『冒険者たち』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『冒険者たち』今更レビュー|さらば、永遠の二枚目アラン・ドロン①

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

『冒険者たち』
 Les Aventuriers

アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスの三者共演による大人の青春ドラマ。

公開:1967年  時間:112分  
製作国:フランス

スタッフ 
監督:    ロベール・アンリコ
原作:   ジョゼ・ジョヴァンニ
      『生き残った者の掟』
キャスト
マヌー・ボレリ: アラン・ドロン
ローラン:  リノ・ヴァンチュラ
レティシア:ジョアンナ・シムカス
パイロット: セルジュ・レジアニ
保険屋:   ポール・クローシェ

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

あらすじ

パリ郊外の廃車置場に、オブジェ制作のための材料を探しにやって来たレティシア(ジョアンナ・シムカス)

そこに住みついてカーエンジンの開発に取り組むローラン(リノ・ヴァンチュラ)、そして飛行クラブの教官マヌー(アラン・ドロン)と知り合い、意気投合する。

二人の男たちはパリの凱旋門の下を軽飛行機でくぐり抜けて賞金を稼ぐ計画を立てていた。

そのもうけ話がフイとなって彼らは意気消沈するが、コンゴの沖合の海底に莫大な財宝が沈んでいるという話を聞き込み、三人は宝探しの旅に出る。

今更レビュー(ネタバレあり)

2024年8月に逝去したアラン・ドロンの追悼に、スローペースでいくつか過去作を観てみようと思う。まずは本作。

リノ・ヴァンチュラと共演の青春レクイエム。男二人の間にはさまる魅力的な女性にジョアンナ・シムカス。男二人に女一人の映画的黄金比率。

冒頭から、洒脱なフランス映画の雰囲気と遊び心が感じられる。ロベール・アンリコ監督とは名コンビで知られるフランソワ・ド・ルーベによるい軽快な音楽とともに、颯爽と画面に現れる美女レティシア(ジョアンナ・シムカス)

だが、彼女が徘徊しているのはお洒落なパリの街路ではなく、なぜか廃車のスクラップが山積みの自動車処分場。ここで、目当ての色のクルマのドアやら車体パーツやらを物色している。

「売り物じゃねえよ」と美女にも冷淡な男ローラン(リノ・ヴァンチュラ)は、屑鉄屋のようにみえて、クルマのエンジニア。時間を気にするローランの仕事に急遽付き合うことになり、レティシアは平原で何やら造作物の手伝い。

最後に登場するのがマヌー(アラン・ドロン)だが、その登場の仕方が豪快だ。小型機で空から現れ、ローランたちが拵えた造作物をくぐって曲芸飛行を披露する。

『冒険者たち』って、てっきり大きな犯罪でがっぽり稼ごうとする強盗団の話だと思っていた。アラン・ドロンにはギャングのイメージが漂うし、男女構成から『明日に向って撃て!』のイメージがあったのだろう(本作の方が古いけど)。

だから、レティシアはいつ犯罪計画に加担するのかと思って見ていたのだが、どうやら当てが外れたようだ。「冒険者」は額面通り、冒険心のある者たちのことのようだ。

マヌーが造作物をくぐる曲芸飛行をしていたのは、凱旋門の下をくぐってその様子をカメラに収めるための練習だったのだ。

彼は飛行クラブの教官をしており、映画プロデューサー・キヨバシ(なぜか日本人設定)が出すと言う賞金目当てに、この冒険を買って出る。

相棒のローランドはパリ郊外の廃車置場の中にある奇妙な仕事場に住んでおり、画期的な自動車エンジンの開発に専念するカー・ガイだ。

彼のツナギの背中にはマトラのロゴ。今はなきフランスの自動車メーカーだ。スーパーカー・ブームの70年代には、合併してマトラ・シムカになっていたはず。

行動が謎めいていたレティシアは、クルマの部品を溶接してモビールのような現代アートを作る芸術家なのだと判明。こうして、それぞれの夢を追う三人は意気投合するようになる。

だが、ローランは家やクルマを売って開発したエンジンを試走で失敗し炎上させ、レティシアも大金をかけて豪勢に個展を開催したが、作品はマスコミに酷評される。

そして、凱旋門くぐりが思わぬ障害で未遂に終わったマヌーは、市街地を無許可で低空飛行したことで、パイロットのライセンスを剥奪される。

こうして三人は夢破れ、人生の目的を失うのだが、そこまでの過程で、意気投合していく三人の描き方に多幸感が溢れている

昔の映画はこういう本筋と直接関係のないところで、実に感性豊かな演出がみられたものだ。特にフランス映画は顕著だったかもしれない。

元祖イケメン俳優のアラン・ドロンと、渋い大人のダンディズムのリノ・ヴァンチュラに挟まれ、天真爛漫なジョアンナ・シムカスの健康美。そこに愛憎が絡まない三人の関係も心地よい。

凱旋門の一件でマヌーを騙した保険屋(ポール・クローシェ)をボコボコにしたところ、コンゴの沖合で小型飛行機が墜落し、海底に莫大な財宝が沈んでいるという話を持ち出す。

始めは相手にしなかったが、夢破れてカネに困ったマヌーとローランは、レティシアを誘い、宝探しの旅にでる。

ここから後半は、コンゴの洋上でのダイビングとトレジャーハンティングの話になる。ダイビングといっても、潜水服はまだ金魚鉢を被った宇宙服のようなスタイルだ。朝ドラ『あまちゃん』でいえば南部ダイバー風。

ヨットの上にアラン・ドロンがいるというと、『太陽がいっぱい』のように殺人事件が起きそうな設定だが、実態はだいぶ異なる。マヌーもローランもヒゲ面なのだ。アラン・ドロンの無精ひげ姿というのも稀少かもしれない。

ここに、4人目の人物が登場する。金欠のフランス人男性(セルジュ・レジアニ)だ。

いかにも怪しそうな人物だが、彼がヨットに潜り込んで三人に銃を向け、俺にも一枚噛ませろという。話を聞くと、彼こそが墜落した小型機のパイロットだったのだ。

以下、ネタバレになるので、未見の方はご留意願います

新参者のパイロットの協力を得て、墜落機探しは順調に進み、順調に彼らは財宝を見つけ出し、四人で山分けの運びとなる。

だが三人でバランスの良かったチームに、おいしい所だけ一人加わってハッピーエンドになるはずがない。かといって裏切って持ち逃げするようなありきたりの展開でもない。

財宝をみつけたところで、それを監視していた例の保険屋が、海上警察を装って彼らのヨットに近づくのだ。それに気づいたパイロットの男が銃で応戦するが、流れ弾に当たったレティシアは死んでしまう

男たちは財宝を手に入れ逃げ延びたが、大事なものを失ってしまった。

レティシアは生前、手に入れた大金の使い道にこう答えていた。

「海に浮かぶ家を買うわ。供の頃からの夢なの。家というより海に囲まれた昔の要塞ね」

マヌーとローランは彼女の故郷を訪ね、そこでこの要塞をみつける。フォール・ボワイヤール。日本でいえば軍艦島、米国ならばアルカトラズ島みたいなところだ。

かつてナポレオンの時代に建設が始まった要塞。一時は刑務所となり、今ではテレビ局が買い取り、番組の舞台に使っているとか。

彼女の取り分である大金を、二人は故郷で出会った彼女の従弟にあたる少年に渡す。その後、ローランは要塞を買い取り、そこをホテルにするのだとマヌーに計画を打ち明ける。冒険心は途絶えない。

だが、執拗に彼らを追いかけていた連中と、この要塞で撃ち合いが始まる。要塞にある古い武器を使って二人は連中を退治するが、マヌーは腹に一発喰らってしまう。

「マヌー、レティシアは言っていたぞ、お前と暮らしたいってな」
「この嘘つきめ…」

マヌーが息絶える直前の会話だ。レティシアは生前、ローランに「あなたと暮らすわ」と語っているのだが、そんなことをおくびにも出さず、ローランは死にゆく友を気遣う。

ハードボイルドのバディムービーによく見られる、相手を思いやる嘘。本作がその走りなのかはしらないが、男の友情を思わせる、渋いエンディングだ。

そして最後は、息絶えたマヌーと横に佇むローランを、カメラが遠景でとらえ、そのまま要塞の俯瞰になる。ヘリによる空撮だろう。今ならばお手軽なドローン撮影だろうが、当時は重みが違う。