『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)
『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(2002)
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(2003)
トールキンによるファンタジーの金字塔「指輪物語」をピーター・ジャクソン監督が堂々映画化の三部作。
『ロード・オブ・ザ・リング』
The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring
公開:2001 年 時間:178分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督・脚本: ピーター・ジャクソン 脚本: フラン・ウォルシュ フィリパ・ボウエン 原作 J・R・R・トールキン 『指輪物語:旅の仲間』 キャスト フロド・バギンズ: イライジャ・ウッド ビルボ・バギンズ: イアン・ホルム サム: ショーン・アスティン ピピン: ビリー・ボイド メリー: ドミニク・モナハン エルロンド: ヒューゴ・ウィーヴィング アルウェン: リヴ・タイラー レゴラス: オーランド・ブルーム ケレボルン: マートン・チョーカシュ ガラドリエル: ケイト・ブランシェット ガンダルフ: イアン・マッケラン アラゴルン: ヴィゴ・モーテンセン ボロミア: ショーン・ビーン ギムリ: ジョン・リス=デイヴィス サウロン: サラ・ベイカー サルマン: クリストファー・リー ゴラム: アンディ・サーキス
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
ホビット族が平和に暮らすホビット庄の青年フロド・バギンズ(イライジャ・ウッド)は、111歳の誕生日を機に旅立つ養父ビルボ(イアン・ホルム)が残していった、ひとつの指輪を手に入れる。
しかし、その指輪こそ、かつて冥王サウロン(サラ・ベイカー)が作り出した、世界を滅ぼす魔力を秘めた禁断の指輪だった。
遥か昔に肉体を滅ぼされたサウロンは、指輪に封じ込めた力を解放し、再び中つ国を支配しようと徐々に魔力を強め、世界には暗雲が漂っていた。
指輪を破壊するには、遥か彼方にある滅びの山の火口に投げ捨てるしかなく、フロドは人間やエルフ、ドワーフの各種族から集まった旅の仲間とともに幾多の危険が待ち受ける旅に出る。
レビュー(ネタバレあり)
指輪物語の映画化
現代ファンタジーの始祖とも言われるJ・R・R・トールキンの不朽の名作『指輪物語』をピーター・ジャクソン監督が映画化。三部作の初発となる本作は原作では「旅の仲間」という副題をもつ章の映画化であるが、邦題には反映されていない。
トールキンには、『指輪物語』(1954~55)の前日譚にあたる『ホビット』(1937)という名作もあるが、この二大叙事詩をピーター・ジャクソンはいずれも三部作で映画化している。
◇
『指輪物語』は壮大なスケールとボリュームの物語ゆえ、「旅の仲間」だけでも本にして4冊分くらいの内容量がある。だから、本作の尺が3時間ほどあったとしても、まだまだ原作を忠実に再現とはいかないのが実情だ。
とはいえ、さすがに商業映画であることを考えれば、これ以上の長さや分割は望みにくく、むしろ作り手はよくぞ映画的な面白さを損なわずに原作の良さをコンパクトにまとめてくれたというべき出来栄えと思う。
三つの指輪はエルフの王に、七つの指輪はドワーフの君に、九つの指輪は人間たちに。それぞれ異なる種族のもとにもたらされた指輪であるが、実はそれらすべてを越える力をもつ強大な指輪が、冥王サウロンのもとにあった。
サウロンは指輪の力で全世界を手中に収めかけたが、戦いのさなかで指を切り落とされ、大事な指輪を失ってしまう。
指輪はその不思議な力で多くの者たちの心を惑わし、何人かの手を経て、ホビットであるビルボ(イアン・ホルム)が所有者となる。
だが、旅に出るにあたり、旧友である魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)の助言により、大事な指輪を養子であるフロド・バギンズ(イライジャ・ウッド)に譲る。ここから、冒険の旅が始まったといってよい。
旅の仲間を結成し、いざ冒険へ
全世界を支配できる力を手にするための最後の1アイテムを巡っての強大な敵との争い。そして多様な種族から集まった戦士たちが、それぞれの武器や能力を持ち寄って、勇気と使命感で戦っていく姿。
リングをストーンに変えれば『アベンジャーズ』の冥王サノスとの戦いとも重なるし、世界観の広げ方は『スターウォーズ』や『ハリーポッター』など、長いシリーズものの展開手法にも通じるものがある。
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本作は2002年の公開だが、原作が1954年に書かれていることを考えれば、今日ある多くのSFファンタジーもの、それにRPGの設定などに、少なからず影響を与えているのだろう。
さて、そうは言いながら、私は子供の頃に『指輪物語』を読んだことがない。多分、洋物で長すぎるファンタジーを敬遠していたに違いない。
勿体ないことをした。いい歳になってようやく読んでみているが、今感じている面白さは、純真無垢な時代(があったとして)だったらもっと強いものだったはずだ。
本作は長い物語の導入部分であり、まずはリングの不思議な力を知ったフロドが、その後の会議で自ら危険な旅に出ることの名乗りを上げ、9人の旅の仲間が結成される。
映画の後半からは冒険の旅が始まり、恐ろしい敵とのバトルが繰り広げられる。サプライズや伏線回収などが織り込まれた、近年のエンタメ作品に比較すると、あまりにオーソドックスで先の読めるシナリオではある。
だが、名作の映画化を前に、そこをツッコんでみても始まらない。ここは童心にかえって、ホビットたちの旅の仲間に加わるのが良策なのだろう。
キャスティングについて
主人公フロド・バギンズ役のイライジャ・ウッドは目の大きさが印象的な若者だ。本シリーズ以外では、『エターナル・サンシャイン』や『シンシティ』あたりまでしか記憶にないが、今なお多くの作品に出演しているようだ。
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魔法使いガンダルフ役のイアン・マッケランは、同時期『X-MEN』シリーズのマグニートー役と並行していたせいか、悪役イメージが先行してしまい、善人ぶりがやや意外。
格上の魔法使いサルマンとの対決は、演じる相手がクリストファー・リーだから、悪役同士の闘いの様相。
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アラゴルン役のヴィゴ・モーテンセンは、旅の仲間たちの統率役のような役割で頼りがいがある。本作をきっかけにデヴィッド・クローネンバーグ監督と出会い、監督作品に多く起用される。近年ではアカデミー作品賞を獲った『グリーンブック』に主演。
レゴラス役のオーランド・ブルームは本作で大ブレイク。たしかに、旅の仲間たちでは断トツの眉目秀麗ぶりだから人気沸騰は納得。最新作は本年公開の『グランツーリスモ』。
でもこのレゴラスの顔を見てると、つい滝沢秀明に見えてしまって仕方ない。本作の主題歌を歌うエンヤが、『グランツーリスモ』でも勝負曲に使われており因縁を感じる。
そっくりさんという点では、ボロミア役のショーン・ビーンも浅野忠信に見えてしまって、参ったわ。ショーン・ビーンも憎まれ役を演じることが多い俳優なので、本作ではどうなるかと思っていたが、案外いいヤツのままでした。
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「いとしい人」で有名な、リングの拾い主ゴラム(原作ではゴクリか)は『猿の惑星』でおなじみアンディ・サーキスが演じている。だが、本作ではまだ出番はわずかで、次作に期待。
ともあれ、冒険の旅は始まった。9人のメンバーのうち、ガンダルフとボロミアは死んでしまったように見えるが、真実は如何か。そして、フロドはサムと二人で、このメンバーから離れて単独行動に入る。