『デッドプール2』
Deadpool 2
公開:2018年 時間:108分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: デヴィッド・リーチ
キャスト
ウェイド・ウィルソン/ デッドプール:
ライアン・レイノルズ
ヴァネッサ: モリーナ・バッカリン
ケーブル: ジョシュ・ブローリン
ラッセル・コリンズ/ ファイヤーフィスト:
ジュリアン・デニソン
ウィーゼル: T・J・ミラー
ブラインド・アル: レスリー・アガムズ
ネガソニック・ティーンエイジ・
ウォーヘッド:ブリアナ・ヒルデブランド
ユキオ: 忽那汐里
ドミノ: ザジー・ビーツ
ドーピンダー: カラン・ソーニ
理事長: エディ・マーサン
評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
傭兵ウェイドが不死身に近い自己治癒能力を得て、ミュータントとして悪と戦い続けるデッドプール(ライアン・レイノルズ)。
恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)とともに幸福に暮らしているが、未来からやって来た謎の超人ケーブル(ジョシュ・ブローリン)と戦うように。
ケーブルは、猟奇殺人鬼であるミュータント“ファイヤーフィスト”ことラッセル(ジュリアン・デニソン)に妻子を殺されたが、未来を変えるべく、少年時代のラッセルを殺そうと未来からタイムトラベルしてきたのだった。
ウェイドは、特殊能力をもったメンバーを集めたスペシャルチーム「Xフォース」を結成するが。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
前作以上にキレはいい
『X-MEN』シリーズのスピンオフで『ウルヴァリン』シリーズがあり、さらにそこから派生したような『デッドプール』も二作目登場。続編でも、相変わらずギャグのキレは落ちていない、どころか更にいい。
ウルヴァリンへの対抗意識はメラメラと燃え、あいつがR指定で死んで終わって高評価を得たのなら(これは『LOGAN/ローガン』)、俺ちゃんだって死んでやるもんね。
◇
前作ではほぼマスクだったウェイドだが、本作ではもうアボカドのような皮膚の顔をさらして活躍するシーンが増えている。
だが、ヒーローとして活躍するなかで、麻薬カルテルの襲撃の巻き添えで恋人のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)が死んでしまう。自責の念からウェイドは自殺を図るが、再生能力が邪魔して死ねない。
このあたりで、相変わらず人を喰ったタイトルクレジット。監督は<ジョン・ウィックで犬を殺したヤツ>となっているが、デヴィッド・リーチは同作の監督はしたけど、殺したのは別の俳優ではなかったか。
死に損なったウェイドは前作でお馴染みのコロッサスによって保護され、「恵まれし子らの学園」へと連れていかれる。
「もっとメジャーなX-MENを出せよ」とウェイドがいうのは前回からのお約束だが、本作では学園の教室のドアが開き、一瞬ビーストらの豪華X-MEN勢が顔を見せる。これは興奮。
ウェイドはX-MEN見習いとして活躍。炎を操るミュータント少年ラッセル(ジュリアン・デニソン)の暴走を止めるが、少年が施設の理事長(エディ・マーサン)と職員達から虐待を受けていることに気付いたウェイドは、職員相手に大暴れ。
ラッセルと共にミュータント専用の刑務所「アイスボックス」に連行される。そこへ、遠い未来からタイムトラベルしてきた謎の男ケーブル(ジョシュ・ブローリン)が現れ、ラッセルの命を狙う。
ケーブルのような片腕サイボーグ男は『LOGAN/ローガン』にも登場したが、ここでのウェイドは「『ウィンターソルジャー』かよ!」とツッコミ。
ケーブルがなぜラッセル少年の命をねらうかというと、この少年が殺しの快楽を覚え、やがてケーブルの妻子を殺してしまう。ケーブルはタイムマシンで過去に戻り、少年時代のラッセルを抹殺しにきたのだ。
この設定自体も、「ジョン・コナーかよ」と『ターミネーター』ネタでいじる。時計の文字盤をいじって時間を戻すジョシュ・ブローリンが、サノスにみえてしまうのも、混乱材料。
CGキャラだけは興ざめ
本作らしい笑いを取ったのは、ウェイドが急ごしらえで集めた「Xフォース」の面々。
メンバーを集め、みんなで護送車で運ばれるラッセルを救いに向かうのだが、パラシュートで降下するメンバーは、トラックや高架線、ヘリの回転翼などにぶつかり、みな即死。このナンセンスな笑いがデッドプールらしい。
その中の透明人間キャラが死ぬ間際に一瞬みせる正体はブラッド・ピット。デヴィッド・リーチ監督はブラピのスタントも多く務めてきたから、懇意なのだろう。その後の監督作『ブレット・トレイン』にも起用しているし。
せっかくウェイドらが救出に向かったラッセル少年だが、アイスボックスで出会った最強の囚人ジャガーノートと手を結び、敵対してくる。
何だか複雑な相関図だが、ラッセル少年とジャガーノートに対して、ウェイドにコロッサス、ネガソニック(ブリアナ・ヒルデブランド)とその恋人らしき新顔ミュータントのユキオ(忽那汐里)、Xフォース唯一の生存者ドミノ(ザジー・ビーツ)、そして途中から仲間となったケーブルという布陣。
忽那汐里の突如マーベル作品出演には驚くが、バイリンガルだけあって英語が板についている。ユキオって、『ウルヴァリンSAMURAI』で福島リラが演じていた雪緒と同一人物なのか。
怪力男ジャガーノートはコロッサスと同様に、『X-MEN ファイナルディシジョン』に登場し、それぞれチャールズ側とマグニートー側に分かれて参戦している。
同作ではちゃんと俳優が演じていたのに、本作ではどちらもCGキャラになっており、これが映画の魅力を損なわせている。アニメならまだしも、実写映画でCG同士が戦ってもシラケてしまう。
これだけお下劣と毒舌とナンセンスギャグで攻めてきた本作だが、終盤でミュージカル『アニー』の「トゥモロー」の歌に乗って泣かせムードになり、タイムリープをからめて感動させる仕立てになっていることに舌を巻く。
これは本当にウェイドの言う通り、ファミリー向けの作品なのかもしれない。
そしてラストでは、とあることから過去に戻ったウェイドが、自分の黒歴史を消していく。
それが『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』でローガンと戦う前のデッドプールや、『グリーンランタン』の主役に抜擢されるライアン・レイノルズの抹殺であるという自虐ネタが、たまらなく痛快。
さて、この俺ちゃんのノリに、生真面目なウルヴァリンがついていけるのか、新作が楽しみでもあり、不安でもある。