『【推しの子】 The Final Act』考察とネタバレ|レビューは甘口で

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『【推しの子】 The Final Act』

原作もアニメも大ヒットの【推しの子】、配信ドラマとともに実写映画化まで

公開:2024年  時間:129分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:         スミス
脚本:       北川亜矢子
原作:  赤坂アカ✕横槍メンゴ


キャスト
星野アクア:     櫻井海音
星野アイ:      齋藤飛鳥
星野ルビー:    齊藤なぎさ
有馬かな:      原菜乃華
MEMちょ:        あの
黒川あかね:    茅島みずき
斉藤ミヤコ:     倉科カナ
斉藤壱護:     吉田鋼太郎
雨宮吾郎:       成田凌
天童寺さりな:    稲垣来泉
川村恵理子:     濱田マリ
リョースケ:     杢代和人
五反田泰志:   金子ノブアキ
鏑木勝也:        要潤
金田一敏郎:   尾美としのり
カミキヒカル:    二宮和也

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

あらすじ

産婦人科医のゴロー(成田凌)は、かつて担当していた患者の影響で、アイドルグループ「B小町」のアイ(齋藤飛鳥)を“推し”としてオタ活をエンジョイしていた。

ある日、突然、妊娠したアイが患者として彼の目の前に現れる。その後ゴローはある事件に巻き込まれ、理由も原理もわからないまま、アイの子どもとして転生することになる。

アクアという名で“推しの子“として幸せな日々を過ごしていたが、突如、アイが何者かに殺されてしまう。アクア(櫻井海音)は、アイを殺した犯人への復讐に身を捧げる。

レビュー(若干ネタバレあり)

あいにく、赤坂アカ✕横槍メンゴの原作コミックも読んでいなければ、アニメも観ていない。

映画を観るのに先立って実写版のドラマを観て、その世界観と音楽性には驚かされたが、結局は母殺しの犯人探しの映画なのかと、さほど期待もせずに劇場に足を運ぶ。

いや、結果からいえば、これはなかなか手が込んでる作品だった。勿論、予備知識のなさから、原作との比較もキャラ設定の改変有無もまったく分からない。

だが、実写版の世界の中では、配信ドラマと劇場版の関係がうまく整理されている。

(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

配信ドラマなしで初めて映画を観るひとでも、アイB小町が何者で、双子の隠し子がいて、ファンに殺されて、といった一連の経緯が分かるような仕組みにはなっているので、ギリついていける。

ドラマを観ていれば、新生B小町のメンバーのバックグラウンドだったり、五反田泰志(金子ノブアキ)、鏑木(要潤)、金田一(尾美としのり)といった怪しげな連中の氏素性がよく分かったりする特典もある。

配信ドラマでは、『ガチ恋』、『東京ブレイド』といったテレビの企画を中心に物語を進め、その中で俳優として活躍するアクア(櫻井海音)が、自分たちの父親で母を死に至らせた人物が誰かを捜索し、一人ずつ消し込んでいく。

映画公開にあたってのサプライズと思っていたカミキヒカル(二宮和也)という、元劇団ララライの俳優も、配信ドラマの中盤で惜しげもなく登場し、劇場予告にも顔を出していた。

彼の正体にもどんでん返しがある訳でなく、どうやら犯人探し、父親捜しというのは、この作品において実はそう大きな問題ではなく、むしろ再会したあとにどう話が転じていくのかが重要らしい。

現代に甦った『ママはアイドル!』星野アイ齋藤飛鳥新生B小町齊藤なぎさ、原菜乃華、あのちゃんと、役柄とのシンクロ率が高いキャストを意図的に選んだであろう出演者陣は、たしかに十分な説得力を発揮。

配信ドラマに至っては、原菜乃華のほかに、安達祐実やら志田未来まで投入し、どんだけレジェンド級の元・子役を投入するのか驚くほどだ。

そしてB小町のライブ映像等は、本来その世界で活躍するスミス監督の得意分野。更には撮影用に集められたという大勢のエキストラたちが火事場の馬鹿力的な瞬発力を発揮したおかげで、迫力満点のカットになっている。

もはや、B小町がリアルに存在するようにしか思えない。

(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

この映画は劇場予告が随分長い間流されていたが、それは相当イケてる感じに編集されていて、特にライブのシーンがカッコよかった。

今思えば、スミス監督だからこそなのだろうが、逆にいえば、音楽とは無縁の、他の通常のドラマ部分の演出は大丈夫なのかという不安もあった。

今回映画を観てみると、そんな気苦労は全く不要で、音楽シーンだけが浮いているなんてこともなく、十分に楽しめた。

特に映画後半での大きなイベントとなる、『15年の嘘』の映画化。かつてアイが残した、アクアたちの父親の正体について語った内容をもとに書かれた脚本で、アクアが犯人、ルビーが母であるアイを演じる。

この、双子で演じてる撮影風景と、生前のアイや斉藤壱護社長(吉田鋼太郎)のオリジナル風景とのオーバーラップの見せ方が秀逸だ。

 

演技で泣かせてくれたのは、重病の少女さりな(稲垣来泉)担当医(成田凌)とのエピソード。少女の影響で先生はアイ推しに変わっていく。『そしてバトンは渡された』稲垣来泉と、抑え目の演技の成田凌が涙を誘う。

(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

以下、ネタバレになるので未見の方はご留意ねがいます。

配信ドラマではこの少女とルビーが同一人物のような演出で、理解に苦しんでいたのだが、映画を観ればスッキリ解決。アクアとルビーはこの先生と患者の少女の転生だったのだ。

そんなバカなと思ってしまうと、話が成り立たないので、ここは乗っかろう。

結局ニノが演じるカミキヒカルからルビーを守るために、アクアはこの父親だった男を巻き込み、事故を装ってともに海に飛び込んで、帰らぬ人となる。

成田凌が演じた先生は、「アイドルになったら、一生俺が推してやる」という少女との約束を守り、命がけでルビーを救ったのだ。後味がもの悲しい、転生の物語だった。