行為に全て身の毛がよだつ。
◇
しかも、自殺に失敗し、彼女と同じ病室で隣に入院して親しくなるという不気味な展開。これをサスペンススリラーとして楽しむ人もいるのかもしれないが、私は拒絶反応が出た。
大体、自分を刺したのが、最近周辺をうろついているストーカー男だと気づいているのに、警察にも言わずに、ただおとなしく入院している女子高生が信じられない。
こういう陰湿で極悪非道なゲス男は、AVの世界なら許される存在だと思うが、エロティックコメディの中には居場所がない。
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この男が、実は根はいいヤツで、自分を犠牲にして彼女を助けたりするのかと思えば(それにしたって、既に悪事を働きすぎだが)、結局最後まで何一つ徳を積むことなく、絞首刑で死んでいく(ラストのカットって絞首台だよね)。
というわけで、久々の辛口評点となってしまった。蒼井そらのファン以外にはお薦めしない。回想シーンに、セーラー服の内田慈発見。これは貴重かも。