『地下室のメロディー』今更レビュー|さらば、永遠の二枚目アラン・ドロン③

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『地下室のメロディー』
Mélodie en sous-sol

ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの人気二大俳優共演による犯罪映画

公開:1963年  時間:118分  
製作国:フランス

スタッフ 
監督:       アンリ・ヴェルヌイユ


キャスト
シャルル:       ジャン・ギャバン
フランシス・ヴェルロット:アラン・ドロン
ジネット:   ヴィヴィアーヌ・ロマンス
ルイ・ノーダン:    モーリス・ビロー
ブリジット:      カルラ・マルリエ
マリオ:     アンリ・ヴァルロジュー

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

あらすじ

5年の刑期を終えて刑務所から出所したベテランギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)

昔の仲間マリオ(アンリ・ヴァルロジュー)と再会した彼は、カンヌのビーチ・リゾートにあるカジノから現金を強奪する計画を持ちかけられる。

そこでシャルルは、刑務所で知り合った青年フランシス(アラン・ドロン)とその義兄ルイ(モーリス・ビロー)を相棒に誘い、強盗計画の準備を進めていく。

カジノの賭金が金庫へ運ばれる経路を確認してから、それぞれの役割分担を細かく決め、いよいよ計画を実行へと移す。

今更レビュー(ネタバレあり)

アラン・ドロンジャン・ギャバンと共演した犯罪映画。監督はジャン・ギャバン主演の『ヘッドライト』ほか犯罪ものを得意とするアンリ・ヴェルヌイユ

刑期を終えて出所したばかりの男シャルル(ジャン・ギャバン)がパリ北駅から郊外の古巣に戻り、自宅で待つ妻ジネット(ヴィヴィアーヌ・ロマンス)の言うことも聞かずに、次の大仕事にとりかかろうとする。

情報をくれた刑務所仲間のマリオ(アンリ・ヴァルロジュー)はもう高齢で足を洗っていた。

シャルルはかねてより目をつけていたフランシス(アラン・ドロン)と、その義兄の自動車修理工ルイ(モーリス・ビロー)を誘い込み、南仏のカジノで金庫からの資金強奪作戦を計画する。

(C)1962 Cite Films

ジャン・ギャバン<メグレ警部>シリーズ出演を並行して抱えながら活躍していた頃合いだろうか、年齢的にも重厚感たっぷり。

一方のアラン・ドロンはもうすでに大人気で、本作は彼の代表作のひとつであるルキノ・ビスコンティ監督の『山猫』と同じ1963年公開。

アラン・ドロンはこの映画を上映したフランス映画祭で初来日したそうだが、この作品の海外配給権を彼自身が持っており、舞台挨拶で「『地下室のメロディー』は、日本ヘラルド映画が日本で配給する」と発言する。

当時、東和松竹映配も彼と交渉を進めていたため、トラブルに発展。結果、各社譲らず、三社共同出資・共同配給という形に落ち着いたらしい。

『地下室のメロディー』で何度も登場するミシェル・マーニュのNYジャズっぽい主題曲。これは今聴いてもカッコいい。これが地下室に流れるメロディーなのか。

だが、曲を聴いていつも頭にうかぶのは、この映画ではなく、昔懐かしいホンダ・プレリュードのCMである(1987年頃)。


まあ、こう言ってしまっては身も蓋もないが、映画の出来としては可もなく不可もなく。

アラン・ドロンの青春犯罪映画としては『太陽がいっぱい』(1960)がすでに世に出ているので、物語のサスペンス性アラン・ドロンの匂うような男の色香も、インパクトとしてはもう一つという印象が拭えず。

三人の共犯でカジノの金庫を襲ってひと山当てようという映画の割には、しぶしぶ協力した割にはきちんと仕事をしている義兄のルイの扱いがあまりに小さく、いくらフランス映画界の二大スター共演の余波とはいえ、不憫になる。

カジノの地下金庫に潜入するために、アラン・ドロン演じるフランシスがカジノの天井に張られた狭い通風ダクトをほふく前進し、エレベーターの函の上に乗る。

『スパイ大作戦(ミッション:インポッシブル)』の放送開始であることを考えれば、この演出はなかなか興奮ものだったのではないか。

しかも、天下の二枚目俳優アラン・ドロンをつかまえて、ダクトの中をほふく前進させるだけに留まらず、ニットの目出し帽を被らせて強盗までやらせるのだから、大したものだ。

楕円に繰り抜かれた目元だけをみても、その眉目秀麗さに只者ではない感じが隠しきれない。さすが元祖イケメン俳優。

(C)1962 Cite Films

カジノ金庫の資金強奪作戦は、驚くほどうまくいき成功に終わり、奪った金をフランシスは近くに宿泊しているホテルの壁裏に隠し、一方シャルルは別のホテルに身を隠す。

だが、犯罪は思わぬところでぼろが出る。彼らの強奪事件がデカデカと新聞記事になっており、そこに堂々とした姿で、フランシスの全身が写っているのだ。

あわててカネを二つの大きな革鞄に詰め、プールサイドで落ち合う二人。そこに刑事たちが現れ、ホテルの捜査を始める。

(C)1962 Cite Films

ギリギリ逃げ切れそうに見えたが、特徴がバレているカバンをプールの底に沈めて隠したのが運の尽き。なんとカバンの蓋が開き、大量の紙幣が少しずつ水面に浮かんできて大騒ぎになり、何もできずに去っていく二人の男たち。

哀愁に満ちたエンディングではあるが、これも『太陽がいっぱい』に比べると、半ば読めてしまっていた感は否めず。まあ、クールで華やいだ主題曲だけは、拾い物といえる。