『007リビング・デイライツ』
The Living Daylights
ティモシー・ダルトンがボンドを演じるシリーズ15作目。ボンドガールはマリアム・ダボ。
公開:1987年 時間:130分
製作国:イギリス
スタッフ
監督: ジョン・グレン
原作: イアン・フレミング
『ベルリン脱出』
キャスト
ジェームズ・ボンド:ティモシー・ダルトン
カーラ・ミロヴィ: マリアム・ダボ
コスコフ将軍: ジェローン・クラッベ
ウィテカー: ジョー・ドン・ベイカー
ネクロス:アンドリアス・ウイスニウスキー
プーシキン将軍:ジョン・リス=デイヴィス
カムラン・シャー: アート・マリック
ソーンダース: トーマス・ウィズリー
フェリックス・ライター: ジョン・テリー
グレイ国防大臣: ジョフリー・キーン
M: ロバート・ブラウン
Q: デスモンド・リュウェリン
マネーペニー: キャロライン・ブリス
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
亡命を希望するKGB高官コスコフ(ジェローン・クラッベ)の護衛を命じられチェコを訪れたジェームズ・ボンドは、コスコフの命を狙う謎の女性チェロ奏者カーラ(マリアム・ダボ)に妨害されながらも亡命を成功させる。
西側へ渡ったコスコフは、KGBのプーシキン将軍(ジョン・リス=デイヴィス)が企てている西側スパイ皆殺し計画についての情報をMI6に提供し、長官Mはボンドにプーシキン将軍の暗殺命令を下す。
そんな中、カーラと再会したボンドは、コスコフが国際武器商人ウィテカー(ジョー・ドン・ベイカー)とつながっていることを知る。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
悪人顔の4代目ボンド
シリーズ誕生25周年の記念作品は、最高齢ボンドになるまで老体に鞭打って頑張ったロジャー・ムーアに代わり、4代目となるティモシー・ダルトン。
そもそもショーン・コネリーの降板時から、何度か白羽の矢が立ちかけたが、若すぎる年齢だったり、仕事のタイミングだったりでチャンスをつかめずにいたが、満を持しての出演となった。
◇
実際はイアン・フレミングの原作イメージに最も近いと言われるティモシー・ダルトンだが、ロジャー・ムーアの清潔感溢れる善人顔を見慣れた世間の目には、どうにも悪人顔に見えてしまい、違和感があったのかもしれない。
結局、本作と次作の『消されたライセンス』の二作品にしか出演せずに終わる。
正直言って、私もこの若い頃の蟹江敬三みたいな4代目ボンドにはさほど関心が高くなかったのだが、今回劇場公開から実に約40年ぶりに観直してみたところ、いや、カッコいいじゃないかティモシー・ダルトンのボンド。
その後にダニエル・クレイグが演じたことで、ロジャー・ムーアやピアース・ブロスナンのようなチャラい系の二枚目半路線だけでなく、ボンド俳優の許容範囲が広がったように思う。
そんな中で改めてティモシー・ダルトンを見ると、面構えはちょっと爬虫類系で怖そうだけど、アクションにはキレがあるし、女性への対応にも一応節度があるし、若返りと原点回帰を図るには絶好の人選だったのではないか。
スパイに死を
アヴァンタイトルは00メンバー参加のサバゲ―のような演習訓練。そこに敵が忍び込み、実際に同僚エージェントが殺される。
異変に気付いたボンドが敵を追い、派手に戦って倒した後に、水着女性のクルーザーにパラシュートで落下。名刺代わりのアクションとしては文句なし。ここでa-haの主題歌とタイトル。つかみは良いぞ。
チェコに出向いたボンドは、KGBの幹部コスコフ(ジェローン・クラッベ)の亡命を援護すべく、演奏会場で敵の狙撃兵を撃つ。だが、そのスナイパーが女性のチェロ奏者だったため、ボンドは無意識に頭部ではなく敵のライフルを撃つ。

同僚のソーンダース(トーマス・ウィズリー)は女に甘いボンドのせいで亡命が危うくなったと責めるが、パイプラインを使ってチェコからオーストリアにコスコフを移送することに成功、事なきを得る。
イアン・フレミングの原作は、敵のスナイパーがいい女だったので、わざと急所を外して助けてあげるという短篇。このエピソードがきちんと生かされて、そこから2時間の娯楽アクションに拡張されているのは偉い。
無事に亡命できたコスコフは、KGBの新トップ、プーシキン将軍(ジョン・リス=デイヴィス)が欧米のスパイを次々と抹殺する<スパイに死を>計画を復活させたとMたちに明かす。

オーバーアクションで楽天的なコスコフの言動が鼻につくが、彼は牛乳配達に変装した殺し屋ネクロス(アンドレアス・ウィズニュースキー)にあっさり奪還されてしまう。
慌てたMはプーシキン将軍を暗殺しようと動くが、腑に落ちないボンドは、気になっていたスナイパーのチェロ奏者・カーラ(マリアム・ダボ)の身元を洗い出し、接近する。
彼女はチェロが本職で、使用したライフルには空砲が入っていた。つまり、彼女にはコスコフを殺す意思はなく、亡命を本物らしく見せるために手助けをしたのだとボンドは見抜く。
カーラとボンドの距離感がいい
本作で特筆すべきは、このカーラとボンドの関係の描き方のうまさだと思う。
KGBのスパイでもない一般人の演奏家が狙撃兵までやるものなのかはともかく、カーラはコスコフの恋人であり、しかもボンドが何者かも知らない。ただ、KGBの連中から自分を命がけで守ってくれるこの男性に、次第に惹かれていく。
遊園地の観覧車に二人で乗って、恋人がいるのにと葛藤しながらもキスをかわすカーラ。これまでのボンド・ガールとは一味違う奥ゆかしさ。
The Living Daylights (1987)#JamesBond pic.twitter.com/tyGiD7r3yQ
— Donald Red Grant (@DonaldGran82261) March 26, 2025
ティモシーのボンドも女好きではあるが、先代のように見境なしにベッドインしたりはしない。キスまでのボンド映画。この節度はぜひ保っていってほしい。
◇
過去作のボンド・ガールは、すぐに彼に惚れてしまうか、最後まで敵でいるかのパターンが多かったが、今回のカーラは、恋人コスコフに騙されて、ボンドに麻酔薬入りのマティーニを飲ませることに成功。
結果、二人とも敵に捕まってしまうが、そこでようやくボンドの正体と、彼が自分を狙撃せずに救ってくれたことを知り、コスコフからボンドに惚れ直すのだ。きちんとプロセスを踏んでいるのがいい。
久々のアストン・マーティン
本作では嬉しいことにボンド・カーが久々に登場。特殊装備付きで活躍するのは、『007 私を愛したスパイ』で水中潜航したロータス・エスプリ以来じゃないのか(『007 ユア・アイズ・オンリー』にもエスプリは登場するが、すぐに自爆)。
今回の愛車はアストン・マーティンV8。スキーを履いて氷上だってお手の物。アストン・マーティン君の登場は、一発屋ジョージ・レーゼンビーの『女王陛下の007』以来18年ぶりだったりして。
結局、西側に亡命したコスコフは国際的な武器商人のウィティカー(ジョー・ドン・ベイカー)と手を組み、KGBのプーシキン将軍のニセ情報をMI6に与えることで、ボンドに将軍を始末させようと企んだのだ。
それによって、コスコフの公金横領をうやむやにしてしまう算段だ。この辺になると、やや話は分かりにくくなる。
更にはボンドが監獄で助けたカムラン(アート・マリック)が実はムジャハディンの副司令官でボンドの援軍となったり、アヘン密売組織とコスコフの取引による錬金術が見えてきたりとやや欲張りすぎ。
4代目ボンドとともに、CIAのフェリックス・ライター(ジョン・テリー)とマネーペニー(キャロライン・ブリス)もメンバー交代。
なお、本作で悪役のウィティカーを演じたジョー・ドン・ベイカーは、ピアース・ブロスナンのボンド作では味方であるCIAのジャック・ウェイド役に出演している。
◇
アヘンを積載した飛行機で宿敵ネクロスと戦う空中バトルは見応えありでお腹いっぱいの満足感。
映画のラストはカーラとの再会とキス・シーン。従来のようにえげつないベッドシーンではなく、キスでとどまる。だからこそ、エンドロールに流れるプリテンダーズのメロウな曲が合うのだろう。